法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

適正な手続きを大事にする社会へ〜刑事司法と憲法の考え方

2006年10月23日

庭山英雄さん(弁護士・公設弁護人研究所所長)

―――10月2日、日本司法支援センター=法テラスの業務が開始されました。そこでは被疑者国選弁護制度も始まりました。検察官から起訴される前、つまりまだ容疑者=被疑者の段階では弁護士をつけられない状況をなくそうという、これまでの弁護士や刑事法学者などの提言と取り組みが実りました。庭山さんはこのような刑事司法改革の先頭に立ち、現在そのための公設弁護人制度の提言もされておられます。
ところで、庭山さんなどの活動にも関わらず、少なくない国民が、「『悪いことをした人』が守られる制度づくりが何故必要なのか。安全な社会のしていく上で問題ではないか」と考えています。庭山さんはこのような考え方についてどう思われますか?
(庭山さん)
「悪いことをした」ということは誰が決めるのでしょうか。新聞やテレビがそのように言ったら、その通りなのでしょうか。「悪いことをした」と思われる人がいたら、それは検察官が起訴し、その上で適正な手続きに則って、裁判によって確定されることになるのです。検察官が「悪いことをした」ことを立証できなければ、その人は無罪なのです。「疑わしきは被告人の利益に」という考え方は刑事手続きの大原則です。この考え方があるから、私たち市民は自由に発言し行動できるのです。
もちろん安全な社会にすることは重要なことです。資本主義社会である日本では特に企業の存在が社会にとって大きな意味を持っています。そのような国においては特に社会の安全が保たれることが必要となります。私たち市民も社会の安全という恩恵に浴しています。だからこそ適正な手続きなしに人が「悪いことをした」と決めつけられるような社会にしてはならないのです。
凶悪事件などが起こると容疑者=被疑者をすぐに死刑にしてしまえという声が強まります。しかし、そのような社会になってしまったら、企業も市民もやがて不自由になっていくということを伝えていかなければならないと思っています。

―――憲法に被疑者・被告人の権利ばかり書かれているのはおかしい、犯罪被害者の権利も明記すべきだという意見がありますが、庭山さんはどう考えますか?
(庭山さん)
被疑者・被告人の権利については基本的に先進国では共通です。日本国憲法での規定が特別ということではありません。ただ、日本国憲法での規定はより具体的です。それは大日本帝国憲法下で被疑者・被告人の権利が守られなかった反省があったからです。
憲法というものは国家権力の発動に対して制限をかけるものとしてつくられているのです。警察によって逮捕されたり、検察官によって起訴されたりすると、国民は不自由を強いられます。そこで、国家権力が権力を発動することによって国民に不自由を強いる際の条件として憲法の刑事手続きの規定があるのです。憲法に被疑者・被告人の権利が具体的に書かれているのは当然のことです。
犯罪被害者の権利は大事なことです。犯罪被害者が民事裁判で損害賠償を求めるのも当然ですし、弁護士もその代理人として活動することになります。しかし、あくまで憲法に示された適正な刑事手続きは守られなければなりません。日本の被疑者・被告人のおかれる立場が諸外国と比べても低い状況は改善されなければなりません。

―――日本司法支援センターの業務が始まり、日本の司法はいま大きな変革期を迎えていると思います。庭山さんはどのように評価されていますか。
(庭山さん)
司法改革は多面的であり、一言では申し上げられませんが、日本司法支援センター=法テラスの発足で、過疎地域への弁護士の配置が進み、法的トラブルの解決に役立つ情報が市民に対して無料で提供されることになったことは良いことです。被疑者国選弁護制度の開始も前進です。犯罪者と疑われ逮捕されてしまった人に対して、起訴される前に、つまり被疑者段階で弁護士がサポートする必要性があります。これまで弁護士がポケットマネーで取り組んできた当番弁護士制度から一歩前進です。解決すべき様々な問題は残されていますが、司法に対する国民の期待と私たちの提言・運動が少しづつ実ってきていると思います。
司法改革では2009年から導入される裁判員制度も重要です。主権者である国民は司法の担い手にもなっていく必要があります。日本社会全体を国民本位に変えていく重要な課題だと思っています。

―――最後に庭山さんの憲法に対するお考えをお聞かせください。
(庭山さん)
日本国憲法は国家権力がその権力を乱用しないよう規制する内容になっており、それを変える必要はまったくありません。今日出されている改憲論には賛成できません。
今日の改憲論が憲法の平和主義の規定を変えようとしていることも問題です。私は戦前・戦時中は軍の仕事に動員され、敗戦によって苦しい生活を経験しました。ジョン・レノンが「イマジン」で歌ったように、私たちは戦争がどんなものなのか、憲法の平和主義の規定が変わるとどうなるのか、イマジネーションを働かせ、改憲問題について考えていきたいと思います。

―――本日はありがとうございました。今後ともご一緒に憲法の考え方を社会に広げていきたいと思います。

◆庭山英雄(にわやま ひでお)さんのプロフィール

中京大学法学部長、香川大学法学部長、専修大学教授、日本民主法律家協会理事長など歴任後、現在弁護士。公設弁護人研究所所長。
「民衆刑事司法の動態」(成文堂)、「自由心証主義」(学陽書房)他著書多数。

 


 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]