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『戦争をしない国 日本』への思い

2006年10月16日

片桐直樹さん(映画『戦争をしない国 日本』監督)
「戦後、このように危うい道を辿ってきたことを初めて知りました。どんなことがあっても戦争はしてはいけない。九条は守るべきとの思いを強く致しました。素晴らしい映画をありがとう。学校などで若い人たち,学生等に是非見せて欲しいと強く願っています」 61歳 主婦

「この映画によって、日米の軍事関係が強化されてきた背景を知ることが出来ました。他方、憲法改悪の動きがそんなにも古くからあったと言うこと、それを阻止する人々の斗いが繰り返されてきたこともこの映画で初めて知りました。
最近のイラク戦争などの戦争報道を見て感じることは、戦争とは国家による大量殺戮、強盗、最大の環境破壊ということなどを、悲惨な画面を意図的に避けることによって、忘れさせているのでは?ということです。この映画は戦争の悲惨さを忘れている人々に、戦争とは何かということを改めて考えさせるきっかけになるのではないかと思います。現在のマスメデアは真実を知るには余りにひどいので、一人でも多くの人にこの映画を見て欲しいものです」64歳 女性
 

チラシ表(PDF)
上記の文章は10月6日、台風並みの風雨の中、完成試写会に来ていただいた方から寄せられたアンケートの一部である。作った監督としては製作意図をよく汲んでいただき、大変に嬉しいというところだが、映画はいくらフイルムを作っても上映されなければ映画としては機能しない。これからが本当の映画の仕事ということになる。
思い返せば、井上ひさしさんを初めとする九人の賢人が呼びかけた九条の会のアピールは、自分には何ができるか? という問いかけであった。私は映画界にはいって50年を越える。ニュース映画から劇映画、人形アニメまで映画と名がつくものは何でも経験した。但し、戦争賛美の映画とポルノはやっていない。
初めて監督したのはドキュメンタリー『裁かれる自衛隊』である。この映画の一部は今回の『戦争をしない国 日本』にも登場するが、北海道恵庭の酪農家野崎さん一家が度重なる自衛隊の砲撃演習で生活破壊に追い込まれ、度重なる陳情、抗議にも自衛隊は応ぜず、生活権を守るため息子の2人が射撃場の通信線を切った。自衛隊は2人を千歳署に告訴。千歳署は器物損壊で書類送検したが、札幌地裁はより重罪の自衛隊法で起訴した。国側は違憲の疑いの濃い自衛隊を法的に社会的に認知させることを企んだのである。通信線切断の器物損壊事件は俄然自衛隊の違憲性を問う裁判となった。400人を超える弁護団が組織され、憲法学者が協力し、審理中に『三矢作戦』が暴露されて自衛隊幹部が証人として出廷した。『裁かれる自衛隊』といわれる恵庭裁判である。その映画製作は結審の半年前頃、弁護団が中心になって企画されたもので、私は野崎牧場に泊り込んで裁判所、演習場などを撮影した。判決は無罪だったが自衛隊には触れず、いわゆる「肩透かし判決」だった。「両名の行為について自衛隊法の要件に該当しないから、自衛隊の憲法問題に関し判断を行う必要ないし、行うべきでない」と憲法判断を避けたのである。その時の裁判支援者の何とも云えない顔が映像として残っている。しかし、恵庭裁判は、軍事のためには一般刑法よりも重罪を科して市民の基本的人権を侵害できると言う国家権力の考え方を、司法が無罪判決で歯止めをかけた。(深瀬忠一「恵庭・長沼裁判20年の成果と課題」法学セミナー)この裁判で憲法前文と九条をつないだ平和的生存権が初めて登場し、長沼ナイキ裁判で自衛隊違憲判決を勝ち取ることになる。

チラシ裏(PDF)
司法は米駐留軍違憲の伊達判決以来一貫して「統治行為論」を盾に自衛隊と九条に関する裁判では憲法判断を避けつづけている。今日自衛隊が巨大に肥大化したことに司法は多大の責任がある。と思っているが、国民の斗いは決してそれを許さないだろう。
『裁かれる自衛隊』を作ったことが私にとって一生を決定することになろうとはそのときは夢にも思わなかったが、今考えてみると、今日までその基軸にそって生きてきたと思う。その後、岩手県沢内村を描いた「自分達で命を守った村」、ベトナム戦争の総括とも言える「トンニャッ・トベトナム」(ベトナム統一)、被爆者の証言「生きるための証言」、戦争で才能も命も容赦なく奪われた天才彫刻家を描く劇映画「潮音〜ある愛のかたみ」、「日独裁判官物語」、「核のない21世紀を」、企業と政治が産み出したじん肺の告発「人として生きる」などを創ってきた。今度の『戦争をしない国 日本』はその集大成と言うより総括のつもりで取り組んだ。

『戦争をしない国 日本』の基本になっている記録映像は、憲法公布以来六十年、常に憲法を守らせる側にたってたたかって来た人々が撮った映像である。1950年、レッドパージで撮影所、ニュース映画社を追われた映画人たちが、労働組合や民主団体に依拠して自主的に創り出した映画運動、それは第一次独立プロ映画運動と呼ばれるが、「どっこ生きている」今井正監督、「真空地帯」山本薩夫監督、「雲流れる果てに」家城巳代治監督、などの劇映画の名作と共に現実の斗いを描く優れたドキュメンタリーが70年代後半まで数多く製作された。私も幾つかの作品に(劇映画も含めて)参加している。
 『戦争をしない国 日本』では「1952年メーデー」以来40本の特に憲法、九条に関係ある作品を選び、その部分を使用した。主なものを挙げると「砂川の人々」「日本の軍事基地」「1960年6月安保への怒り」「血のメーデー」「黒い潜水艦」「横須賀をベトナム侵略の基地にするな」などがある。こうした作品は今殆ど見られることはない。が今回の『戦争をしない国 日本』を見ることで個々の作品にも興味を持つ人々、特に若者が出てくることを期待したい。記録映画は歴史に証人と言う言葉がある。歴史的事実の厳然たる記録だからである。そのときどの立場にたって撮られたか? が問われる。戦後史を学ぶことのない若者達に真実の歴史を知って欲しい。その時代を生きた人々にはその当時を思い返し歴史の教訓を若者に伝えて頂きたいと思う。そのことが憲法改悪を阻止する大きな力となることと願っている。

◆片桐直樹(かたぎり なおき)さんのプロフィール

映画監督。『裁かれる自衛隊』『自衛隊』『トンニャット・ベトナム』『生きるための証言』『日独裁判官物語』『人として生きる』など多くのドキュメンタリーを監督、一貫して社会的問題に取り組む。

 


 
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