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核兵器廃絶と平和の願いをアニメで伝える

2006年2月20日


有原誠治さん(アニメーション演出家。「NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘」監督)

―――有原さんは映画「NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘」をつくり、上映活動をすすめておられます。その思いととりくみをお聞かせください。
(有原さん)
アニメーション映画づくりをしている私たちは2005年の戦後60年の節目の時期にどんな作品をつくろうかと相談しました。私たちは、平和憲法を変えようという動きが強くなってきている中で、あらためて戦争の悲惨さ・愚かさを人々に伝えていきたいと考えました。
そんな時に、秋月辰一郎さんという医師の「長崎原爆記」という本に出会いました。私はその本のメッセージの凄さに圧倒されました。そこには、長崎に原爆が落とされ時の被爆の状況を伝えるとともに、その悲惨な状況の中で人間がいかに生きてきたのか、いかに生きるべきなのかが書かれていたんです。秋月先生がいろいろと迷いながら、声高にではなく、静かにそれを語っているんです。私はここには「人間が描かれている」と感じ、惹かれました。秋月先生自身も被爆されたんですが、秋月先生がご自身の被爆体験と同時に、その地域の住民の様子や戦争の原因などについても思いを馳せ綴っていることにも感銘を受けました。被爆直後に町会長が「日本がアメリカに新型爆弾を落としたそうだ」とのデマを持ち込んできたときに、秋月先生は戦争の被害はもうたくさんだということを訴えました。それは決して秋月先生だけではなく、多くの人たちがそう思っていたんです。それが戦後の平和憲法の制定につながったと思うんです。
いまなお核兵器で相手国を脅す事態が続いています。戦争で劣化ウラン弾が実際に使用され、イラクの子どもたちが悲惨なことになっています。放射線の被害は今日的な問題なんです。私たちはぜひ広島・長崎から平和の願いを発信しなければならないと考え、この映画をつくったんです。

―――有原さんたちの思いをアニメーションで伝えるためにはいろいろな工夫をされたのではないでしょうか?
(有原さん)
原爆の話は重たいものですし、決してハッピーエンドになりませんから、アニメの題材としてはつらいところはあります。ただ、これまでも原爆を題材にしたアニメはありましたが、被爆の瞬間とその後の経過を具体的にとらえる作品も必要だと思っていました。
被爆の悲惨さを視覚的によりリアルに伝えることが反戦・平和の考え方を広げていく力になるという考え方があるんですが、私は必ずしもそのように思いません。悲惨な場面をむき出しにして見せたら、拒否反応を起こしたりストレスを感じる人もいます。特にアニメを観る子どもたちのことを考える必要があります。悲惨な場面全部をそのまま見せるのではなく、見る人が想像力を膨らませるためのヒントを提供することが大切なんだと思っています。

―――実際に上映してみて、映画を観た人たちの反響はどんな感じでしょうか?
(有原さん)
全国各地で上映会が開催されるようになってきていますが、嬉しい感想が多く寄せられています。長崎北高では全校生徒が鑑賞してくれましたが、素晴らしい感想がたくさんありました。
「・・・『核兵器は人間と共存できない』このことを私は確信する。この世界に核兵器がなくなるまで、私は平和を主張していきたいし、願いたい。そのように思えたこの映画を、全国に、いや世界にもっと配信して欲しいと思った。」
「・・・私は将来、保健師として地域の人とかかわっていこうと思っています。地域に触れ合いの場を作ったりして、一人でも多くの人がよりよい暮らしができるよう、今日思ったことを踏まえて勉強していきたいです。」
「・・・あの時の日本は独裁的な社会で、作中にもあったように、本当に“罪のない人々”が犠牲になりました。だけど、今の日本は国民が中心で、私たちは以前よりずっと自由な発言ができ、国を変えてゆく権利を得ました。しかし、今日、社会問題の一つに若年層の政治への無関心があります。このまま憲法が改正され、日本が戦争をする国になり、私たちが害を被ったとしても、もう私たちは“罪のない人々”ではいられないのだという意識を痛感しました。・・・」
私は高校生たちが実によく社会について考えているということがわかりました。
兵庫での上映会に参加した方も個人のブログで「全世界の人に是非一度は見てもらいたい作品です」と紹介してくださっています。
埼玉の高校が長崎への修学旅行の事前学習として鑑賞会を開いてくれるなど、上映活動が少しずつ広がってきています。

―――「アンゼラスの鐘」をつくり、そして上映する中で、有原さんが特に感じ考えたことはどんなことでしょうか?
(有原さん)
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が毎年のようにノーベル平和賞候補になる理由がよくわかりました。被爆者たちの、原爆被害者は自分たちを最後にしてほしい、という考え方は凄いと思うんです。報復ではありません。事実を伝え、世界中の人々の理性に働きかける反核反戦の闘いです。戦後日本の誇るべき文化だと思いました。その願いの土台に憲法9条があるということも実感しました。それは、広島の被爆者も東京大空襲の被害者も、沖縄戦の被害者もみな同じ思いだと思うんです。
もう一つ、実感したこととして、長崎や広島では非核平和の願いが地域の共通の財産になっているということです。「アンゼラスの鐘」をつくるときも、長崎市長も議会も市の商工会もみんな協力してくれました。政治的な立場が異なっても非核平和という一点では共同しているんです。長崎市長も様々な場で核兵器廃絶を訴えます。長崎や広島では頻繁に国際的な平和イベントが開催され、そこはまさに “平和の文化都市”であり、平和憲法にもとづく自治体を見る思いです。長崎・広島の原爆被害や沖縄戦の被害、東京大空襲の被害、そして戦争の加害などについては世代を超えて語り継いでいく必要があると、あらためて感じています。
映画の英語版もつくりました。ぜひ諸外国の人たちにも観てもらいたいと思っています。

―――「アンゼラスの鐘」がぜひ多くの人たちに観てもらえることを願っています。本日はありがとうございました。

◆有原誠治(ありはら・せいじ)さんのプロフィール

アニメーション演出家。
現在 虫プロダクション所属。
映画「NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘」監督。
代表作品:長編に「うしろの正面だあれ」「えっちゃんのせんそう」「ライヤンツーリーのうた」。短編に「つるにのって」「鬼がら」「越後のむかし話・あったてんがのぉ」他。
演出業のかたわら、映像・文化関連産業労働組合委員長、NPОアニメーションミュージアムの会副理事などをつとめる。
■映画「NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘」東京上映実行委員会のブログ


【読者プレゼントのご案内】 

上記の有原誠治さんのインタビュー記事などについてのご感想をお寄せくださった方に、抽選で「NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘」上映会(3月15日(火)19:00〜、東京・文京シビック小ホールで開催)の招待券(1枚で2人まで入場できます)を2名様にプレゼントします。詳しくはこちらへ。


 
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