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今週の一言

 

憲法9条を「外から」見るということ
〜アジアのNGO・法律家の会議から〜

2005年10月3日
笹本潤さん(弁護士)
自民党・民主党の改憲議論に一番欠けているもの
自民党の第1次改憲案が8月1日に出て、9月の総選挙では自民党が圧勝。憲法改正、中でも憲法9条の改定に対しての危機感が高まっています。ただ、自民党や民主党の9条の改憲案で決定的に欠けているのは、外国から見た視点であり、決定的な弱点だと思います。
自国の防衛や国際協調のために軍隊を持つことや、国連の決議があったときに海外に軍隊を出すとか、いずれも自国の立場からだけしか論じられていないのです。
世界に目を転じてみれば、世界の中で日本の憲法9条が変えた方がいいと考えているのは日本の改憲勢力とアメリカ政府くらいです。圧倒的多数の国と市民は憲法9条の改定に反対なのです。
このように改憲勢力が世界では圧倒的少数派であることを、日本国内にもっと伝えたい、そしてもっと世界中の人に憲法9条の存在を知らせたいというのが、この間の私の思いです。

アジアや世界から憲法9条はどのように見られているか

2005年2月にGPPAC(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)の東北アジア会議が開かれました。そこに参加した東北アジアのNGOの方が日本の憲法9条が改正されようとしている危機について以下のように述べました。
フィリピン平和活動家の方は、「憲法9条や非核化、米軍基地など、みなさまの問題は、あなたがただけの問題ではなく、私たちの問題でもあり、世界の問題でもあります。もし憲法9条が削除されたならば、何が起こるでしょう?」と発言しました。
ロシアの大学教授は、「もし憲法9条が変えられたら、その次は何が起きるでしょう? 軍隊は、侵略の象徴です。私はこの間、学生たちに対して、日本は非常によい平和憲法をもっていると話してきました。しかし、私は学生たちに次に何を話せばよいのでしょう?」と熱意をもって語っていました。
中国のNGOの方も「私はまた、日本国憲法9条についても強調したいと思います。これは、中国のみならず東北アジア全体にとって、大変重要な論点です。なぜなら、日本国憲法の平和主義が、東北アジアと同じく国際社会の平和にとっても、カギとなる要素だと認識されているからです。」と強調していました。
日本の憲法9条のことを知っている海外の方は、憲法9条の大切さを訴え、9条を守り通してくれと日本の市民に訴えています。私もこの会議に直接出ていましたが、直接彼らの言葉を聞いて感銘を受けました。
特に、GPPACに集まっている東北アジアのNGOメンバーは、武力によらない紛争解決方法として日本国憲法9条の考え方に表れている非武装・非軍事の方法が一番いいと考えています。ですから、東北アジアで起こっている、朝鮮半島の統一や北の核兵器の問題、そして中台の対立の問題など武力紛争の火種になりそうな紛争を非軍事的方法で解決する上で、日本の憲法9条を守り、発展させていくことを何よりも大切にしています。その意味では、9条はアジアの宝だと認識され始めています。

グローバル9条キャンペーン





このような外国からの声を届けようとして始まったのが、グローバル9条キャンペーンです。この企画はGPPAC JAPANが行ったものですが、8月15日に世界で一斉に日本の憲法9条を支持する意見広告を新聞に載せようというものでした。GPPACのつながりを生かして東北アジアのNGOに呼びかけ、意見広告を日本、韓国、台湾、香港、モンゴル、コスタリカ、フィリピンなど9カ国12紙に9条の意見広告を載せることができました。意見広告の文面はhttp://www.article-9.org/jp/koukou.htmlにありますのでご覧ください。
7月30日には9条の会の有明コロシアムの講演会会場付近で募金を集めました。その際にも、「海外からの視点はいい」などの声をかけてもらい励みになったとともに、これからの憲法9条の運動を作っていく際のはずせない視点だなと感じました。
 8月18日には韓国のソウルで日本の憲法9条改正に反対する集会も開かれました。今度は11月3日にも日韓同時集会を企画しています。韓国や台湾のNGOが日本の憲法9条についての集会を持つということは今までなかったのではないでしょうか。日本の国内外を問わずより広い範囲でこのような運動がわき起こってくるよう働きかけていきたいです。

アジア太平洋法律家会議(COLAP)

アジア・太平洋地域における平和や人権を話し合う場が、アジア太平洋法律家会議(COLAP)です。今回が第4回目で2005年9月2,3日に韓国のソウルで開かれました。参加者は約250人で、韓国と日本からの参加者が各100名ともっとも多く、その他アメリカ、インド、パキスタン、バングラデッシュ、フィリピン、ニュージーランドなどの国の法律家が参加しました。
 この会議では、平和の問題としては、東北アジアはいまだに冷戦構造が残っており、アメリカの米軍再編や日本の軍事大国化により、それらが一層加速されている。歴史認識の問題も対立を深める要因であると指摘されていました。
憲法9条に関しても、共同声明の中で取り上げられ、「日本国憲法9条に体現された平和主義の原理が、侵略戦争を再び起こさないように防ぐために、アジア太平洋の人民に対する日本人民の憲法上の保証であるので、われわれは、日本国憲法9条の改定に反対する。歴史の歪曲は、日本の戦争責任を正しく理解することを妨げるものであるので、やめなければならない。日本国憲法9条の原理は、この地域および世界全域における人民の希望となりうるものである。」と憲法9条の問題がアジアの法律家たちとの共通の認識になりつつあることをしめしています。

最後に
しかし、以上のような運動も改憲勢力の威力を考えるとまだまだだと思っています。世界的には圧倒的少数の勢力が、日本の国会では圧倒的多数を握っているのです。より以上に、アジアや世界の市民たちと交流・連帯し、「外から見た」憲法9条を伝えていかなければと思います。
 今年から2007年にかけては憲法9条を守る運動の山場だと思います。憲法9条を世界に広げて世界的にも大きい世論にして、憲法の運動に生かしていきたいと思っています。

◆笹本潤(ささもと じゅん)さんのプロフィール

弁護士(1996年登録)。中国戦後補償裁判などを取り組み、現在国際法律家協会、青年法律家協会、GPPAC JAPANなどに所属し、憲法9条を守る運動を中心に活動している。

 


 
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