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今週の一言

 

軍隊を捨てた国コスタリカからバルガス教授来日

2006年7月3日

児玉勇二さん(弁護士)
1、
戦争放棄の憲法を持ちながらアメリカの戦争の道に進んでいこうとしている日本と、軍隊を捨て、話し合いの、平和的解決を国の基本方針、憲法に掲げ、その実現のため日々努力し、自国のみならず隣国の軍事紛争にも平和的話し合い解決に努力しているコスタリカとが、日本と世界に向けて、紛争は武器、力でなく、平和的解決を目指す途を示していこうと、6月30日、コスタリカのバルガス・コスタリカ大学教授が来日しました。
 北は北海道、南は沖縄まで6月30日から7月17日まで滞在し、各地で平和についての集会を企画しています。広島ではアメリカを被告とした原爆法廷などを企画し、東京では7月4日、弁護士会館の2階のクレオにて午後6時から8時30分まで「平和を語る講演対話集会」(早乙女勝元さん「私とコスタリカ」、カルロス・バルガス教授「軍隊を捨てた国コスタリカについて」、特別報告 児玉勇二「コスタリカの教育と教育基本法改悪問題」、パネルディスカッション:テーマ「戦争と平和」バルガス教授と戦争被害体験者、コーディネーター伊藤千尋さん(朝日新聞「論座」編集部))の企画を予定しています。これらの集会に是非皆さんも参加していただき、紛争や武器や軍事行動でなく、国連憲章やコスタリカ憲法、日本国憲法第9条などの下で、話し合いでの国連を中心とした、平和的解決が21世紀に人類が生き残っていくためにも必要であり、大切であることを確認し、これを日本と世界中の人々とで平和をつくっていくためにも重要な集会となりそうですので是非ご参加いただければと思います。

2、

2003年1月コスタリカに訪問した日本の弁護士との対話でのバルガス教授の話を紹介します。
コスタリカがどうして軍隊をなくして国家として生きていけたかといえば、真の意味の民主主義を子どもや女性らの人権を保障し、無料医療を保障し、教育を保障していったからである。コスタリカにとってこれは簡単なことではなかった。軍隊のない状態で民主主義を進めようとした我々の前に立ちはだかったのは、例えば、70−80年代のニカラグアでソモサ政権に続いてサンディニスタ政権がおこり、激しい戦争が続いたことだ。アメリカによって、サンディニスタ政権のニカラグアの海岸は狙われていた。
コスタリカは、こういった様々な危機を乗り越えて、1948年に廃止した軍隊を二度と復活させないという理想を追求した。それは、民主主義の根本としての対話をすることで可能だった。子ども達はそのように教育をされたし、私たちもそのような教育を受けてきた。対話で紛争を解決したのだ。
この対話への努力が1986年から政権をとったアリアス大統領のノーベル平和賞となった。それまでは、中米各国は、座って対話をしようという状態ではなかった。アリアス大統領の腐心した中米和平合意によって、長年続いた中米の紛争に終止符が打たれた。
「どういった過程で永世中立を宣言したのか。これのメリットとデメリットは。日本もコスタリカと同様に軍隊を持たないほうがいいのか」という質問について答えよう。
永世中立宣言をするにあたって大切なのは、人権の尊重及び民主主義の確立だ。民主主義は、周辺諸国と民主主義的関係を築くという意味でもある。対話は、周辺諸国との間でも、内国においても重要であり、様々な問題を解決できる道具だ。教育も大切である。人権の大切さ、民主主義の重要性は、教育を通じてこそ伝えることが出来る。
私は、日本は永世中立国であるべきだと思う。アジアの中で永世中立宣言が出来る第1の国だと思う。
その理由の一つは唯一の被爆国であることだ。永世中立国になることによって、二度といかなる市民も被爆させてはならないというメッセージにもう一度意義を与えることが出来る。もう一つの理由は、日本の教育水準の高さだ。もう一つは、日本の経済力。

