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「テロとの戦い」の名の下に今も続く人権侵害の実態とは?
〜映画「グアンタナモ,僕達が見た真実」〜

2006年12月11日

鈴木麻子さん(弁護士・ヒューマンライツ・ナウ事務局)



映画の主人公3名(アシフ・ローヘル・シャフィク,tipton threeと呼ばれているそうです。)
2001年9月、バーミンガムで家族と暮らすパキスタン系イギリス人の青年アシフは、結婚式を挙げるためにパキスタンへ向かい、招待されたアシフの友人ローヘル、シャフィク、モニールの3人もイギリスから飛行機で駆けつけた。パキスタン南部の町カラチで合流した青年達は、9.11以降の政情不安を目の当たりにして、隣国アフガニスタンの現状を確かめようと国境を越える。そこで彼らは、アルカイダのメンバーと間違えられ、 キューバの米軍グアンタナモ基地へと送られてしまう・・・。
ごく普通の若者が、対テロ戦争に巻き込まれ、2年以上にも及ぶグアンタナモでの収容所生活を強いられるという世界に衝撃を与えたこの事件。映画化したのは、『24アワー・パーティ・ピープル』、『CODE46』、『イン・ディス・ワールド』など多様なジャンルの作品を手がけて高い評価を受けるマイケル・ウィンターボトムと、ウィンターボトム作品においてこれまで編集やセカンドユニットの監督を務め、コールドプレイなどのアーティストのミュージック・クリップを手がけてきたマット・ホワイトクロス。2人はローヘル、アシフ、シャフィクへの長期に渡る取材を行い、そのインタビューをもとにアフガニスタン、パキスタン、イランで撮影を敢行した。本作品は,本人たちのインタビューや実際のニュース映像も交えながら,苦境に耐え続けることで友情を深め、強く成長していく青年たちの姿を通して、米軍基地グアンタナモに潜む恐ろしい真実を見事に描き出し,2006年ベルリン映画祭では銀熊賞(監督賞)を受賞した。
9.11以降、テロを未然に防ぐためにという理由で行われている非人道的な行いと潜在する差別。そしてまた起こるテロ事件。『グアンタナモ、僕達が見た真実』はこの終わらない連鎖に一石を投じた真実の物語である。

映画のモデルとなったローヘル・シャフィクの来日を記念して
試写会&パネルディスカッションを開催!
人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は,アムネスティ・インターナショナル日本と共催して,映画の試写会&パネルディスカッション,そして来日する2名を招いたプレ企画を開催します。

試写会&パネルディスカッション

【日時】
2007年1月13日(土)
14:30〜 映画試写/16:20〜 来日する2名を招いたパネルディスカッション
【場所】発明会館ホール(地下鉄虎ノ門駅徒歩5分)
*HRN会員の方は、30組60名を試写会にご招待します。応募方法等の詳細については,ヒューマンライツ・ナウのウェブサイトをご覧下さい。
*映画は2007年2月シャンテ シネにて公開!http://www.guantanamo.jp/ 

試写会プレ企画「ローヘル・シャフィクを囲む会」

HRNでは、試写会に先立ち、来日するローヘル・シャフィクを囲む会を開催します。米軍に捕らわれた経緯や、グアンタナモでの過酷な収容生活など、経験者の生の声を聞くめったにない機会ですので、興味がある方はぜひご参加ください。
【日時】2007年1月12日(金)18:00〜(予定)
【場所】青山学院大学総研ビル9階会議室にて
*参加を希望される方は,HRN事務局 info@ngo-hrn.orgまでご連絡下さい。

