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今週の一言

 

今後全国各地で国民保護計画による避難訓練実施へ
〜 戦争する国にしないための具体的検証

2005年12月19日


平和元さん(戦争非協力自治体づくり研究会代表・弁護士)


―――平さんが代表を務める戦争非協力自治体づくり研究会は国民保護計画で住民避難がどのように行われることになるかをシミュレーションされました。その趣旨からお話していただけますか。
(平さん)
武力攻撃事態法など有事法制が2003年に制定され、今後日本社会は戦時を想定して国の制度が作られていくことになりました。有事法制の制定の後、その制定に反対して積極的に発言してきた国立市の上原市長は、住民の命と財産を守るために今後自治体としてこの問題にどのように対処していくかを考えました。有事法制の制定を受け、2004年には国民保護法が国会で制定されることになりました。そこで上原市長は市民や学者、弁護士などに呼びかけ、国民保護法の施行が住民にどのような影響を及ぼすことになるのか、それに対して住民や自治体はどのように対抗していく必要があるのかを研究することになり研究会が発足することになりました。
国民保護法は国民を保護すると称して有事に国民をどう管理するかを定めるもので、有事の際に国民がどのように避難するかという計画などを各自治体に策定することを義務づけました。2005年度中に各都道府県で策定し、2006年度には各市町村で策定することになっています。今後各自治体で国民保護計画が策定され、日常的に有事の際の住民の避難訓練が行われることになります。しかし、実際に敵の攻撃があるとして、例えば東京では避難は不可能です。敵を想定した避難訓練は戦争する国作りのための体制作りでしかありません。そこで私たちは、国民保護計画がどのように策定され、どのように避難訓練などが実施されることになるのかを検証してみることにしたのです。また、そのことを通じて各自治体で国民保護計画の策定にあたって住民や自治体としてどのように対応していくべきかを提言していこうと考えたのです。

―――先日、平さんたちの研究会は、国立市を例にした「住民避難シミュレーション」報告会を開催されましたが、どのようなシミュレーションになったのでしょうか。
(平さん)
住民避難については2003年7月に鳥取県が図上訓練を実施したのですが、県東部の住民約2万6000人を県中部や兵庫県にバスで避難させるのに11日かかったという結果が出ました。東京の国立市のような都市部の避難がどうなるかをシミュレーションしてみました。
これまで都道府県レベルで国民保護計画を策定したのは、鳥取県と福井県だけです。実は、自治体として初めて11月27日に住民の実働訓練が福井で実施されることになりましたので、私たちもこの日に国立市におけるシミュレーションの報告会を開催することにしました。
シミュレーションを行うにあたって、私たちはまず、どのような事態を想定するかで迷いました。武力攻撃事態法では、武力攻撃事態として、(1)着上陸侵攻、(2)ゲリラ・特殊部隊による攻撃、(3)弾道ミサイル攻撃、(4)航空攻撃の4つが類型とされているのですが、国立市のような地域においてはどのような事態が現実味のある想定となるかについて悩まされました。とりあえず、弾道ミサイル攻撃を受けた想定をしましたが、実際にそのような事態が発生したときの混乱を具体的にシミュレートすることは極めて困難でした。私たちはとりあえず障害者や高齢者など避難弱者といわれる約2200人の住民を市内に避難させるだけでどのくらいの時間がかかるかをシミュレーションしたのですが、避難所準備、人員手配、車手配など約26時間かかる計算になりました。弾道ミサイル攻撃を受けると、間違いなく自衛隊の活動が始まり道路も封鎖されることになり、市民全体の効果的な避難計画を策定することはもはや困難だということが明らかになりました。また、そのような事態が生ずれば公共機関への統制が行われ、戦争遂行のために様々な人権が制約されるということも当然想定されることになりました。全市民を避難させること、ましてや市外へ避難させるなど不可能なことです。

―――これから全国の自治体で国民保護計画が策定され、有事を想定した避難訓練をするようになっていくと、住民は有事ということをより具体的に意識するようになっていくのでしょうね。
(平さん)
11月27日に福井で行われた実動避難訓練は、原子力発電所がテロリストに襲撃されたという想定で行われたのですが、要は雰囲気づくりです。仮に日本への武力侵攻などがあったとしても、テロや原発攻撃などが突発的に発生した時に国民保護計画のようなものは決して役にたたないのです。結局、有事を想定した避難訓練などを通して、「銃後」の体制づくりが目指されているのだと思います。訓練に協力的な人とそうでない人の選別も始まり、お互いを監視しあう社会になっていくことが懸念されます。

―――戦争の雰囲気づくりや「銃後」の体制づくりという狙いを貫徹させないために、研究会は自治体での国民保護計画の策定にあたって留意すべきことなどの提言もされていますよね。
(平さん)
自治体での国民保護計画の策定にあたっては、そのための協議会が設けられることになります。そこには市民の声を反映させたり、市民の権利を侵害させることのないように、メンバーに市民団体代表や弁護士などを加えさせることも重要です。実際にそうしている自治体もあります。また、国民保護計画は国民の生命と財産を守るために策定するわけですが、それは武力攻撃事態よりもむしろ自然災害に備えた計画の方が緊急の課題となりますので、この際そのような計画づくりの機会としていくことも重要だと思います。

―――国民保護計画の策定やそれにもとづく住民避難訓練の実施によって、国民は有事を具体的に意識していくようになり、それが戦力不保持の憲法を変えようという動きに結びついていく危険性が出てくると思いますから、平さんたちの研究会の提言は大変重要だと思います。
(平さん)
自民党が9条改悪を柱とする改憲案を発表しました。私は、憲法の平和主義を守るためには、日本が軍隊を持ち、戦争に参加していくこと、そしてそれに備えることによって、日本がどのような社会になっていくのかということを具体的に市民に示していくことが必要だと思っています。そのように考えた時、まだまだ国民保護計画が全国で策定されていこうとしていることやその問題点が市民に知らされていません。私たちの研究会もぜひ関心をお持ちの方々には関連資料などを提供していきたいと思います。

―――大変重要な実践と提言をされていることがあらためてよくわかりました。本日はありがとうございました。

◆平和元(たいら かずもと)さんのプロフィール

弁護士、戦争非協力自治体づくり研究会代表



 
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