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今週の一言

 

日本での憲法「改正」の動きへのアジアの人々の不安

2006年3月6日


符祝慧さん(シンガポール「聯合早報」東京特派員)

―――符さんは日本社会の様々なニュースをシンガポールの人々に知らせる仕事をされていますが、日本社会の今日の憲法「改正」の動きをどのように見ていますか。
(符祝慧さん)
私は1983年に日本の大学に留学し、その後メディアの仕事を経て、1991年から再来日し、いまシンガポールの華人向けの新聞である「聯合早報」の特派員として働いています。1991年という年は、湾岸戦争の際に日本の自衛隊がペルシャ湾に派遣され、自衛隊が初めて海外に出動した年です。その際、シンガポールはその経由地になり、迷彩服を着た日本の自衛隊員をシンガポールの市民は街で見かけることになったんです。日本は太平洋戦争の時にシンガポールも侵略し、1942年から3年間占領していましたので、シンガポールの市民はまた日本が軍国主義の道を歩みだしたのかと驚き、不安が一気に高まりました。それ以降、1992年にPKO法が制定され、カンボジアへの自衛隊派遣なども行われるようになる中で、アジアの人々は日本の動きに不安を感じるようになったと思います。
その後、戦後50年の1995年に村山首相が談話を出し、日本のアジア侵略を反省しましたが、今度は戦争の時の従軍慰安婦問題などはなかったという小林よしのり氏などの主張が脚光を浴びるようになり、そして2001年の9・11同時多発テロ事件を経て、ついに日本の自衛隊が戦闘地域といえるイラクにも派遣される事態となり、そして憲法9条も変えようとするに至っています。
私は再来日以降の日本社会のこうした変化を大変危惧しています。実は私の日本の大学への留学には祖母が強く反対していました。戦後、私の祖父と再婚した、血のつながってはいない祖母ですが、戦争の時に、目の前で夫を日本軍に殺されていたからでした。しかし、戦後世代の私は、戦後の日本は戦争を反省し、大きく変わったと思っていました。それを自分の目で確かめ、祖母にも伝えたいと考え、祖母の反対を押し切って日本に来たんです。ところが、その後の日本社会の変化を見ると、大変恐ろしいことになってきていると思います。

―――やはりアジアの人々の日本での憲法「改正」の動きに対する懸念は大きいのでしょうね。
(符祝慧さん)
日本はアジアのリーダーになりたいようですが、それならばもっとアジアに目を向ける必要があると思います。日本人にはいまなおアジアを蔑視するようなところがあります。相変わらず目が欧米を向いている感じです。
戦後60年を過ぎましたが、私は、日本政府はアジアの国々を侵略したことを心から反省しなければならないと思います。日本国憲法9条は日本のアジア侵略戦争への反省から生まれました。そして、日本が憲法9条によって戦争を放棄し、軍事力を保持しないということで、不戦の誓いを表明したことはアジアの人々を安心させたんです。いまアジアの人々は、日本は戦争を放棄したのに、何故いままた軍事力を欲しがっているんだ、と不安を感じているんです。
私は、日本政府ははたして憲法9条の考え方の実現をめざしてきたのかどうかが問われるべきだと思います。9条の実現の方向とは逆方向の、自衛隊を海外の戦闘地域に派遣するような事態はおかしいと思います。

―――おっしゃるとおりだと思います。ところで、日本国憲法9条の考え方はもっと世界に広げられる必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
(符祝慧さん)
そう思います。私も日本に来てこの憲法が世界に広がり、戦争のない世界ができたらいいなあと思います。誰でも銃を持って他人を殺したいとは思わないし、武力を強化すればするほど隣国との関係も悪くなると思います。国際関係はお互いの信頼を構築することを目指すことが前提だと思います。軍隊を持ち、武力紛争に備えることは、各国間の不安の連鎖がずっと続くことになります。日本国憲法9条の考え方は、平和な世界を実現するために各国に広がるべきものだと思います。

―――今日はありがとうございました。アジアの人々との平和で友好的な関係を広げていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。


◆符祝慧(フー・チュウウェイ)さんのプロフィール

シンガポール生まれ。1983年、日本の大学に留学。その後メディアの仕事に携わり、1991年以降華人向けシンガポール紙「聯合早報」東京特派員として活躍中。


 
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