法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

自民党改憲案「家族条項」の真意は?

2005年11月21日


キャンペーン発行リーフレット『えほん改憲くん』
本山央子さん(「STOP!憲法24条改悪キャンペーン」)

―――「STOP!憲法24条改悪キャンペーン」のとりくみが精力的に展開されていますが、その内容と趣旨についてお聞かせください。
(本山さん)
9条の問題だけが注目されていますが、憲法「改正」の問題はそれだけではありません。
昨年6月に自民党が憲法「改正」についての「論点整理(案)」を発表しました。そこには「婚姻・家族における両性平等の規定(現憲法24条)は、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきである。」と書かれていました。当時は参議院選挙の直前だったのですが、その時期に、よくもあからさまに女性差別的な主張をするものだとびっくりしました。それで、24条見直しの問題点を多くの人々に広めようと、多くの女性団体などと協力して「STOP!憲法24条改悪キャンペーン」を立ち上げました。昨年11月にはキックオフ集会を開催しましたが、多くの人たちに参加していただき、盛況でした。その後リーフレットを作成・配布したり、新憲法案についてコメントするなどの活動をしてきました。いま、全国各地で集会が開催されたり、24条見直し問題についての本も多く出版されるようになってきています。

―――自民党が今年の10月28日に発表した新憲法案では24条の文言はそのままになっていますが、「婚姻および家族に関する基本原則」というタイトルをつけることにしています。このことをどう評価していますか。
(本山さん)
一見、小さな変更ですが、「個人の尊厳と両性の平等」という24条の原則を骨抜きにする意図が透けて見えます。自民党は、女性たちの反発も意識して、最近は本音を隠しているようです。それだけに自民党の提言の字面だけに惑わされることなく、背景にある考え方や狙いをよく見極める必要があると思っています。

―――具体的にはどのように考えていますか。
(本山さん)

改憲くんプロフィール
自民党はいろいろな憲法「改正」の提言の中で、「家族を重視する」という耳障りのよい言葉を多用しています。しかしその意味を、よく吟味しなければなりません。なぜなら自民党は、個人の尊厳や平等よりも、家族が優先されるべきだと考えているからです。
自民党の中には、基本的人権の主張を「行き過ぎた個人主義」「利己主義」として否定する考えが強くあります。とくに、女性が結婚したり子どもを産まないのは、女性が戦後わがままになったからだと考えています。そして最近ではジェンダーフリー・バッシングを強め、女は女らしく、男は男らしくあるべき、という考え方を復権させようとしています。
しかし現実には、女性と男性との間には大きな不平等があります。多くの女性は男性よりも低い賃金で働きながら、子どもや高齢者の世話を押し付けられているのです。家庭内暴力に苦しんでいる女性も少なくありません。「家族の重要さ」を押し付けることはなんの解決にもなりません。また、結婚していない両親から生まれた子どもや、ゲイ・レズビアンなど性的マイノリティに対する差別も問題です。このような問題を解決するには、男らしさ・女らしさという偏見をとりのぞき、すべての個人の尊厳を基礎に考えなくてはなりません。
さらに、自民党は「家族は小さな公共、国家は大きな公共」として、家族を国の下部機関と見なしています。ですから、個人の尊厳よりも家族を重視するという考え方は、基本的人権を押さえつけ、個人を国に奉仕させることにつながります。加えて、男らしさ・女らしさの強調は、男性を国防へ、女性を家族の世話へと縛りつけることになるのではと懸念されます。

―――24条見直しも今日の憲法「改正」の重大な内容の一つだということですが、憲法それ自体についての本山さんのお考えもお聞かせください。
(本山さん)

改憲くんの理想の家庭
憲法とは、目の前にある社会問題の解決に向けて、私たちが集合的に行動するときに参照すべき基本理念だと思います。日本国憲法には、基本的人権や両性の平等が保障されると書いてあります。しかし現実には、女性や外国籍の人々、マイノリティに対する様々な差別や人権侵害があります。また、日本の政策によって、他国の人たちの人権も影響を受けています。憲法の解釈を国や裁判官に委ねてはなりません。それは現実から目をそむけ、憲法を支配の道具に変えてしまうことになります。私たち一人ひとりが、現実の問題について考え、行動するための基本理念として憲法があるのだと思います。

―――日本国憲法で最も重要な価値は「個人の尊厳」です。個人以外のところにある様々な価値を「個人の尊厳」という価値よりも優先させようという考え方が自民党の改憲案の中には数多く盛り込まれていますが、家族を重視するという言い方での自民党の主張はその典型的なものだと思います。
最後に、これまでのとりくみの手ごたえと今後の活動についてお聞かせください。
(本山さん)
これまでのとりくみを通して、憲法を守ろうと言っている人たちの中で、9条も重要だが24条も重要だという意識が少しずつ広がってきました。しかし、まだまだ24条の問題は男性には関係ない、女性の問題だという認識が少なくありません。また「家族は重要だ」という言い方に疑問を感じない人が多いのは、まだまだ家族の中の問題が話されにくいからかもしれません。いまなぜ自民党が家族のことを強調しているのか、その狙いを多くの人々に知らせ考えていかなければならないと思っています。

―――近く1周年記念シンポを開催されるのですね。今後とも連携させていただければと思います。よろしくお願いいたします。


◆本山央子さん(もとやま ひさこ)さんのプロフィール

「STOP!憲法24条改悪キャンペーン」運営メンバー。アジア女性資料センター運営委員。

 


 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]