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不戦の希い(ねがい) 憲法のこころ

2005年9月5日
須田稔さん(「憲法9条・メッセージ・プロジェクト」事務局長)
――須田さんは「憲法9条・メッセージ・プロジェクト」(K9MP)の活動を精力的にすすめられていますが、その内容と問題意識をお聞かせください。
(須田さん)昨年(2004年)6月10日に大江健三郎さんなど著名な9人が「9条の会」を立ち上げ、その呼びかけにこたえて、全国各地でいろいろ動きが始まっています。重要なことは、なぜいま憲法が大事なのか、なんで9条が問題になっているのか、なんでいまこんな政治になってるのか、そういうことを各地で多くの人たちが語り合うことだと思うんです。各地域で100人、50人でもいい、30人でもいい、そういう集まりが無数に開かれていくことが大事ですね。そのためにいろいろな人たちの9条への思いを、絵や詩なども含めた様々な形のメッセージを寄せてもらい発信していくとりくみを始めたということです。
この7月にメッセージ集『不戦の希い(ねがい) 憲法のこころ』を発行しました。これは「現代の万葉集 巻の1」です。「巻の2」「巻の3」の発行も準備しています。
イラク戦争に反対して世界各地で何百万人、何十万人のデモや集会が行われましたが、日本の運動は小さい。僕は日本人が「平和ボケ」していると言って一部の人が揶揄するのは我慢ならないんですが、いま、やっぱり、日本社会ってのは、たいへんですよ。だって、自殺する人が1年で3万4千人、連続3年ほど3万人を超えている。しかも、20代も30代、40代、50代も。それから、携帯電話やインターネットで連絡しあって、みんなで一緒に自殺する。それから過労死がある。これは何なんだろう、と思います。
そしてまた、かつて日本は中国などを侵略したわけですが、その被害者の裁判で、日本の裁判所は賠償を認めない。法律っていうのは本来人間のためにあるんじゃないか、裁判所っていうのはいったい何のためにあるんだと思わざるを得ません。小泉首相や石原・東京都知事などはいったい日本の戦争責任をどう考えているんだろう、そして、そのような人たちを首相や知事にしている我々日本人の知性はどこへいったんだ、日本人の過去の戦争への記憶はもう風化してしまっているのか、という思いもあります。
私自身は、いまの社会状況を変えるにはマスコミの役割が大きいと考え、頻繁に新聞記事に対する投稿をしています。おかしな記事に対しては批判する。おかしな記事が大変多く、増えています。同時に、適切な記事を書いた記者を激励する手紙も頻繁に送っています。一人ひとりが意見を持ち発信していくことが重要だと思うんですね。

――K9MPは昨年来、リーフレットや本をつくって普及されておられますが、これからもいろいろな人たちから、文章なり、絵なり、いろいろなかたちでメッセージを集めて、それを発信し、ひろめていくというお考えでしょうか。
(須田さん)そう。とくに私は、戦争を体験した人たち、とりわけ広島や長崎で被爆した人たちの今日の時代状況に対する思いというのは、本当に重いものがあります。
メッセージは若い人たち、戦争を体験していない、戦争を知らない世代の人たちのメッセージも欲しいですね。しかし、そのパーセンテージは低い。やっぱり若い人たちの場合、観念が先にきますよね。本当に目の底に焼き付けられたような、そういう姿というのを見ていないんだから、しょうがないといえばしょうがないんですが、若い人たちのメッセージをもっともっと期待したい、僕らは。

――被爆された方とか、戦争経験がおありの方々はK9MPの問題提起にかなり応えてくれているということでしょうか。
(須田さん)そういう状況ですね。そこで私が思っているのは、そういう方々のメッセージが若い世代に語り継がれ、語り継がれた若い世代の人たちがそれに応えてどういう思いを豊かに深めてるかという、その問題なんですね。
私は、憲法の問題というのは、大人だけでなく、いまの小学校の3、4年生以上の人たちに訴えていかないと、と思うんですよ。だって、いちばんまともに戦場の第一線に立たされるのは、これからの若い人たちだから。いまの小学校の3年生以上だったら、人間がまっすぐに生きるということはどういうことだろうか、人間が本当に人間らしく生きるということはどういうことなんだろうか、幸せって何だろうかということを、ちょっと考え始めるんじゃないかな。だからそういう人たちに訴えていかなければと思うんですよね。