コスタリカ・サンホセ市内を望む
最後に、戦略的な意味からコスタリカが理想としていることについて話そう。紛争に巻き込まれたらどうしたらいいか。コスタリカが現在非武装の平和国家であるが、しかしながら、武装した平和を装う国がある。これらの国々は、武器を他の国に輸出する。こうした見かけだけ平和で実際には武装しているという国では、いつ平和が崩れ去るともわからない。この現実を考えるとき、コスタリカの選択は間違っているだろうか。
コスタリカの司法機構について述べると、裁判官の任命では、いかなる政治的圧力からもフリーである。学問的キャリアや経験が考慮されるだけ。米州機構に所属していることについては疑問を呈する余地はない。
これに所属しているからこそ、ラテンアメリカ、世界に人権、平和を主張できる。ラテンアメリカは、毎日クーデターや人権蹂躙の混乱が続いている地域だが、このようなバックがあるからこそ、大きな組織のメンバーとして、このような主張をしていくことが出来る。
日本は、米州機構の考え方をアジアに応用するべきだ。日本は韓国、中国とも違うし、それぞれの国々は、それぞれ違う。しかし、それぞれ協力すべきだ。
コスタリカには米州人権裁判所があるが、どうしてアジア人権裁判所があればいいと思わないか。日本人のみなさんが、最初の音頭をとらないといけない。アジアにも米州人権裁判所のようなものが必要だ。

3、
バルガス教授とカレン女史の来日を契機に作られた「コスタリカに学ぶ会」の人たちを中心に2003年1月に視察した。バルガス教授やカレン女史からコスタリカの教育について、「徹底した対話を重視し、紛争は話し合いによって解決する」、「政治活動を重視し、大人の選挙に子どもたちも参加させ、学校内において選挙を通じた活動をしている」ことが紹介されていた。軍事費がかからないため、現在、国家予算の30%が教育費にまわされ、財政困難な開発途上国の中でも、長年の間教育を重視した政策をとって、一人ひとりの人間性を形成してきた。公教育省の役人も、現場の先生たちも、バルガス教授家族も、今日の平和なコスタリカがあるのは教育のおかげであることを語っていた。
授業の中では、日本の教育基本法第一条に見られるようなヒューマニズムに富んだ人間的価値観を重視し、自然を大切にし、平和を愛し、批判的視点を持ち、連帯し、誠実で、向上心を持ち、理想のために戦い、人格を希求することを基本としている。
平和教育も、単に軍隊がないこと、戦争がないことだけでなく、すべての形の暴力が存在しないこと、それが平和と民主主義の根底にならねばならないこと、争いがあったとき語し合いによって平和的に解決していくこと、暴力を無くしていく取り組みの中で、学校内でのいじめや、体罰、児童虐待、子どもの親に対する家庭内暴力もないとのことであった。
「コスタリカの教育の価値観が定着していると述べられたが、そこまで到達させるには、何がそうさせたのか」の質問に対して、「歴史的に見ても1949年にコスタリカで軍隊が廃止されたことが重要な意味を持つ」、「その後軍隊をなくすだけで終わりではなくて、もっとさらに突き進んでいくことが大切」と述べ、「単に軍隊を捨てただけではなく、それ以上のものを作っていく、紛争を理想的な話し合いによって解決し、暴力をなくし、対話と民主主義と人権によって平和を作り上げていく教育の大切さ」を語っていた。
 「戦争は子どもに犠牲を強いるもの、軍隊を放棄しているこの国において、子どもに対する平和教育はどのようにしているか」の質問に対し、「戦争がないということは、毎日安心して外出できる暮らしができる。平和は外から来るものではなく自分の心の内からくるもの。社会に、家庭に、自分の心に平和があることが重要である」「日本の子どもたちは他人に勝つことを求めているが、コスタリカの子どもたちは何を求めているか」の質問に対して、「競争の精神はあまりありません。公教育省のスローガンに『いつでも私たちはもっとより向上できる』というのがありますが、それは競争心をあおることではなく、期待されていることを果たす、人々に敬意を払うということが期待されています」と述べ、この国の教育のすごさに驚嘆した。


<カルロス・バルガス氏(コスタリカ国際法律大学教授・国際反核法律家協会副会長)の日本各地での講演の日程>

7月1日(土)・2日(日):沖縄集会
7月3日(月)18時〜歓迎会。東京・レストラン・キャッスル
7月4日(火)18時〜東京・弁護士会館2階クレオで集会
7月5日(水)18時〜千葉・柏で集会
7月6日(木)13時〜参議院院内集会。18時〜東京・四谷ニコラ・バレ教会で講演会(主催:キリスト者平和ネット)
7月7日(金)18時〜パネルディスカッション(主催:ピースボート)
7月8日(土)・9日(日):北海道集会
7月10日(月):久留米集会
7月11日(火):愛媛集会
7月12日(水):京都集会
7月13日(木):大阪集会
7月15日(土)・16日(日):広島集会
関連ページ

◆児玉勇二(こだま ゆうじ)さんのプロフィール

弁護士。日弁連子どもの権利委員会副委員長など子どもの人権などの分野の要職を歴任。
『子どもの人権ルネッサンス』(1995年、明石書店)など著書多数。


 
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