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今週の一言

 

アジアの人々の現状をリアルに学ぶ

2005年6月27日
郡山総一郎さん(フォトジャーナリスト)
<写真はすべて郡山さんが撮影>

―――郡山さんはイラクで人質になった方として知られ、その時のことを聞きたいという人が多いのですが・・・。
(郡山さん)
私としては、むしろいま諸外国がどうなっているのかについて、私が実際に見てきていることをお伝えしたほうがより積極的だと思っているんです。もちろん、その時のことはご質問があればお答えしますが・・・。

―――それでは、そうしていただけますか。郡山さんは最近カンボジアをよく取材されているようですが・・・。
(郡山さん)

カンボジアのゴミ置き場(1)

カンボジアのゴミ置き場(2)
私はよく中東に行っていたんですが、イスラム圏のことを日本人はなかなか想像しずらいところがあります。その点、カンボジアという国には多くの日本人が観光で訪れている。日本人にはカンボジアの本当の姿はあまり知らされていないんですが、実際に行った人にお伝えすることによってより身近に感じてもらえます。そうすることによって世界と日本の問題点を多くの人に伝えていきたいと思うんです。
カンボジアという国は貧しい国です。かつてのインドシナ戦争の名残で地雷があちこちに埋まっており、農業国なのに農民たちは安心して耕作ができません。多くの村の耕地は地雷に侵されていて、たびたび人が地雷を踏んで大怪我をしています。人々の貧しさは麻薬や人身売買の横行につながっています。幼児売春もあります。
カンボジアに対しては日本政府もODA(政府開発援助)を拠出しているんですが、そのお金は一部の権力者を潤しても一般市民の生活改善にはつながっていません。日本政府は何でも金で解決しようとしますが、金を払った後はそれがどう使われようとほとんど関心を持っていません。
カンボジアでのフンセン大統領の政治は独裁的です。その政治を批判すると命が危ないと言われます。野党の幹部が殺されることもありました。このようなことを考えた時、カンボジアに対して日本はODAを拠出しているだけではすまされないと思うんです。
それと、カンボジアの観光客の多くは日本人です。幼児売春をしているのは日本人がほとんどです。日本人はいままたカンボジアに対する加害者になっていると言えるんです。


カンボジアのゴミ置き場の親子

地雷による犠牲 at カンボジア

―――ありがとうございます。アジアの人々と日本人の関係を問い直す必要があるように思いました。他の国の状況もお聞かせください。
(郡山さん)
イラク戦争が始まったので日本人の多くは忘れてしまっているんですが、イラクの前にアメリカが攻撃したアフガニスタンでは、実はまだ空爆が続いているんです。いまなお学校が爆撃され子どもが死んでいるということを日本人に知ってもらいたいです。ビン・ラディンを捕まえるということはアメリカがアフガニスタンを攻撃した口実にすぎず、実際にはカスピ海の天然ガスの油田をおさえたいということだったんです。アフガニスタンの一般市民の生活はいまなお深刻だということも伝えていきたいと思っています。


地雷による犠牲 at イラク

タイの子どもたち

―――それでは、アジアの人々と接しながら日本社会について感じ、考えていることもお聞かせください。
(郡山さん)
カンボジアでも言論の自由への抑圧が凄まじいんですが、実は日本も同じ状況になってきていると感じます。憲法9条改悪反対を唱える講演会は政治的であるという理由である市長が市の施設の使用を不許可にしました。チラシのポスティングでも逮捕される事態となっています。言論の自由はもはや保障されずファシズムが進行しているように思います。もはや日本に自由はない、あるのは物を消費する自由くらいです。
私はイラクで人質になり、解放された後、多くの方々から「お上に逆らうとは何事か」と言われました。そのとき私は、政治は国民あってのものなのに、今はその逆で「お上」あっての国民という状況になっていると思いました。私はなんとかそれを本来の姿に取り戻したいと思っています。

―――郡山さんは写真を通して世の中に働きかけているのですが、その思いをお聞かせください。
(郡山さん)
私はたびたびアジアや中東に行き、そこでいろいろなことを知りました。知った以上、その現場のことを正確に伝えるのは私の責任だと思っています。また、私は知ったことがその後どうなっているのかを知りたいし、それを伝えたいと思うんです。
いま日本人の多くが社会や政治に対して無関心でひとまかせの姿勢になっているように思います。私はそのような人たちに対して諸外国の人びとがどのような状況に置かれているのか、それに日本と日本人がどう関わっているのか、などについて写真などでリアルに伝えていきたいと思っているんです。戦争で人が死んでいったり、殺しあったりした現場を伝え、実はそれは日本が戦費を支出した結果でもあるということを理解していただけるようにしたいんです。
ジャーナリストは常に弱い立場の人々の立場に立って報道しなければいけないと思います。強い人たちや権力者の声はよく聞こえてくるんですが、弱者の声は届きにくい。弱い立場の人たちのなかなか見えてこない実際の姿、なかなか聞こえてこない声を伝えるのがジャーナリズムには重要なんだと思っています。

―――最後に郡山さんの憲法「改正」問題についてのお考えをお聞かせください。
(郡山さん)
いま憲法9条が日本社会で機能しているのかどうか、ギリギリの状態だと思います。日本とアジア・世界の関係を考えると、憲法9条はその最後の砦のように思います。9条はアジアと世界に広げるべきものだと思います。
私は次の世代となる子どもたちに対して暮らしやすい社会を残していくことは大人の甲斐性だと思います。9条を変えてしまったりしたら、子どもたちに対して切腹しても償いきれない禍根を残してしまうことになります。
幸い9条を変えようとしたり、自由を抑圧したりする社会の動きの問題点に気づく人が増えてきています。写真を撮っていろいろな人たちに見てもらってもあまり関心を持ってもらえず、へこんでしまうこともありますが、私もがんばって発言・行動していこうと思います。

◆郡山総一郎(こおりやまそういちろう)さんのプロフィール

フォトジャーナリスト。2001年、「イスラエルの現実」でよみうり写真大賞奨励賞を受賞。2,004年4月、イラク取材中に拘束され9日後に解放される。著書に『未来って何ですか ぼくがいちばん撮りたかったもの』(新日本出版社)、『人質 イラク人質事件の虚と実』(共著、ポプラ社)。


 
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