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「知る権利」と憲法改正

2007年8月20日

撮影:山本ケイ、インターネット新聞『JanJan』掲載記事より転載
野村孜子さん(「知る権利ネットワーク関西」事務局長)
 国の憲法改正論は、確実に現実化に向かっているように見えます。その一つが、2005年10月に自民党が発表した新憲法草案です。具体的な言葉(文字)として現れたのです。5つの新しい権利、個人情報保護、環境権、犯罪被害者の権利、知的財産権、そして、知る権利を盛り込んだと説明していますが、憲法9条の改正のための地ならし、リップサービスのように見えます。なぜなら、それを権利といえるのだろうかというものもあるからです。知る権利はその最たるものです。
 自民党は、国民の「知る権利」を盛り込んだ。と言っています。はたしてそうでしょうか。私は、情報公開に取り組むグループ「知る権利ネットワーク関西」というグループの事務局長を務めていますが、グループの一員として新設されたという「知る権利」につい異議をとなえています。
 「知る権利」は、新憲法草案に盛り込まれてはいない、と。
 彼らの言う「知る権利」とは、憲法21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、何人に対しても保障する(21条の1は省略)に、新しく21条の2を新設し「国は、国政上の行為につき国民に説明する責務を負う」(以後、説明する責務と呼ぶ)という文言をして、知る権利を規定したと言っているのです。説明する責務が国民の「知る権利」を保障していると言えるのでしょうか。私は、説明する責務は、「知る権利」を保障するための一要素ではあるが、「知る権利」を保障するものではないと思っています。
 知る権利が盛り込まれた、という説もあることは知っています。21条、表現の自由が解釈上知る権利を保障しているとすれば、21条の2が新設されたことによって解釈上導けるという説です。つまり、国民が、国家に情報を公開するよう要求する権利という意味での「知る権利」(知る権利の社会権的側面)を、国家の「責務」という形で規定しているというのです。
 私は、この21条が解釈上保障されていると解釈すること自体に疑問を持っています。導き出されるものではあるが、それをして保障しているとは言えないということです。21条は、表現の自由です。自分の身の回りを飛び交っているあらゆる情報が規制や制限を受けることなく手に入り、それを基に自分の考えを人々に自由に伝える(表現)できることで、人間が人間らしく生きられる、そういう基本的な人権上の権利であり、その理念から憲法上では、表現の自由に含まれると解釈されているのです。私は解釈できるということでは保障されているとは言えないと思っています。憲法で保障するというなら、明確に保障していると言える条文でなければならないと思うのです。
 私が、なぜこれほどまでに「説明する責務」は「知る権利」ではないと声を大にするのか。働きかけのベクトルが正反対のものだからです。国の「説明する責務」と国民の「知る権利」は相互に関係はあってもまったく異なる概念であり、主体がまったく異なっていると思うからです。説明する責務は、まさに国にあります。この説明には操作性が伴い、恣意性が生じやすいものだからです。操作されようとする情報に対し、それを封じるものが「知る権利」なのです。明らかに説明する責務は「知る権利」とは別物であると思います。
さらに厳しく言えば、解釈できるとか導かれるとかなどという曖昧な概念でなく、基本的人権の一つとして明確に規定されるべきではないかと思っています。
 もう一つ、私が問題視していることがあります。
 自民党草案に「知る権利」が盛り込まれた、あるいは規定されたということは、私たちが自民党の発表を直接聞いたのではなく、新聞やテレビ等の報道を通して知ったに過ぎません。恐らく報道機関は、自民党の説明をそのまま報じたのでしょう。どこかに「説明する責務」は「知る権利」ではない、と報じたところがあったのでしょうか。私は是非知りたいと思っています。
 新しく規定したという5つの権利(とされているもの)は、国や自民党の憲法改正のためのサービス的な要素を持っているように思えてなりません。報道機関の役割は単に情報を発すれば良いというものではありません。私たちが求める情報に大きな影響を与えかねないものとしてミスリードは許されないのです。今回の新憲法草案に「知る権利」が盛り込まれたとする報道を、仮に自民党の説明のまま報じたのだとしたら、それこそ報道機関の本来の役目を果たしているとは言えないのではないでしょうか。私は報道を生業とする人たちに対して、もっと憲法に対して敏感であってほしいと思っています。
 上記述べた意見は、私や情報公開に取り組むグループ「知る権利ネットワーク関西」の意見でもあります。なぜ説明する責務は「知る権利」ではないと言うのかは、今回『「知る権利」と憲法改正』(花伝社)と題して出版しましたブックレットに詳しく述べています。是非ご一読いただきますようお願い致します。 
 皆様のご意見を伺いながら、今後さらに憲法に対する認識を深めて行くべく努力していきたいと思っております。

 
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