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宗教者が平和と九条を説示する

2006年5月22日

村中祐生さん(天台宗慈照院住職、元大正大学長、「宗教者九条の和」呼びかけ人世話役)

―――先生は「宗教者九条の和」呼びかけ人世話役としてご活躍です。まず、「宗教者九条の和」の結成ととりくみについてお聞かせください。
(村中祐生さん)
いま社会が大きく変わってきている、大変恐ろしい方向に変わってきている、何かしなければならないと考えていた時に「九条の会」のアピールがありました。各界の人たちがとりくみをはじめ、私たち宗教者も話し合いました。これまでも宗教者も個々に平和のためのとりくみをすすめてきましたが、やはり九条を守るという点では一致できるし、しなければならないと考え、昨年「宗教者九条の和」をつくりました。結成にあたっては、宗教の原則をふまえてつくった「『宗教者九条の和』の願い」を皆で確認し合いました。

「『宗教者九条の和』の願い」

憲法第九条を「輝かせたい」と願う人々とその意義を語りあい、思いを他に伝えたい
憲法第九条が世界の文明構築に普遍的な意義を明示し指針を示している、と了解したい
世界が国際化を進める中で、互いの国の平和が道義的軌範の核となることを信じたい
私どもは宗教者として平和を願う人々と真に平和のあり方を考え、共に祈誓したい
宗教者は自らの所信に遵(したが)って、平和の世界を具現するために調和と抑制を説示したい

―――「宗教者九条の和」には大変多くの宗教者の方々が呼びかけ人になっておられますね。
(村中祐生さん)
いろいろな宗教者の方にご賛同いただくことができました。
キリスト教の皆さんはカトリック、プロテスタント双方から多くの方が呼びかけ人に加わってくださいました。仏教の方も多くの宗派の方が加わってくださいました。快くお引き受けいただいた方が多く、お誘いを喜んでくださった方もいらっしゃいました。宗教者は平和の大切さを無意識のうちに感じているのです。
いっしょにとりくみをすすめる中で、キリスト者も仏教関係者も現世の問題についてはお互いに同じことを言っていると感じ合っています。

―――宗教者の皆さんの訴えは反響が大きいのではないでしょうか。
(村中祐生さん)
私は最近法事などの場でも憲法九条の話をするのです。九条を変えて日本が戦争をできる国にしてはならないというお話です。年輩の方が多いので、私は、ぜひ戦争とはどういうものなのかを子どもや孫たちに語って欲しいと訴えるのです。そうすると、涙を流して聞いてくださる方や、いいお話を聞いたと言ってくださる方がたくさんいらっしゃいます。年輩の方々は戦争体験者や戦争で身内の方を亡くしていますので、理屈抜きに戦争はいけないと思っているからなのです。私は、いまこそ戦争を経験した世代の出番だとお話しているのです。

―――村中先生は最近の憲法「改正」をめぐる動向をどのようにとらえておられるのでしょうか。
(村中祐生さん)
私は最近の日本をめぐる状況として、九条を中心とする憲法の「改正」、首相の靖国神社参拝、愛国心を盛り込もうという教育基本法の「改正」、この三つに注目しなければならないと思っています。これらをバラバラにとらえてはなりません。これらについての首相や自民党関係者の言動を見ると、日本が戦争に突入していった歴史を無視し、いままた戦争を推進した靖国神社を賛美し、子どもや国民に愛国心を植えつけながら戦争に駆りだし、アメリカの言いなりに戦争のできる国にしていこうとしていることが明らかです。
最近の歴代首相を見ていると、国の本来的なあり方を考えず、単なる国益のみに目を向けているように思えてなりません。国益優先で他の国と争うのではなく、むしろ他の国との争いを避け、国の道義的なあり方を考えることが求められるのですが、そのようなことがほとんどなくなってきていることを危惧します。

―――先生の平和への思いは仏教の教えにも通じているのでしょうね。
(村中祐生さん)
平和というのはいわば国是なのであり、簡単に忽せにしてはなりません。
日本はかつて平和の考え方を持って、中国大陸の諸国と交流してきました。平和の「和」は聖徳太子の教えの第一番目であり、「和」の思いは仏教では一貫した考え方なのです。天皇も仏教の教えに学び、「平安京」がつくられ、その平安時代には弘法大師などによって仏教が隆盛し、国家の平和に貢献したのです。その後戦国の世となり、明治政府からは廃仏毀釈=仏教弾圧を受けたのですが、第二次世界大戦を経て、ついに平和の理念は日本国憲法に結実したのです。この人類史的流れを逆行させてはならないのです。
日本国憲法は政教分離を定め、宗教と国家の関係が整理されていますが、仏教は仏教としての役割をふまえ、その教えを発信していかなければなりません。これまで仏教は絶えず為政者に対して普遍的道義的な規範を説き続けてきました。国家は経済や国益にのみ目を向けるのではなく、国家の正しいあり方を考え追求していかなければならないのです。九条にはそれが凝縮しているのです。

―――大変奥深いお話をお聞かせいただき、ありがとうございます。今後ともよろしくお願い致します。

◆村中祐生(むらなか・ゆうせい)さんのプロフィール

天台宗慈照院住職、元大正大学長、「宗教者九条の和」呼びかけ人世話役。『天台法華宗の研究』『天台宗教聖典』など著書多数。

※「宗教者九条の和」は5月27日に、「全国協働の集い『輝かせたい憲法第九条』 − 第2回シンポジウムと平和巡礼 in京都」を開催されます。


 
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