――戦争のことでは須田さんご自身にも様々な体験があるのではないでしょうか。
(須田さん)僕も、実はつらい経験を持っているんです。僕の6つ上の兄がいまして、1925年生まれ。その頃がちょうど最後の召集の年代です。彼が20歳になった1945年。彼は5月生まれなので、5月に召集令状が来て、それで出征していきました。「祝出征」「祈武運長久」というのぼりが立ち、家の前で近所の人たちみんなが紙でつくった日の丸の小旗を振って歓送の集会をやって駅へ見送った。中学2年生だった僕は軍国少年ですから、みんなと一緒に小旗を振って、「僕も兄さんのあとに続くんだ」という思いでいたわけですよ。僕が兄の出征の見送りの後に家に帰ったら母が一人、家の隅っこにいました。僕の母は関節リュウマチを患って、自由には歩けなかったんです。だから家に残っていたんですね。実は、そのとき母はむせび泣いていました。僕は「おかあちゃん、そんなん非国民や。泣いたらあかん。情けないな、兄ちゃんは英雄として出ていったんや。天皇陛下のために戦さに出ていったんや。誇りに思わなきゃあかん」と言いたかった。そういう気持ちで母を見ていました。言葉には出さなかったんですが、僕は母をなじる目つきをしていたと思います。僕はそういう人間に育っていたんですよ。そのことが本当に情けない。そこまで僕は、もう精神を変えられていたんですね。飼育されてたんですね。この記憶を鮮明に覚えています。

――須田さんご自身の体験もぜひ後世に残し、なぜそのような時代、社会になってしまったのか、そのような社会にしないためにはどうすればよいのかを、多くの人たちと考えていきたいと思います。
ところで、平和や憲法に対するいろいろな人たちの思いを集めるとりくみは大変で、ご苦労なことだと思いますが、本当にいろいろな方々からメッセージが集まりましたね。
(須田さん)そうですね。昨年の「9条の会」の呼びかけに応えて、われわれに何ができるだろうか、何かユニークなことをしたい、文化的な方法でやってみたいと、いろいろな人と相談し、かなり忙しい活動になりましたが、多くの人たちが私たちの提起に応えて下さいました。瀬戸内寂聴さん、根岸季衣さん、岸恵子さん、増田れい子さん、信楽香仁さん、加藤周一さん、辻井喬さん・・・その他多くの市民の方々のメッセージを『不戦の希い(ねがい) 憲法のこころ 〜 現代の万葉集 巻の1 』には収録することができました。
去年9月に出したリーフレット「緊急の呼びかけ」、12月に出したブックレット『腹の底から憲法でいこう』、それにこの『万葉集』をあちこちの集会へ行って紹介して、買っていただいています。これ読んでいただいたら、必ず心に訴えるものがあるはずですから、とご案内してきました。そんな活動をやっています。

――本当に精力的な活動に頭が下がります。ぜひ今後ともご一緒に憲法の理念を広げる活動をすすめていきたいと思います。


◆須田稔(すだ みのる)さんのプロフィール

立命館大学名誉教授。中心研究分野はアフリカ系アメリカ文学。著書として『アフリカ系アメリカ人の思想と文学』(大阪教育図書)『響きあう市民文化運動』(近代文芸社)がある。
大学での研究・教育のかたわら、様々な社会活動を経て、現在、「憲法9条・メッセージ・プロジェクト(K9MP)」事務局長。国際人権活動日本委員会代表委員、非核の政府を求める京都の会常任世話人など多くの社会活動に携わっておられる。イラク戦争後の活動の中で発信してきたアピール詩・論評などをおさめた『時代の狂気にことばを紡ぐ』(文理閣)を2005年6月に出版。



 
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