法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

日中間の民間交流の拡大を

2007年9月17日

佐治俊彦さん(和光大学教授)
―――佐治さんは中国の文学や演劇を研究され、中国の人々とも盛んに交流しておられます。最近では『南京市民はいま、日本をどうみているか』(草の根出版会)の監訳もされました。まず、こんにちの日本における憲法9条「改正」の動きを中国の人々はどのよう にみているのか、お考えをお聞かせください。
(佐治さん)
 私は1945年9月生まれです。まさに戦後民主主義の中で生きてきました。憲法9条の考え方も骨の髄まで染みています。憲法9条「改正」反対というのが私の立場であり、地域の「九条の会」にも参加しています。
 ご質問についてですが、中国人にもいろいろな人々がいます。私は1984年にはじめて中国に行きましたが、その時に上海で会った多くの若い中国人が「日本の近代化はすごい。中国は日本から学ぶべきだ」と言っていました。中曽根元首相はタカ派ですが、彼らは「中曽根は偉い」とも言っていました。中国人の多くは日本社会の保守化・軍国主義化と憲法「改正」の動きなどに対して物騒に思っていますが、「時代が変ってきており、いろいろと変えていけばよい」という若者が増えてきているかもしれません。日本政府は必ずしも平和憲法を守っていないのですが、彼らはそのことを理解できないようでした。自分の父母や祖父母が日本軍から非道な仕打ちを受けた被害者も沢山いるはずだが、なぜ彼らはそのように考えるのだろうと、当時私は苛立ちを感じました。
 しかし、一方で中国人の日本や日本人に対する批判的なとらえ方は、いまなお根強くあります。中国の民衆の日本観は野蛮な日本軍のイメージが根底にあります。中国のテレビではかつての中国人の抗日戦争を描いた番組が頻繁に放映されています。愛国教育も重視されています。中国はこれまで他国を侵略したこともないことが強調され、中国人の多くがそれに誇りを感じ、そして日本に対する嫌悪感が広がっています。日本の多くの政治家が中国への侵略を反省していないことが何より問題なのですが、そのような状況にあると思います。

―――中国の人々の日本観・日本人観は錯綜しているのでしょうね。
(佐治さん)
 多くの中国人は日本に対して嫌悪感を持っているのですが、日本に留学した中国人や中国で働く日本人に接する中国人は、日本人のまじめさ、勤勉さ、やさしさも感じ、日本の経済援助によって中国人が恩恵を受けていることも感じています。人によって様々ですが、全体として中国人の日本観・日本人観は分裂した評価になっているように思います。

―――中国社会は今後全体としてどのような方向に向かっていくと予測されますか。
(佐治さん)
 今後中国の経済発展が大きく進むことは間違いなく、世界全体の経済に大きな影響力を持っていくでしょう。
 一方、いま中国では自然破壊・環境汚染の問題や水資源の枯渇問題などが深刻化しており、これらの解決も重要課題です。また、社会の民主化や人権問題も今後様々な展開をみせるでしょう。少数民族の問題も結構厄介です。

―――そのような状況の中で、今後の日本の中国との関わり方が問われてくると思います。そう考えた時、今後日本で憲法「改正」の動きが強まると、中国はそれをどのように考えることになると予想されますか。
(佐治さん)
 中国は日本からの戦後賠償を放棄し、日本に対して寛容な態度をとってきたのに、また日本が軍隊を持つとは何事か、物騒だ、もはや信用できない、ということになっていくでしょう。私もこの中国の主張は正当だと思います。
 ただ、中国という国も実は軍事的な国家であると思います。核も保有しています。その中国の政府が日本の動きに対して実際にどのような態度をとるのかは、単純ではないと思います。

―――中国の民衆全体がどのように考えるかが中国政府の対応を決めていくことになるのではないでしょうか。
(佐治さん)
 それはそうだと思います。ですから、私は日本人と中国人の民間レベルでの交流が極めて重要だと思います。日本の中国侵略の歴史の事実に真摯に向き合い、日中の平和的友好的な関係を求める日本人の存在とその活動を多くの中国人に知ってもらう努力が必要です。そのために日本人と中国人が膝を交えて率直に議論し合う積み重ねが必要です。
 中国の人々はいろいろな歴史的経過の中でこんにちの政権を選び、その政権が続いてきました。ただ、私は、その政策には吟味されるべきことも多々あると考えています。したがって、私が中国の人たちと話をすると、ちょっと理解できないこと、おかしいと思うことも出てきます。しかし、特に中国の一般庶民のみなさんと触れ合うと、素直に学び交流でき、楽しむことができます。そんな民間交流が広がればと思います。

―――日本国憲法とその9条のことを考えるにあたって、中国の人々とも大いに交流・議論していきたいと思います。本日はありがとうございました。

◆佐治俊彦(さじ としひこ)さんのプロフィール

和光大学表現学部教授。専攻は中国現代文学。
『かくも美しく、かくもけなげな − 「中国のタカラヅカ」越劇百年の夢』(草の根出版会)、『転換期における中国の知識人』(編著・汲古書院)などがある。2007年7月に刊行された『南京市民はいま、日本をどうみているか』(草の根出版会)の監訳も務める。

 


 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]