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非暴力平和主義を広げる韓日市民の交流を

2005年6月13日
李京柱さん(仁荷大学教授:憲法学)

―――李さんは日本の大学で日本国憲法などを研究して学位をとられましたが、李さんは日本国憲法とその「改正」問題についてどう考えておられますか。
(李京柱さん)
日本国憲法の前文や9条が「改正」され、その非暴力平和主義の理念が後退すると、アジアと世界の軍縮と平和の実現への道が遠ざかることになるのではないかと危惧します。
日本国憲法9条があったから日本はこれまで戦争に参加してこなかったわけですし、それがアジアと世界の軍縮と平和に一定の影響を及ぼしてきたのです。韓国の憲法も侵略戦争を否定しています。多くの国の憲法も同様です。ただ、日本とドイツは第二次世界大戦後、侵略戦争の余地をなくすために武力さえ放棄する憲法を制定しました。日本の場合、その憲法が60年近くまったく変わらず、いまなお日本は軍隊を持たず、戦争には参加しないという建前になっています。ですから、非暴力平和主義の理念に反すると思われる政策がとられても、なお非暴力平和主義それ自体は否定されなかったのです。

―――李さんは日本国憲法の非暴力平和主義の理念を韓国の人々に伝える努力をされていますが、韓国の人々は日本国憲法についてどのように考えているのでしょうか。
(李京柱さん)
韓国の市民の多くは、日本の軍事的な潜在能力と軍事大国化を懸念し、小泉首相の靖国神社参拝についても歴史とアジアに対して謙虚でないと批判的に見ています。日本における憲法「改正」もこうした動きと無関係ではないと感じています。
しかし、韓国の市民は日本における憲法「改正」問題についてはあまり語りません。それは他国の問題であるということと、日本国憲法の非暴力平和主義の立場はもはや形骸化していると思っているからです。日本には自衛隊があり、それが海外にも派遣される事態になっていることを知っているのです。

―――そうした状況の中で李さんは韓国の市民に日本の憲法「改正」問題をどのように伝えようとされているのでしょうか。
(李京柱さん)
私は韓国の市民に対して、日本における憲法「改正」の焦点は9条の非暴力平和主義の見直しであるということを理解してもらう必要があると考えています。そして、日本国憲法の非暴力平和主義の規定が戦後どのような役割を果たしてきたのか、また今後果たし得るのかについての正確な情報をお伝えする必要があると思っています。

―――韓国は北朝鮮との関係もあり、非暴力平和主義についてイメージしづらいところもあるように思うのですが、いかがですか。
(李京柱さん)
韓国では、軍縮・平和の主張は反米あるいは親北朝鮮の考え方だとみなされる傾向があります。平和を主張する人がそれは利敵行為であるとして処罰されることもありました。韓国には武力をなくすことは難しいという雰囲気があるのです。それは日本とはだいぶ違うところだと思います。
しかしながら、最近は多くの市民と団体が平和を主張するようになってきています。「平和ネットワーク」や参与連帯の「平和軍縮センター」などが活発に活動をするようになってきています。韓国の憲法も侵略戦争を否認していますので、それを根拠に様々な主張や活動が行われるようになっているのです。
いま重要なことは、日本においては憲法の非暴力平和主義の理念を維持し、韓国においては少なくとも不正義な侵略戦争はしないようにしていくことだと思います。東アジアから軍縮・平和の提言をしていくGPPAC(Global Partnership for the Prevention of Armed Conflict(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)=2001年、国連のアナン事務総長の紛争予防に関するNGO国際会議の開催の呼びかけに応えて発足したプロジェクト)のとりくみのように韓日の市民の交流が求められているのです。私はこのような観点から日本国憲法の非暴力平和主義の規定が果たしてきた役割を韓国の市民に伝えていきたいと思っています。

―――当研究所は日本国憲法の非暴力平和主義の内容・意義の韓国語での発信(http://www.jicl.jp/korea/index.html)をより強化していきたいと思います。今後とも連携して活動をすすめていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

◆李京柱(リ・キョンジュ)さんのプロフィール

韓国生まれ。一橋大学大学院法学研究科で日本国憲法などの研究をして学位を取得、慶北大学を経て、現在仁荷大学教授(憲法)。
韓国「平和ネットワーク」諮問委員。
最近の日本語論文として、「韓国における国家緊急権と有事法」(日本評論社『法律時報』臨時増刊『憲法と有事法制』(2002年12月号)、「東北アジアから見た憲法第九条の役割――韓国の平和運動を中心に」(日本評論社『法律時報』2004年6月号)など)。


 
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