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中学生が憲法を学ぶ

2006年1月16日


小堀俊夫さん(中学校教員)

―――小堀さんは「憲法9条にノーベル平和賞を!」という主張について中学校の生徒の皆さんに議論をしてもらう授業をされました。その問題意識と内容をお聞かせください。
(小堀さん)
私は昨年中学校の憲法についての公開授業を担当することになりました。私はその授業を生徒に対して一方的に話すのではなくて、生徒同士が討論することによって理解し、自分の意見を持てるような場にしたいと考えました。その時期に、日本国憲法の案の起草に携わったベアテ・シロタ・ゴードンさんの講演会があり参加したところ、「憲法9条にノーベル平和賞を!」というチラシを目にしました。私はこのテーマで授業をすればよいと直感的に思い、やってみたということです。
「憲法9条にノーベル平和賞を!」という主張については賛成の生徒もいましたが、憲法9条が決して守られているとはいえない現実を述べて異議を唱える生徒もいました。生徒たちから実に多様な意見が出されました。
実はこの授業より前の時期に、戦時中の東京大空襲の被害者の方に来ていただき、生徒の前でその体験と思いを語ってもらっていました。そのお話は生徒たちに衝撃を与えました。そして生徒たちは日本国憲法が悲惨な戦争体験を経て日本人が選択してできたということを勉強しました。このような勉強を通して「憲法9条にノーベル平和賞を!」という討論が行われましたので、生徒たちの理解はより深まることになりました。

―――小堀さんは以前から日本国憲法とその理念を生徒たちに教える工夫をしてきたのでしょうか。
(小堀さん)
憲法については教科書の記述もだんだん変わってきています。かつては自衛隊は違憲の存在であるという説も明確に書かれていましたが、今日では自衛隊の存在を所与のものとするような記述になってきています。また、自衛隊が海外に出ていくようにもなっていますので、生徒たちの考え方も以前とはだいぶ変わってきています。したがって、憲法の考え方にはかなり工夫が必要なのです。
私は憲法の条文を覚えさせるだけの教育ではだめだと思っています。また、9条や25条の意義を語るだけでもだめだと思っています。その意義を強調するだけでは、それが社会に生かされ実現しているとはいえない現実を知っている生徒たちは、憲法はお題目なのだという理解になりがちです。
そこで私は、憲法を活用して現在でもたたかわれている実際の事例などを生徒たちに示すことを意識的にすすめています。たとえば生存権をめぐる訴訟です。結核で入院中の朝日茂さんが当時月額600円の日用品費支給の削減に怒って裁判をたたかったことは有名ですが、朝日さんの死後、その訴訟の判決文を書いた裁判官である小中信幸さんのお話などを生徒にします。小中さんは朝日さんが当時置かれていた状況に思いを馳せ、その判決文を手元から離したことはないという手記を明らかにしているのです。朝日さんが生存権を主張してたたかった思いをその後小中さんが引き継いでいるのです。生存権をめぐっては朝日訴訟以降もいろいろな人が裁判でたたかっています。このような訴えと努力を通して生存権という権利が日本社会に少しずつ日本社会に定着してきているということを話すと生徒たちは憲法の力を具体的にイメージできるようです。憲法はまさに現在の社会の問題であり、それを実現するのは生徒たちを含めて一人ひとりの国民なのだということを理解してもらっています。

―――教師の皆さんは試行錯誤の日々だと思うのですが、全体的にどのような状況なのでしょうか。
(小堀さん)
教師自身も以前に比べて自衛隊の存在を合憲と考える人が増えていると思います。また、そのような現実の中で、自衛隊の存在や海外派遣について批判的な教師の側も、そのようなことを授業で話すことにおよび腰になってしまう傾向があります。政治的な主張になってしまうと危惧するからです。

―――そもそも憲法とは何かということが社会全体で十分理解されていないこともその背景にはあるのではないでしょうか。
(小堀さん)
そう思います。憲法が縛る対象は国民ではなくて権力者なのだということを広げなければならないと思います。以前沖縄の読谷村(よみたんそん)に行った時に、公務員の憲法尊重擁護義務を規定した憲法99条が村長室に掲げられていることを知りびっくりしたことがあります。他の法律と異なり、憲法については権力者を縛るものとして制定されているというような、法律全体の構造についての知識が教師も含めて不十分なのだと思っています。
改憲の動きが進み、いま私が教えている生徒たちがやがて憲法「改正」の国民投票をすることになるかもしれません。したがって、中学生などに憲法を伝える意義はますます重要になると思っています。

―――中学校での憲法教育は日本社会全体に憲法とその理念を広める上で大変重要なことだと思います。今後も連携しつつ、それぞれの場で努力していきたいと思います。本日はありがとうございました。

◆小堀俊夫(こぼりとしお)さんのプロフィール

1952年生まれ。埼玉県三郷市立早稲田中学校教員。著書に『日本国憲法に出会う授業 〜 子どもたちはどう学んだか』(共著、かもがわ出版、2005年)、『わかってたのしい中学社会科歴史の授業』(共著、歴史教育者協議会編、大月書店、2002年)、『子どもとつくる近現代史(第1集)』(共著、安井俊夫編、日本書籍、1998年)など。

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<ご案内>

小堀俊夫さんは次の学習会でお話されます。(法学館憲法研究所事務局)

「憲法9条にノーベル平和賞を」の会学習交流会「平和憲法で地球がつつまれるとき」
日時 :2006年1月27日(金) 18:30〜20:30
会場 :東京・文京区民センター
参加費:無料
主催 :「憲法9条にノーベル平和賞を」の会
詳しくはこちら
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