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『米軍再編と憲法』

2007年2月12日

小林アツシさん(テレビ/ビデオ・ディレクター)
■米軍再編の最終目的は憲法改悪?

米軍再編ドキュメンタリー『基地はいらない、どこにも』は、2年以上の取材・編集を経て2006年12月にようやく完成・発売できました。
作品紹介ページ
専用ブログ

作品づくりのために米軍再編の背景等について調べていくうちに、米軍再編は日本にとって憲法を変えざるを得ない状況に追いやられるきっかけとなるものだということがわかってきました。

■自衛隊の強化を約束した米軍再編「中間報告」

米軍再編というと「あっちの基地をこっちに移動して……」ということのように受け取られがちですが、実はそれだけではなく日米安保条約の改定に匹敵する内容が日米両政府によって合意されています。その合意では米軍だけではなく自衛隊を強化する約束がされているのです。

日本では政府関係者やマスメディアにより「中間報告」と呼ばれた合意文書(正式には「日米同盟 未来のための変革と再編」)には、以下の記述があります。

「実効的な態勢を確立するための必要な措置をとる」

ここで書かれている「必要な措置」とは、自衛隊海外派兵の恒久法や防衛省への移行などを指していると言われています。そしてその先にあるのは憲法九条二項の削除なのです。

■自民党の新憲法草案と表裏一体の米軍再編

米軍再編のいわゆる「中間報告」が発表された前日には、自民党の新憲法草案(PDF)が発表されています。
ご存じのように、自衛隊はこれまでの政府による解釈では「自衛のための必要最低限の実力の組織」でした。しかし自民党の新憲法草案によると「自衛軍」は「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」を行うことができます。
つまりイラクに派兵された自衛隊は武力行使ができませんでしたが、自民党の新憲法草案どおりになってしまうと「国際社会の平和と安全を確保するため」という名目で海外での武力行使ができるようになってしまうのです。

■米軍の狙いは「同盟国の役割強化」

2004年6月23日、ファィス米国防次官が議会での証言で米軍再編の五つの原則を掲げましたが、その中の第一に挙げられたのが「同盟国の役割強化」です。

そして、2005年の秋にペンタゴンの政策担当次官補代理室がアメリカの議会に提出した報告書『世界規模の米国防態勢強化について(Strengthening US Global Defence Posture)』には以下のように書かれています。

「見直しの狙いのひとつは、同盟国の役割を拡大し新たな協力関係を築き上げ、彼らの変革を勇気づけることだ」

2006年5月末には、在沖縄米軍トップのジョセフ・ウェバー沖縄地域調整官(海兵隊中将)が共同通信との会見で、在日米軍再編によって「自衛隊が今後、より柔軟に抑止力を発揮できる」と指摘。そして「この地域(東アジア)でテロとの戦いが発生した場合には日本が関与してくれると確信している」とまで言っています。

■ミサイル防衛によって憲法が変えさせられる

2006年11月、安倍首相はワシントン・ポストのインタビューで「アメリカに向かうかもしれないミサイルを撃ち落とすことができないのかどうかも研究しなければならない」と語っています。
アメリカに向けて撃たれたミサイルを日本が撃ち落とすことになると、それは日本の防衛ではなく集団的自衛権の行使でしょう。

米軍再編の実施によって、日本が集団的自衛権についての政策を変えることが求められています。

いわゆる「中間報告」が発表された翌月、米国防総省のジェームズ・アワー元日本部長は『世界日報』のインタビューで「日本が集団的自衛権に関する現在の政策を維持していくならば、日本は今回の合意を実行することはできない」と語っています。

そして2006年9月、在日米海軍のジェームズ・ケリー司令官はミサイル防衛に関連して「集団的自衛権を行使できるよう憲法改正の議論が深まっていくことを期待したい」とまで語っているのです。

■「米軍再編特措法」で再編をゴリ押し

現在行われている国会で、政府は「米軍再編特措法」を提出してきます。これは米軍再編に関連する各自治体への交付金を米軍再編の受け入れや進み具合によって差を付けようという法案です。

政府はお金で自治体を押さえつけることで米軍再編をゴリ押ししようとしています。
こうした卑劣な手段を使ってまで強行しようとする米軍再編を止め、憲法九条二項を守るためにも、今回作った米軍再編ドキュメンタリー『基地はいらない、どこにも』をできるだけ多くの人たちにご覧いただきたいと思っています。


◆小林アツシ(こばやし あつし)さんのプロフィール

テレビ/ビデオ・ディレクター。
2003年のイラク反戦運動では連日行われた反戦デモ・パレードの映像を即時にインターネットで配信し続けた。
主な作品として『あなたのまわりに周辺事態』(1999)、『軍需工場は、今』(2005)など。最新作は米軍再編ドキュメンタリー『基地はいらない、どこにも』(2006)。
オムニバスビデオ『ニッポン・戦争・私』『憲法万華鏡』にも参加。


 
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