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今週の一言

 

憲法の刑事手続きを守り、無実の人は無罪に!

2005年6月20日
桜井昌司さん(布川事件再審請求人)

―――1967年、茨城県利根町布川(ふかわ)で起きた強盗殺人事件の犯人として桜井さんと杉山卓夫さんは別件逮捕され、起訴されました。裁判でははじめから無実を主張しましたが、捜査段階での「やった」という「自白」を唯一の証拠として無期懲役が確定。再審請求をするも第一次請求は棄却。仮釈放されて、2001年に第二次再審請求をおこない、近く決定が出されると聞いています。
桜井さん・杉山さんはずっと無実を主張しているのですが、やってないという人が「やった」と言ってしまった。普通の人は疑問を感じると思うのですが、説明していただけますか?
(桜井さん)
当時20歳だった私は同級生のズボンを盗んで逮捕・勾留されたんです。私は反省していたんですが、取調べの中で急に布川の強盗殺人事件の時のアリバイを言うように迫られたんです。だいぶ前のことだったのでよく覚えていなかったんですが、警察から、私は事件があった日は布川にいたはずだと執拗に言われたんです。私は警察が嘘をつくなんて考えられませんでした。そこへ、「目撃者がいる」とか「早く自白しろ、認めないと大変なことになる」、「下手につっぱねてると死刑だってあるよ」と追及される。朝の9時から夜中12時くらいまでそれが毎日毎日続くと、とにかくその取調べから逃れたいという気持ちになり、「やりました」と言っておけば逃れられる、実際にはやっていないのだから裁判ではわかってもらえる、ということになってしまったんです。

―――これまで桜井さん・杉山さんの無実の訴えは裁判所に認められなかったのですが、今回の第二次再審請求はどうなりそうですか。
(桜井さん)
今回の請求の結果、事件当時34歳の女性の証言者がいたことがはじめて明らかになりました。この方は事件当時被害者宅に私でも杉山さんでもない別の人間がいたことを名前をあげて証言していたんです。その人が真犯人であるかどうかはわかりませんが、そのような証言があったことがはじめてわかったんです。その人の証言を採用すると事件があったとされる現場に私がその時間に到着することができないことが証明されることになるんです。だから、警察や検察はその証言のことをずっと隠していたんです。
今回の再審請求でようやくいろいろな証拠が明らかになっています。その証拠の中で私たちの無実の主張の不利になるものはありません。したがって、裁判官に常識があれば必ず再審になると思います。

―――「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。強制、拷問若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」(憲法38条)。この38条をはじめとして、憲法は31条以下に様々な刑事手続きの規定を設け、被疑者・被告人の人権も侵してはならないことになっています。桜井さんに対する取調べは憲法の規定に反していたわけですね。
(桜井さん)
警察の取調べにおいては憲法の規定は全く無視されています。法律を守るべき人たちが守っていません。ひどいものです。警察では被疑者に対しては有罪の証拠があろうとなかろうと100%犯人だと信じて取調べをすることになっていると聞きました。たとえ被疑者が容疑を否認してもそれをいっさい信じてはならないそうです。まずはアリバイを示せと迫る。アリバイを証明できないとそれは犯人である証拠だと言って攻め立てるんです。
警察は絶対に自分たちの捜査を反省しません。無罪判決が出ても自分たちは適正に捜査したと言い、遺憾だと表明して済ませてしまいます。決して間違ったとは言いません。
したがって、裁判所に毅然としてもらう必要があります。まずは憲法に則り、刑事事件は物証・証拠によって正しく裁いてもらう必要があります。「自白は証拠の王様」などと言われるいまの裁判は憲法に違反しています。警察での自白の強要が冤罪を生む最大の問題です。

―――憲法の理念が踏みにじられている典型的な例として、捜査と司法の抜本的な改革を求めていく必要があるように思います。
ところで、桜井さんは獄中でいろいろな詩をつくっていますが、その中に「祝日食」というものがあります。

『 祝 日 食 』
4月29日
天皇の祝日だったとき
刑務所ではちらし寿司が出された
5月3日
憲法記念日には
毎年、りんごが一個出される

祝日の特別食は
ささやかな愉しみだが
なぜ、ちらし寿司と果物の差なのか
どういう感覚の差なのか
何時も食べながら
民主主義国家
法治国家といわれる正体を考えていた

でも
4月29日が”みどりの日”に変わって
今年は夏みかんになった
ちらし寿司は憲法記念日に移った
天皇が死んで
これからは憲法がまっとうに扱われる
そんな変化ではないのかもしれないが
私は
今年は満足して
祝日食を食べた。
( 1989. 5 )

その詩には桜井さんの憲法への思いが込められているように思いますが、憲法はどこで勉強されたのですか。
(桜井さん)
刑務所に入ってから六法全書で調べました。強盗殺人の犯人とされたので、そもそも強盗殺人とは何か、ということなどを調べてみたいと考え、そんな中で憲法についても勉強してみたんです。憲法は国民主権を謳っているのに、第一章が天皇のことになっているのはおかしいと思ったりしました。

―――ただ、全体として日本国憲法の内容はよいと思ったのですよね。桜井さんは憲法の理念をひろげようというアピールなどにも名を連ねていらっしゃいますが。
(桜井さん)
そうです。全体としてはいい憲法と思っています。ところが社会の様々な現実が憲法に反している。そして多くの国会議員などが、憲法が現実に合っていないからという理由で憲法を変えようとしています。私は、憲法は理想をかかげ、現実をできるだけそれに近づけるように進めていくのが人間社会なんだと思います。私はいまの改憲の動きはまったくおかしいと思います。
私は憲法9条の平和主義と、そして「個人の尊厳と両性の本質的平等」を謳った24条が大事だと思っています。性差で差別するようなことはあってはならないと思います。私は人間はすべて平等であるべきだと思います。ハンディキャップを持っているような人の人権も保障され、一人ひとりが大事にされる社会にしなければならないと思います。

―――無実の人が誤った捜査、裁判によって犯人とされ、重罰を課せられる、人間としての自由と尊厳を奪われ、時として命さえも絶たれてしまうことがあります。人生においても社会においても、これほどの悲劇はないと思います。桜井さんと杉山さんには一刻も早く無実を勝ち取っていただきたいと思います。桜井さんがご自分のことと同時に、憲法の理念を社会に広げる努力をされておられることに敬意を表しつつ、ともに頑張っていきたいと思います。

◆桜井昌司(さくらいしょうじ)さんのプロフィール

布川事件の犯人として杉山卓夫さんとともに裁判で無期懲役となる(1996年に仮釈放となる)。一貫して無実を主張し、現在第二次再審請求中。布川事件と桜井さん・杉山さんの主張については「布川事件を守る会」で詳しく紹介されている。


 
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