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平和の実現のため、国際機構の活用を

2007年3月26日

戸塚悦朗さん(龍谷大学教授)
―――戸塚さんには法学館憲法研究所も協力してできあがったドキュメンタリ−映画「戦争をしない国 日本」をご覧いただきました。その感想からお聞かせ下さい。
(戸塚さん)

2007年1月26日来日された国連人権高等弁務官アルブールさんと(国連人権議連朝食会にて)
日本の平和運動の中で憲法9条の果たしてきた役割を見事に描いており、労作だと思いました。映画では、日本国憲法制定2年後には早くもアメリカが憲法を変えさせようと意思決定をしてきたことを克明に紹介していましたが、そのようなことはほとんどの人は知らされていなかったのではないでしょうか。びっくりすることだと思います。そんなに早い時期から憲法「改正」へのアメリカの圧力があったにもかかわらず、日本国民はそれをこれまで許してこなかったのだ、ということも感じさせられました。多くの人に観てもらいたい映画です。

―――戸塚さんは9条を守るだけでなく、日本の安全保障政策のオールタナティブを示していく必要性を述べておられますよね。
(戸塚さん)
 私は、日本と世界の平和の実現には、9条を守るだけでなく、9条の規定をふまえた政策の具体化が必要だと考えています。
 日本の戦後の安全保障は憲法9条と日米安保のセットで成り立ってきましたが、日米安保は9条の精神とは矛盾し、見直されるべきだと考えます。その場合、日米安保に変わる政策を確立、実践しなければなりません。9条だけに寄りすがっていれば平和が実現するという考えは「一国平和主義」と批判されてしまいます。9条の改悪に反対するこれまでの抵抗運動は重要でしたが、これからは政権交替も展望したオールタナティブが必要だと思います。

―――オールタナティブについての具体的なお考えをお聞かせ下さい。
(戸塚さん)
 私は9条を持つ日本は、現に存在する国際機構も活用し、世界の平和を実現していく責任があると思っています。その点、コスタリカに学ぶ必要があります。
コスタリカは日本と同じように常備軍を保有しないことを憲法に謳った国ですが、その活動は多様です。国連の中で平和の実現に向けて様々なイニシアティブをとっています。アメリカの覇権主義的政策に反対し、様々な国々やNGOとの共同を広げています。また、国連の平和大学を設置し、平和についての研究と人材育成をすすめています。国連の様々な機構も使いながら平和のための国際的活動をすすめているのです。日本において、私たちは、政府に9条を守らせるだけではなく、政府が国際社会の平和のために貢献するよう要求・提言していく必要があります。そのようなとりくみの中で9条を守らせることもできていくのだろうと思います。

――――戸塚さんはこれまで日本軍性奴隷の問題などを国際舞台でも地道に訴えてこられました、平和や安全保障の分野でも日本の運動には国際的な視野が求められるということですよね。
(戸塚さん)
私は日本の精神病患者の処遇問題を国際社会にも訴え、改善をはかってきました。その後、アジア太平洋戦争の際の日本軍性奴隷の問題も国際社会に告発してきました。昨年上梓した『ジェンダーとILO』(日本評論社)はそれらの活動の経過とそれをふまえた提言です。
これまでもILOは世界の労働者の権利擁護のために一定の役割を果たしてきていますが、日本におけるジェンダー問題の取り組みの遅れはILOから明確に指摘されています。ジェンダー問題は日本政府のアキレス腱なのです。日本においては、いわゆる「男社会」=「男たちの支配」が国際社会とその機構によって指弾されているのです。平和や安全保障の問題でも、現にある国際機関とそのしくみも活用しながら取り組む必要があると思うのです。日本国憲法98条2項には「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とあります。この規定も活かさなければならないのです。
日本国憲法9条の思想と歴史的役割は、たとえ改憲が行なわれたとしても決してなくなるわけではありません。もちろん9条の改憲には抵抗していかなければなりませんが、今後は9条の思想を国内外に広げ、実際に世界の平和を築いていくことが重要だと思っています。

◆戸塚悦朗(とつかえつろう)さんのプロフィール

弁護士を経て、現在龍谷大学法科大学院教授。主な著書に、『精神医療と人権』(I)(II)(III)(共編・亜紀書房)、『日本が知らない戦争責任』(現代人文社)、『国際人権レポート』(連載継続中・週刊法律新聞)、『これからの日本と国際人権法』(連載完結・法学セミナー)、『国際人権法入門』(明石書店)がある。2006年、『ジェンダーとILO』(日本評論社)を出版。


 
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