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「もし憲法がなかったら・・・」を沖縄から学ぶ

2006年11月13日

高作正博さん(琉球大学助教授)

<以下は伊藤塾沖縄スタディツアーの際の高作正博さんの講演(抜粋)です。>

・・・

 「もし憲法がなかったらどうなるか」という会話が交わされることがあります。実は、沖縄というところは、憲法を適用されないということを、実際にリアルに体験してきたのです。1972年に日本に復帰する前、沖縄は実際に日本国憲法が適用されない地域だったのです。
 復帰前の沖縄は具体的にはどんな状況だったのでしょうか。例えば、沖縄の人々は土地が取り上げられ、そこに米軍基地がつくられました。人々の財産権が存在しなかったのです。米軍基地が存在することによって様々な事故や事件が多発しました。安全に暮らす権利が保障されていなかったのです。
 したがって、沖縄の復帰運動は単に日本に復帰することを求めたのではなく、沖縄の人々は日本国憲法の下に復帰することを求めたのです。なぜでしょうか。日本国憲法には人権保障、民主主義が定められ、平和主義が定められていたからです。そのような基本的な考え方・価値観を求めたのです。かつて東西ドイツが統一するとき、何によって統一するかという議論が行われました。民族とか宗教とかによってドイツ人を規定するのではなく、憲法という価値によって東西ドイツを統一するのだということになっていきました。ドイツの憲法は基本法といいますが、人権や民主主義というドイツ基本法の考え方に人々が同意することによって統一ドイツがつくられたと言われます。沖縄ではドイツ統一の20年以上前から憲法の価値にもとづく日本への復帰という議論が行われていたのです。

(中略)

 今日、米軍再編が進められていますが、その大きな狙いは米軍と自衛隊の一体化です。それは計画策定、訓練・演習、基地使用の一体化であり、情報共有・情報協力などとして実現されつつあります。最終的には海外での武力行使も共同で行うことが考えられています。ところが、今日までの政府見解によって、自衛隊が米軍と共に海外で武力行使することは集団的自衛権の行使であり、憲法違反となります。そこで政府は集団的自衛権を容認することを検討しているわけですが、今日の米軍再編による米軍と自衛隊の一体化はいわば「改憲の先取り・既成事実化」と言えるのです。

(中略)

 日米安保条約にもとづき米軍が日本に駐留しています。米軍の駐留にあたって日本政府がとるべき措置として日米両政府が合意した行政協定=在日米軍地位協定があります。地位協定には土地の米軍への「提供」、その「運用」、「返還」についての基本的な事柄が定められています。この地位協定にも大きな問題があります。
 通常国が人々に土地を提供してもらうためには契約で土地を確保します。しかし、契約を拒む住民もいます。そこで、住民の土地を確保するための最終的な手続きとして土地収用法が定められています。土地収用法では土地を持っている住民の意見も聴取した上で収用すべきかどうかが最終的に判断されます。ところが、米軍用地の確保についてはこの手続きが行われないのです。米軍用地の確保については地位協定にもとづく国内法である、米軍用地特措法が適用されるのです。米軍用地特措法による土地の確保に際しては、土地をもつ住民の意見聴取は不要となっています。こうして沖縄の住民の土地はなかば強制的に米軍にとりあげられているのです。
 米軍用地というのは、実は土地だけではありません。空も米軍が支配しているのです。那覇空港を離発着する飛行機は低空を飛びます。上空は米軍の支配下にあるからです。沖縄は空も米軍に支配されているのです。地位協定は沖縄の人々の日常生活にも様々な影響を及ぼしているのです。

・・・

◆高作正博(たかさく まさひろ)さんのプロフィール

琉球大学法科大学院助教授。専攻は憲法学。「憲法からみたテロ対策特措法」(山内敏弘編『有事法制を検証する−「9.11以後」を平和憲法の視座から問い直す−』法律文化社、2002年、所収)、「日米地位協定の立憲的統制−基地の提供・返還・管理の場面−」(『日独憲法学の創造力 下巻』信山社、2003年、所収)など論文多数。

 


 
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