法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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憲法前文の理念で「人間の安全保障」を追求する

2005年8月22日
前田哲男さん(軍事ジャーナリスト)
「映画 日本国憲法」が全国で劇場公開されています。現在劇場公開記念企画・連続トークショー「憲法の話をしよう。私がおもう憲法9条のこと」(主催:シグロ、後援:マガジン9条)が東京・渋谷のユーロスペースにて行われています。以下はこのトークショーでの前田哲男さんのトークです。

憲法9条の下でいかなる安全保障政策が可能か、ということが私の変わらぬ研究テーマです。決して再軍備する必要はない、自衛隊を増強する必要もない、むしろ自衛隊を減らし、なくしていっても日本が危険でない状態をつくることはできるんだということを、具体的に、政策のかたちで、民主党風に言えばマニフェストとして示していきたいと思っています。
私は日本国憲法の第9条より前文のほうが好きです。「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」というこのセンテンツは実に素晴らしいと思います。これに続いて「われらは・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」と続くわけです。このくだりは見事な意思表示になっています。
1990年代以降に「人間の安全保障」という言葉が出てきました。緒方貞子さんが言い、小泉首相も時々この言葉を使うのですが、「人間の安全保障」=ヒューマン・セキュリティという概念は、実は1947年に日本国憲法の冒頭に書かれているんです。「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と書かれています。われらは日本の国民だけが恐怖と欠乏から免れるのではなく、全世界の国民、人々が恐怖と欠乏から免れるべきだとしているんです。その理想・理念と私たちの安全保障を結び付けているんです。1947年に私たちはそういう道を選択したんです。
日本国憲法の前文での政府による戦争の禁止と第9条の戦争の禁止はワンセットとなって日本国憲法の平和と安全保障の理念・規範を構成しているのだと思います。第9条は○○しない、すべからず、という禁止事項ですから、その規定自体は必要ですが、それよりも前文の記述は格調が高く、圧倒的に豊かな内容になっていて、その前文を具体化したのが9条であるわけです。だからその9条の下で私たちが安全保障を達成できるのです。これが私の主張なんです。
私たちには自衛隊を、少しづつでも、時間がかかっても小さくしていく仕事が待ち受けています。しかし、それはやりがいのあることだし、日本国憲法が要請した、やらねばならないことだろうと思います。私たちは日本国憲法がいまおかれている境遇から発する痛切な悲鳴のようなものを受け止めなければならないと思います。私は今の日本国憲法の状態がかわいそうでならないんです。日本国憲法は変えられずになお存在している事実のほかにはほとんど自己表現できていない状態だと思うんです。憲法が変えられないから日本は公然と海外に派兵できない、集団的自衛権を行使できない、だから憲法はいいんだと、憲法を変えさせないために頑張ろうという意見もあるかもしれません。しかし私はそれだけでは不満です。この憲法が持っている美質・積極性・歴史性・世界性をふまえ、この憲法の理念の実現をぎりぎりと追求していくことが必要なんだと思っています。

◆前田哲男(まえだてつお)さんのプロフィール

1938年生まれ。東京国際大学教授。1974年、ジャーナリストとしてマーシャル諸島でビキニ環礁周辺住民の核実験による被爆を取材。アメリカ軍事戦略の批判的論客家として活躍。『非核太平洋 被爆太平洋:新編 棄民の群島』『戦略爆撃の思想』『国会審議から防衛論を読み解く』など編著書多数。


 
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