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日・英両語で「九のうた」を出版して

2007年2月19日

宇野喜伸さん(英語教師)
■「新しい憲法のはなし」


「新しい憲法のはなし」から

 遠い昔を振り返ってみると、私の心に一枚の絵が浮かびあがる。確か小学校5年生か6年生の時に文部省の「新しい憲法のはなし」を習った。
 その本の中に、大きな壷みたいなものがあり、上から戦車や戦闘機などがゴミのように放り込まれ、下から電車や船が出てくるような絵があった。この絵だけは鮮明に心に焼きついている。 この本で勉強したことが、今の私の一つの原点だろうか。同じ本で勉強した同世代の人で、憲法改定を叫ぶ人もいるのだから、原点はその本だけではないだろうが。

■英語教師は

 私は長年英語を教えてきた。英語教師は、教授法だけでなく、英語そのものを常に勉強していなければならない。外国語というヤツは、常に接していないと忘れてしまうからである。英語教師の宿命みたいなものだ。私は、教頭職も校長職も無縁であったが、大学の同じ研究室にいて管理職になった友人は皆、「もう英語なんぞすっかり忘れてしまった」と言っている。今、中高の英語の先生方が、自分で英語を勉強する余裕はない。あるのは、問題の多い強制研修だけらしい。不幸なことである。
 私は今も若い人たちといっしょに町でESSを作って細々だが続けている。国際交流活動に参加し、外国からの留学生を家庭に受け入れ、近くの高校へ通わせたこともある。
 アメリカからの高校生トレィシーを車に乗せていると、「オトウサン、ココデ、コロシテクダサイ」と言った。「降ろしてください」だった。戦争をしないもう一つの国、コスタリカからと勇んで受け入れた留学生は、憲法よりも友だちと遊ぶことの方に興味があった。ある夜「オトウサン、アスアサ、6ジニ、ワタシヲ、オカシテクダサイ」と言って、妻と私の目を剥かせた。「起こして」が「犯して」になったのだ。外国語は、間違いを繰り返しながらも、常に接していくしかないのだ。私も失敗談がいっぱいある。せっかく苦労して身につける外国語だから、平和のためのコミュニケーシヨンに使わねば損である。英語教科書は、今、会話、コミュニケーション一色であるが、何を話すのかが抜けている。優れた英語教師の自主的集団である「新英語教育研究会」では、「何を」を重視し、単に和文英訳ではない「自己表現」を大切にしている。「九のうた」は日本語と英語の両方で書いたが、私は、英文の方は教師の英語勉強、そして自己表現と位置づけている。言いたいこと、言うべきことを持たずして「国際社会に於いて名誉ある地位を占め」ることはできない。

■アメリカ人から


朗読名手の友人による朗読

 今私はボランティアで市国際交流協会の役員をしている。2年前、アメリカのミシガン州にある3つの姉妹都市から16名の親善使節団が訪れた。彼らをいろいろと案内しているバスの中で、ESSで発表した自作の「9のうた」という英詩を、英文憲法9条と共に紹介した。そしたら予想しなかったことだが、大きな拍手が起こったのである。帰ったら友人にも見せたいからプリントの余分はないかと言う人や、サインをしてくれと言う人もいた。
 一般の多くのアメリカ人は、型にはまったことを言う。原爆については、「あれ以上犠牲者を出さないためにやむを得ないことだった」と。イラク戦争や憲法9条については、「テロを起こさせないためにやむを得ず闘わなければならないのだ」、さらに、「日本にある基地、米軍は日本を守っているのだ」と。世論操作によってそう信じさせられているのだと思う。
 日本に来ている英語指導助手の若者たちは、もっと柔軟である。広島を訪れて原爆の被害を実感し、私がアメリカ政府を批判し、憲法9条の大切さを説くと同意してくれる者も少なくない。「九のうた」の出版記念会で、アメリカの若者が「イマジン」を歌ってくれた。
 「九のうた」を読んでくれた外国人たちからは、上に述べた二つの反応が返ってきている。

■日本人からは


出版記念会で

親戚に、ある田舎町の役場の幹部だった人がいる。元総理大臣を兄貴と慕う保守系の人である。この人が「九のうた」を50冊送れ、と言ってくれた。役場の元職員や友人に読ませたいからだという。予想しないことだった。彼も私と同世代、「新しい憲法のはなし」を勉強したはずである。やはり原点が蘇ったのだろうか。
 もう一つの反応は、県の教研集会の外国語分科会で、ある高校の先生が、「九のうた」の英文を教材として使いたい、と言ってくれたことである。これこそ私が密かに一番期待していたことである。若者にこそ9条への思いを伝えたい。
 先輩で新英研全国委員の一宮和一郎先生は、雑誌「新英語教育」で、百姓一揆の物語から中学生に理解でき、郷土に密着した部分を教えたとき、「教室中が静まりかえり緊張感が走ったことが忘れられない」と書評に書いてくださっている。生徒に優れた内容の文を読ませることが、英語への興味力を高める。生徒の心に感動を与えてこそ教育の名に値する、と多くの優れた英語教師が指摘している。

■できることを

  今、日本国憲法が危ない。9条を変えて戦争をできるようにして「美しい国」ができるのか。為政者の言葉は反対に解釈すると丁度いい。「美しい国」を反対から読むと、「憎いし苦痛」となる、とどこかで読んだ。戦争の苦痛は真っ平だ。9条を守りたい。このことは、日本人だけでなく、外国の人も、いろいろな観点から書いている。ベトナム帰還兵、アレン・ネルソンさんもその一人だ。私はそれらに付け加えるだけの見識も経験も実践もない。ただ、日本国憲法特に9条を改悪させてはいけないという強い思いは持っている。そのために、たいしたことはできなくても、できることをしようと思う。「九のうた」出版もそのささやかな実践の一つである。一人ひとりができることをその持ち場でがんばることが大切だと思う。その力が結集されて改悪阻止の力になると信じるからである。
 最後に。日本国憲法9条は、日本の宝だけではなく、日本が世界に発信すべき日本の宝だと信じている。最後の最後に。
 Article 9 of your Constitution is more powerful than any nuclear weapons. It is more powerful than any army of any country. (Allen Nelson)

※宇野喜伸さんの『九のうた』に掲載されている詩「九の歌」の英訳を当サイトの英文ページに掲載しましたので、ご覧下さい。(法学館憲法研究所事務局)

◆宇野喜伸(うの よしのぶ)さんのプロフィール

1936年滋賀県生まれ。中学・高校・短大での英語教師を経て、退職後に土山イングリッシュ・センターを設立し、英語・英会話を教える。甲賀市国際交流協会理事。新英語教育研究会会員。
著書に『英語でコミュニケーション』(近代文芸社)、『カタカナ語を考える』(かもがわ出版)など。2006年に『九のうた Song of Nine』(三友社出版)を出版。


 
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