法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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今週の一言

 

裁判実務に影響を与える憲法理論構築へ

2007年10月8日

大野友也さん(鹿児島大学准教授)
―――大野さんは大学院生の時、法学館憲法研究所のホームページの「憲法関連裁判情報」に多くの裁判の傍聴記を執筆していただきました。実際に憲法に関連する様々な裁判を傍聴し、当事者や代理人・証人などの主張・声や裁判官の判決に接してきましたが、印象的な裁判をいくつか紹介していただけませんか。

(大野さん)
 どの裁判も印象に残るものばかりですが、一番印象に残っている裁判は、遺棄毒ガス・砲弾訴訟です。憲法研究所で仕事を始める前から憲法に関する裁判の傍聴をしていたのですが、その最初が遺棄毒ガス・砲弾訴訟だったんです。その時に原告の方が、毒ガスの被害について陳述をされ、その被害に衝撃を受けたことが、こうした裁判の傍聴に足を運ぶきっかけとなりました。また、2003年9月に東京地裁で全面勝訴の判決を勝ち取ったことも、印象を強める原因となっていますね。残念ながら、今年の7月に東京高裁で逆転敗訴となってしまいましたが…。
 遺棄毒ガス訴訟をはじめ、強制連行・強制労働訴訟、「慰安婦」訴訟などの戦後補償裁判は、憲法9条が制定される動機となった日本の加害行為に対する政府の責任を問う裁判です。憲法9条は、日本が戦争をしないという決意を条文化したものですが、そこには、過去の戦争で与えた被害に対する賠償も含まれているのではないかと思うようになりました。


―――いま日本国憲法は裁判の場でどのような役割を果たしているとお考えですか。

(大野さん)
 憲法は、裁判実務において、学説との乖離が非常に大きいのですが、やはり人権が問題となっている裁判では、憲法が最後のよりどころになっていると思います。たとえば、2001年5月に熊本地裁で言い渡されたハンセン病国家賠償訴訟では、まさに憲法が保障するさまざまな権利・自由が大きく侵害されたことが認定されており、原告らの訴えを認める根拠となっています。昨年9月に東京地裁で言い渡された「君が代」予防訴訟でも、「君が代」斉唱の強制が、憲法の保障する思想・良心の自由への侵害であるとされました。このように、憲法は裁判の場において、人権を守る最後の砦となっています。

―――当研究所は憲法の文献を分野ごとに分類し、検索できる憲法文献データベースをつくり、それをホームページに搭載し、多くの方々に活用していただいています。私たちは学生のみなさん、市民のみなさんの中に憲法の文献をもっと広げていきたいと思っています。大野さんにも大学院生時代からこのデータベースを活用していただきましたが、読者のみなさんにその有効な活用法などを紹介していただけませんか。

(大野さん)
 著書や論文の検索サイトはいくつかありますが、憲法研究所では、憲法に限った検索ができるという点がすぐれています。他のサイトだと、一つのキーワードを入れると、さまざまな分野の文献が出てきたりして、自分が本当に探したいものを見つけるのに時間がかかります。しかし研究所のサイトは、憲法に限定して検索結果が出ますから、自分の見つけたいものをすぐに見つけることができますね。たとえば、「9条」というキーワードで検索をかけると、他の検索サイトの場合、さまざまな諸法令の「9条」に関する論文情報がでてきます。しかし研究所のサイトであれば、検索結果は、憲法9条に関連する論文に限定されます。
 加えて、憲法の中でも、さらにテーマを絞った検索ができるというのも、大きな特色ですね。9条ひとつを取っても、「平和主義一般」、「日米安保・有事法制」、「『国際貢献』論・自衛隊海外派遣」とテーマが分かれており、非常に検索しやすいです。テーマ検索であれば、キーワードを入れなくても検索できますから、こういったデータベースを使い慣れていない人でも、どのテーマに関連するものかさえはっきりしていれば、それに関する文献の情報が得られます。

―――法学館憲法研究所のホームページには他にもいろいろなコンテンツを設け、情報を発信しています。まだまだ力不足なのですが、引き続き努力・工夫していこうと思っています。このホームページの見どころ・活用法などを読者のみなさんに紹介したいのですが、大野さんとしてはどのようにお考えですか。

(大野さん)
 私自身が担当してきたこともあるのですが、「憲法関連裁判情報」はやはりすぐれたコンテンツだと思います。実際に裁判の傍聴をしたり、弁護士から資料をいただいたりした上でレポートしていますから、充実した内容を提供できていると思います。
 あとは「今週の一言」ですね。全国各地で憲法運動に携わっている人たちが毎週取り上げられています。各地でいろんな人がいろんな取り組みをされているのを見ると、自分にとっていい刺激になりますし、勇気がわいてきます。
 また、憲法Voiceでは、市民の方が、こんなことをした、こんな本を読んだ、こんな映画を見たといった一言を寄せてくれています。これも市民の声が伝わってくるので、いいですね。匿名での投稿もできますから、ぜひ皆さんにも一言を寄せていただきたいと思います。研究所のホームページの感想なども聞かせてほしいですね。

―――大野さんは大学で憲法の研究・教育に携わることになりましたが、どのような研究者・教員になろうとお考えですか。抱負をお聞かせください。

(大野さん)
 先ほども触れましたが、憲法は、裁判実務と学説の乖離が大きいです。憲法学説が到達した理論を裁判所が取り入れることはほとんどありません。ですから、裁判実務にかかわることで、より実践的な研究を進め、裁判実務に影響を与えるような理論を構築する研究者を目指したいと思います。
 教員としては、憲法がただ紙に書かれたものではなく、日々の生活の中でわれわれ市民の権利をいかに守ってくれているのか、憲法がなぜ大切なのかといった点を伝え、主権者としての自覚を持った学生を育てたいと思っています。

◆大野友也(おおのともや)さんのプロフィール

鹿児島大学法文学部准教授。早稲田大学大学院法学研究科博士課程取得・退学。

 


 
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