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「泥にまみれた靴で − 未来へつなぐ証言 侵略戦争」

2007年12月17日

矢崎光晴さん(日本中国友好協会事務局長)
―――DVD「泥にまみれた靴で − 未来へつなぐ証言 侵略戦争」は、日本軍が中国の人々などに対していかに残虐な行為をしたのかを、戦争になると人間がどのように変っていくのかということを、元兵士たちの生の証言によって明らかにするものとなっています。このような映像をつくられた思い、問題意識をお聞かせください。
(矢崎さん)
 私たちは1990年に元日本軍兵士の戦時中の加害体験の証言ビデオを制作しました。

 当時、戦争での被害体験についての証言映像は一定数ありましたが、日本軍の中国の人々に対する加害の事実についての証言映像はあまりありませんでした。私たちは、証言映像は伝聞による情報よりも証拠性がはるかに高いこと、そして、元兵士たちも高齢化し、亡くなる方も増えていることから、できるだけ早く記録に残すことが必要だと考えたのです。
この証言ビデオは3部作になりましたが、私たちはこのとりくみをさらに発展させなければならないと考えました。2006年に安倍政権が発足し、侵略戦争を正当化しようという動きが急速に強まったからです。私たちは、日本軍の侵略の事実を人々に伝えるとともに、そこから今日を生きる人々へのメッセージを発信するものにしようと考えました。そして、ビデオ制作で収録した長時間にわたる証言映像をあらためて見直し、新たなDVDとして「泥にまみれた靴で − 未来へつなぐ証言 侵略戦争」をつくったのです。戦争の実態を知らない世代が増え、そのような政治家たちの中から侵略戦争を正当化し、憲法9条を変えようという発言が強まっていることから、私たちは特に若い世代に対して、戦争の悲惨さ、残虐さを身をもって知る体験者の思いを伝えたいと考えました。

―――DVDには日本の侵略戦争で加害者となった兵士たちが、投降してきた中国兵や中国人捕虜たちを惨殺し、そして民間人も根こそぎ虐殺した体験、中には赤ちゃんの胸を泥靴で踏みつけて殺したという体験の証言が映し出されています。元兵士たちは、もはやかわいそうという感覚は全くなくなっていた、人間でなく鬼に変わっていった、と言っておられ、戦争がはじまるとどのような事態になっていくのかということを生々しく伝えています。勇気を振り絞って証言してくださったのではないでしょうか。
(矢崎さん)
 証言してくださったのは、戦後中国で戦犯として収容された人たちが中心です、彼らは中国政府から人道的な取り扱いと教育を受け、やがて自分たちの罪を反省し、人道主義の考え方を取り戻していったのです。
もちろん、実際の加害体験を証言できる方は限られます。多くの元兵士たちには、そのようなことを言ったら職場や地域で居場所がなくなる可能性もあります。家族から決して発言しないでほしいと言われている人もいます。他人には話しをできても自分の子供たちにはどうしても話せないという人もいます。DVDの証言者は、そのような不安や恐怖を乗り越え、自分たちのような過ちを繰り返してはならない、戦争を繰り返してはならないとの強い思いで体験を語っています。

―――それだけに元兵士たちの証言は貴重だと思います。兵士たちの迫真の証言映像は観た人たちに衝撃を与えているのではないでしょうか。
(矢崎さん)
 やはり多くの人たちにとって、日本軍の加害の証言を映像で観る機会はあまりありませんので、観た人たちからは衝撃を受けたという感想が多く寄せられています。
 1990年につくった証言ビデオは、小学校から大学まで、教育の場で上映が広がり、多くの生徒たちに観てもらいました。その後、ビデオに登場した元兵士が学校に招かれ、生徒たちに直接お話しすることもありました。生徒たちは、単に体験談を聞いたのではなく、二度と加害者にはならないようにしようというメッセージを受け取ることになりました。
元兵士の一人は、ある大学で体験談を語った時に、ひとりの学生から残酷な行為を批判され、「なぜ戦争に反対できなかったのか」との質問を受けました。元兵士が、「あなたが公害企業の社員だったとして、あなたには養っている家族もいる、それでも自分の良心に従って上司の命令に逆らうことができるでしょうか」と問いかけると、その学生は考え込んでしまったといいます。加害体験をいじめの問題と結びつけた子どもたちの感想も数多く寄せられました。戦争の中で人間が鬼に変えられていった体験は、いまを生きる私たち自身の生き方をも問い返すものとなりました。この映像は現代への警鐘でもあると思っています。

―――新たにつくられたDVDも広まってきているようですね。
(矢崎さん)
 憲法9条を変えようという動きがありますが、侵略戦争を絶対に繰り返してはならないという決意こそが9条だと考えています。私たち日本中国友好協会は、二度と再び戦争の過ちは繰り返さないとの誓いのもとに、不再戦平和活動をすすめていますが、そのためには日中戦争の実態を語り伝える活動が重要です。元兵士たちの、憲法9条を変えてはならないとの思いが込められたDVDを多くの人々に観ていただきたいと思っています。

―――私たちも今後いっそう戦争の実態を広げていきたいと思います。本日はありがとうございました。

◆矢崎光晴(やざきみつはる)さんのプロフィール

1959年東京都生まれ。大学生の時から「平和のための戦争展」活動に加わり、侵略戦争での加害体験者の証言に大きな影響を受けながら、反戦平和、日中友好運動に携わってきた。現在、日本中国友好協会事務局長。



 
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