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『マンガで見る憲法問題』 − 東京土建のとりくみ

2007年6月18日

向井光也さん(東京土建一般労働組合 機関紙「けんせつ」編集長)
 ――東京土建がこのほど作られたパンフレット「今 知ろう! 改憲のワナ 平和と暮らしを守るために―マンガで見る憲法問題」は、憲法問題を“マンガ”でわかりやすく説明する、他ではあまり例のないユニークなものだと思います。何故、今、こういうパンフレットを作成しようということになったのでしょう。
(向井さん)
 建設労働の仲間たちに憲法問題を知ってもらうために、文字がいっぱいのものではなく、マンガという形にしてみようと考え、作ってみました。今、東京土建の各支部や分会のメンバーの中心部分は、いわゆる団塊の世代ですからね。この世代は、子どもの頃からマンガに慣れ親しんでいます。まずは手にとって、ぱらぱらとでもページをめくってもらおうということです。ただ、マンガだけでは、憲法問題のすべてを書ききれませんので、そこでパンフの下に解説を入れました。とにかく読み易いものをと心がけました。
 このパンフレットは、東京土建で作成したマンガパンフの第2弾です。最初に作成した第1弾「憲法を考えてみよう―『戦争をする国』への道を許さない」では、憲法の全体像を知ってもらい、憲法を守る意義について考えてもらおうという意図で作りました。
 第2弾を作成したのは、国民投票法の情勢が大変緊迫している、通ってしまう可能性が大きいという時点でした。そこで、ストーリーを国民投票法から初めて、改めて憲法「改正」の目的は何なのかを明らかにしてゆこうという狙いです。いずれも、あくまでパンフレットですから、長大なストーリーを描けるわけではありません。憲法問題の難しいこと、細かいことについては、支部や本部で行う学習会で学んでもらえばいい。このマンガパンフはその入り口になればいいなと思っています。今の憲法がつくられてから60年経っている、もう古いんじゃないのという人に、でも本当に変えてしまっていいんですかと問いかけるために作ったのです。

――どのくらいの部数を発行されたのですか。
(向井さん)

 第1弾の方は、思い切って全組合員数分作りました。これは本部としても、本気で憲法問題にとりくむんだという構えを示したという意味があります。これが好評だったので第2弾を作ったわけですが、こちらは組合員5人に1部くらいの割合ということですね。第1弾で憲法問題の全体像を取り扱っているので、第2弾の方はサブテキストのような形で、分会で活用してもらえればと思っています。
 支部役員からは、これなら憲法問題を説明し易いとの声が寄せられています。ただし、これはあくまでも入り口ですから、これだけで全組合員が“よし、わかった、頑張ろう”となるわけではないのです。

――マンガパンフ作成にあたっては、いろいろなご苦心があったことと思います。このパンフにこめられた様々な工夫についてお話いただけますか。
(向井さん)
 建設現場で働く仲間、職人さんたちの気分感情に合うものを、ということをとにかく徹底的に意識して作りました。彼らは、現場に出て日当いくらで働いている人たちです。その感覚をふまえてつくりました。

――限られた文字数、ページ数の中で、福祉切捨てや増税の問題、共謀罪の問題までとりあげられていますね。
(向井さん)
 建設労働者にとっては福祉、特に医療の問題などは切実です。ここはきちんと押さえて、知らせていかないとと思っています。支部の役員さんの会議の場などでは、憲法25条の問題、生存権の問題に触れ、憲法問題は9条だけにとどまらないのだということを学習し、議論しています。
 それから、もう憲法は古くなったんじゃないかと考えている人たちにとっては、“新しい権利”というのは結構魅力ある謳い文句なのではないかと思うんですね。そこで、“毒入り饅頭作戦”ということをマンガで描きました。“新しい権利”につられて、美味しそうだなと思って口にすると、毒入りだったということですね。
 私としてはこのマンガパンフの中で、改憲プランナーの真の狙いは二段階なんだということを伝えたかったのです。ここで新しい権利につられて改憲を認め、憲法改正手続きが簡単なものになったら、次々と憲法の改悪がすすめられる、そういう危機感があるのです。ただ、それを伝えきるのはなかなか難しいですね。

――東京土建はこれからはどのようなとりくみをお考えですか。
(向井さん)
 東京土建ではこの8月からは憲法講座を行います。これは今年で3年目になります。ただ、憲法問題だけで集まってもらうのは大変で、そこに北朝鮮問題や米軍再編の問題などの時事問題も入れてやっていく予定です。
 そして、「9条の会」の交流の場も設けようと思っています。今、東京土建では分会ごとに「9条の会」をつくる、ということに力を入れています。交流会を通して、本部としても「9条の会」の進め方のノウハウのようなものを提起していきたい。

――東京土建は、今年憲法と同時に60周年を迎えられたとうかがっています。東京土建のとりくみと、憲法の関わりについてお話いただけますか。
(向井さん)
 私たち東京土建は、戦前苛酷な弾圧にあい、戦後の焼け野原の中から1947年、復活を遂げたわけです。かつては健康保険もなく、自分が病気になっても大変ですが、子どもや家族が病気になったときには、それこそ親方に借金するほかなかったのです。借金をすればそれに縛られ、腕に自信があってもっといい条件で働きたくても仕事を移ることもできない。そういう時代がありました。
 今、組合員のほとんどが戦後生まれになりました。憲法のない時代の先輩たちの苦闘を直接には知らない世代です。ですから私たちは、いのちとくらしと仕事の大本は憲法なのだということを、憲法の価値を繰り返し伝えなければならないと思っています。私はいつも、憲法の課題というのは政治課題ではありませんよ、と言っています。憲法を守る、その一致点だけで憲法「改正」に反対していこうと呼びかけています。
 私たち現場で働く仲間にとっては、体を動かしてやることが一番学習になり、確信を深めることができるのです。ビラ撒きをして、後で一杯飲んで、憲法談義に花を咲かせる、こういうスタイルも力になっていくと思っています。この先、現実に改憲を問う情勢となったら、マスコミは一大キャンペーンを張るでしょう。そのときに対抗できるのは、こういう草の根の力になるのではないでしょうか。楽観はできなくても、決して絶望する情勢ではないと思います。



 
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