HRNは,2006年7月に設立された,法律家、研究者、ジャーナリスト、NGO関係者などが主体となって,世界で確立された人権水準を国内外で実現するための人権NGOであり,主にアジアで地域での人権分野の国際協力・国際貢献活動、国連など国際社会における人権活動、そして国内での国際人権基準の啓発・実現のための活動を行っています。
グアンタナモ問題は,9.11以後「テロとの戦い」の名の下に行われてきた,人権侵害の実態をよく現しています。被収容者の人権を全く無視した取り扱い,適正な手続きもないままにいつまでも続けられる身柄拘束・・・このようなことは,現在の国際人権基準に照らして到底許されるものではありません。実際,グアンタナモ収容所は「法のブラックホール」であると批判されており、2006年、国連や米の連邦最高裁判所は相次いで収容所の違法性を指摘し閉鎖を求めました。
HRNは、この企画を通し、多くの方々にグアンタナモの実態を知っていただき、対テロ戦争の名の下に現在も続く様々な人権侵害についてみなさんと一緒に考え、状況改善に向けて活動していきたいと思います。

■弁護士として,そして一市民として

私は,2006年10月に弁護士登録をして,現在は川崎で弁護士をやりながら,HRNの事務局スタッフとして,HRNの活動にも参加しています。
大学では、国際関係論を専攻しており、ちょうど国際政治を学んでいるときに9.11事件が起きました。アメリカが提唱する「テロとの戦い」や「自由と民主主義」の名の下に、アフガニスタンそしてイラクの一般市民が犠牲となるのを目の当たりにしながら、それを止めることができない。国際政治の場においては、国際法なんてただの建前で、結局は強大な経済力・政治力・軍事力を持つ大国のやりたい放題なのではないだろうか・・・?そんな無力感に襲われながらも、他方で、攻撃を中止させ、犠牲になった市民を援助するために奔走する多くの活動家、法律家、NGOの方々の姿を目にすることができました。テレビで流れる戦地の映像の前でただ憂いてるだけだった私も、少しの勇気と行動力を持てば、何かできるかもしれないと思ってみたり、そうは言っても何をすればいいのかわからないと悩んでみたり・・・。

そんなとき,弁護士や研究者を中心とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ設立の構想を知りました。法律家ならではの国際人権活動を行うという理念に共感し,まだ修習生だった私も,設立準備のお手伝いをさせていただくことになりました。HRNはまだ駆け出しのNGOであり,これから取り組むべき課題が山積みではありますが,現在も世界中で起きている深刻な人権侵害について,声をあげることもままならない人々の声に耳を傾け,そのような実態を世界に告発し,人権状況改善のために取り得る手段を検討し,実現していく,という地道な努力を続けていきたいと思います。

私は,日本という戦争のない豊かな国に生まれ,両親の愛情を受けて育ち,教育を受ける機会に恵まれ,弁護士資格を得て,自分の希望する職業に就くことができました。
他方で,戦争,貧困,搾取等きわめて過酷な状況で生命の安全確保さえままならない暮らしを余儀なくされている人々がいるのは,なぜなのか。
同じ人間として生まれたのに,「私」と「彼ら」の間にこのような差があっていいのだろうか。
もし,「彼ら」ではなくて,「私」が,同じような過酷な状況におかれていたとしたら・・・?
そんなことはあり得ない想定だ,という人がいるかも知れないけれど,ほんの60年前には,この日本にも「彼ら」がたくさんいたのではないか・・・?
そう考えると,「彼ら」のことなんて自分とは関係ない,と言い切ってしまうことはできません。「彼ら」は過去の,そして,もしかすると未来の「私」かもしれない。そんな思いを胸に,人権擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士として,世界に誇るべき,しかし,現在非常な危機にさらされている平和憲法を持つ国の一市民として,何ができるのか,何をすべきなのか,日々悩み続けていきたいと思います。


◆鈴木麻子(すずき あさこ)さんのプロフィール

1980年生まれ。東京大学教養学部総合社会科学科国際関係論分科卒業。2006年10月弁護士登録,川崎合同法律事務所勤務。
司法試験合格後,イラク民衆法廷の活動に参加し,戦争の悲惨さを実感するとともに,様々な形で平和運動にかかわる弁護士に出会い,このような先輩方のあとに続きたいと思い弁護士を志す。修習生時代から人権NGOヒューマンライツ・ナウ設立準備にかかわり,2006年7月のヒューマンライツ・ナウ設立当初から事務局員として活動に参加。

 


 
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