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今週の一言

 

国民の生存権=憲法25条の理念を広げる

2005年12月12日


藤原尚久さん(全国福祉保育労働組合中央執行委員)




1998年からはじまった社会福祉基礎構造改革は、2005年、小泉自公内閣のもと、その総仕上げに向け一気に推し進められようとしています。
そのキーワードは「持続可能な制度改革」です。
しかし、介護保険法の改悪、障害者「自立」支援法がもたらしたものは、利用者の負担増と利用者・家族の将来不安です。「利用料が払えない」「これ以上家族に負担をさせられない」「病院代や薬代が重くのしかかる」・・・
いくら制度が持続してもそれを必要とする人々が経済的理由から利用できなくなくなる。
これが小泉構造改革の実体です。
たとえば介護保険ですが、2000年の制度発足にあたって、国は「利用しやすくて公平な支援システム」「1割負担が基本。低所得者の方に配慮」とし、さらに「要介護者とその家族の家計の過大な負担が軽減」されると大宣伝を行いました。
しかし、施行後6年目の現在介護保険はどうなっているでしょうか。保険料は2003年4月改定で、全国平均2911円から3251円(65歳以上の一号比保険者)へと約12%もアップ。利用料についても「1割負担」に加えて、特別養護老人ホーム等の入所施設では「ホテルコスト」という居住費と食費が今年10月から自己負担となり「家族にこれ以上(経済的)負担をかけられない」と施設から退去し、自宅に戻ることを考えざるを得ない利用者も現れています。
また、この9月に成立した障害者「自立」支援法は、介護保険同様に1割の利用者負担が課せられるとともに、精神障害者や難病患者、重度障害児の医療費負担がこれまでの5%負担から1割負担(所得が多い人は3割負担)となり、負担の重さに加え経済的な理由から病院にかかれない人々を生み出しかねません。
特に最近、養護学校等で医療的ケアを必要とする児童生徒が急増していることや、サラリーマン世代で急増する「こころの病」を抱える人々にとっては治療の継続が不可欠であり、経済的な負担を理由として通院を控えた場合には、それぞれのいのちに直結する場合も考えられます。
しかし、厚生労働省は「福祉はサービス。サービスは買うもの。だから利用者は自己負担があたりまえ」という論法を繰り返しています。これは、憲法25条に規定された国民の生存権を脅かしかねない考え方で、私たちは到底容認できません。
若者が安心して子どもを産み育てることが出来る環境、ハンディキャップを抱えていても社会参加と自己実現にむけてまい進できる環境、老後を安心して暮らせる環境、これらの実現こそが憲法25条に定められた「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 」であり、そのために社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上・増進に努める義務を国や自治体は負っています。
しかし福祉現場で起きていることは、介護報酬の相次ぐ引き下げや施設整備補助金の削減に見られるように、国や自治体の公的責任を後退させ、非営利原則の社会福祉法人の収入を減額し、経営者も先行き不安を抱えるという状況になってきています。将来の経営維持に向け、福祉現場で働く職員の非常勤化、パート化が推し進められ、職員が長く安定的に働き続けられず、それに伴い専門性の蓄積や運動の継続が出来ない状態も生まれています。

憲法を変えようとする人々は社会福祉制度の市場化・営利化を推し進めるために、憲法前文(案)のなかで「社会福祉の充実」を国民の責任にすり替えようともくろんでいます。
また、改憲勢力は自衛隊を名実ともに軍隊として認知し、日本を「戦争をできる国」へと導こうとしています。
さきの戦争では日本やアジアに多くの障害者や親のいない子どもたちを数多く生み出しました。本来は徴兵対象から除外されている障害者を法に反して戦地に送り、そのために障害が悪化したり戦死した事実も明らかになってきています。戦争と福祉は絶対に両立しません。

私たちは憲法改悪と社会保障・社会福祉の解体の流れに抗して、いまこそ、すべての国民が手を携えて憲法25条の「健康で文化的な生活」を私たちの手に取り戻すことが必要であると考え、そのために、社会福祉に関わる労働者、経営者、さらに利用者やその家族が手をつなぎ福祉の公的責任を再構築しようと運動をすすめてきました。
昨年11月には福祉関係者共同シンポジウムを開催し、全国から600人を超える参加者と122団体、224人の方からの賛同をいただきました。
今年はそれをさらにパワーアップさせ12月19日に日比谷公会堂で2000人規模の共同集会を予定しています。
実行委員会にはわたしたち労働組合(福祉保育労、日本医労連、自治労連)だけでなく、東京・大阪・愛知を中心とした経営者団体(社会福祉経営者同友会、愛知県民間社会福祉施設経営管理者会議、東京民間保育園経営研究懇話会)、に加え、障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会や全国保育団体連絡会など利用者や家族も含めた幅広い団体に参加いただいています。
ことしの集会は、自民党が憲法草案を発表するという情勢の下で、「憲法を守り、いのちとくらしを支える福祉を」をテーマに、午前中はザ・ニュースペーパーによる憲法問題を題材にしたコントと名古屋大学の森英樹先生の講演「どうなる憲法、どうする憲法」、午後からは「社会福祉基礎構造改革で福祉・働くものはどうなった」を共通テーマに実態告発と神戸大学二宮厚美先生による「公的福祉再構築の展望」を柱とし、さらに太鼓や踊りなど楽しめる企画も用意しています。
この集会にはどなたでも参加いただけます。「憲法と福祉を守ろう」の一点で賛同者も募っています。賛同はWeb上からもいただけます。是非、多くの方に参加していただきたいと考えています。

◆藤原尚久さんのプロフィール

全国福祉保育労働組合中央執行委員

12・18共同集会の詳細はこちら



 
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