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歴史を振り返りながら東アジアの非核化を展望する

2006年12月4日

荒井信一さん(茨城大学・駿河台大学名誉教授)
<これは「歴史認識と東アジアの平和」フォーラム(2006年11月3〜5日)での荒井信一さんの発言に加筆していただいたものです。>

 1964年に佐藤栄作内閣ができますが、その直後に佐藤首相は、当時駐日大使であったライシャワーに核武装の意向をつたえ驚かせました。当時アメリカ国務省は日本における「ナショナル・プライドの復活」に注目し、とくに沖縄返還問題と核武装の問題にそれがあらわれているとみていました。核武装については日本の大国主義的ナショナリズムの台頭とかかわらせてとらえていることが特徴的です。沖縄返還は佐藤内閣の政策の目玉として実現しましたが、ひとつにはアメリカが「核の傘」を提供し、引替えに日本が「(核兵器を)もたず、つくらず、持ちこませず」の非核3原則を約束したことによりました。もっとも問題があったのは「持ち込ませず」で、実際には日米間に核密約があり、その後も米軍は何度も日本に核兵器を持ち込んでいます。
 当時、アメリカが日本の核武装論を封じ込めた背景に日本の強国としての復活に対する警戒感がありました。それは中国にとっても最大の関心事でした(「日本軍国主義の復活」論)。1971年にアメリカの大統領特使として訪中したキッシンジャーが秘密会談で強調したのも、日本が「膨張主義」的傾向を持ち「大々的に再軍備をすればやすやすと1930年代の政策を繰り返すことができる」ということでした。同時にかれは在日米軍の存在が「日本に侵略的な政策を追求 させなくさせている」とも主張しました(日米安保=ビンのふた論)。このように共通の歴史の記憶を土台とする日本の現状認識にたって米中国交回復が実現し、またその延長上で1972年の日中国交正常化がおこなわれました。確かにこれにより東アジアの国際関係は安定に向かいましたが、アメリカの核の傘(日米安保体制=ビンのふた)とのあいまいな共生関係が生まれ、これが東アジアの平和の脆弱な部分を構成することになりました。今回の北朝鮮の核実験をめぐる一連の動きはこの脆弱な部分から生じたものといえるでしょう。
 2002年にアメリカ国防省の発表した情勢評価によれば東アジアは中東とならんで核戦争の起こる可能性のある地域とされています。核戦争を防止するためには、東アジアの安全保障の脆弱な部分を修復する方策が必要です。それはこの地域の非核化以外にはありません。
 1963年、国連で核兵器不拡散条約(NPT)が国連で採択されていました。これは、核軍拡を抑止することを目的にしたもので非核化への第1歩という性格があります。しかし同時にアメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスの核保有を固定化するものでした。1996年には地下核実験禁止を含む包括的核実験禁止条約(CTBT)が国連で採択されました。これはNPT体制を現状のままにとどめ、核保有大国の優位を固定しようとする動きに対抗して、核軍縮から非 核化へ進めようとする動きに連動したものです。CTBTが成立していれば今度の北朝鮮地下核実験は起こらなかっただろうとおもいます。ところが、アメリカも中国もこの条約には非加盟となっています。
 東アジアの非核化はアメリカ・中国も含めて核兵器の廃絶への道に進んでいくことによって実現していくことになります。当面の目的は、この両国がCTBTに加入し、さらに核軍縮を加速させることです。北朝鮮に核実験をやめさせNPTに復帰させることが直近の目標ですが、そのためにも東アジア非核化、核兵器廃絶の国際世論を高める必要があります。

◆荒井 信一(あらい しんいち)さんのプロフィール

茨城大学名誉教授。駿河台大学名誉教授。日本の戦争責任資料センター共同代表。
『戦争責任論-現代史からの問い』(1995年、岩波書店)、『従軍慰安婦と歴史認識』(編著、1997年、新興出版社)、『ホロコーストの跡を訪ねる』(2002年、草の根出版会)、『戦争責任論 〜 現代史からの問い』(2005年、岩波書店)、『歴史和解は可能か 〜 東アジアでの対話を求めて』(2006年、岩波書店)など著書多数。

 


 
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