法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

『9をまく』

2005年4月25日
藤岡亜美さん(左)・渡辺文さん(右)(9LOVE=クラブ)
聞き手:事務局
 藤岡さん・渡辺さんは 『9をまく』という興味深い本をつくられましたが、どのような動機でつくられたのか、どんな内容なのか、お聞かせいただきたいと思います。
(藤岡さん)

「9をまく」 大月書店 刊
2003年暮れ、自衛隊のイラクへの派兵が具体的に検討されていた時期、私はニュースで自衛隊員がインタビューを受けているところを見て、日本人が戦場に行ってついに殺し合いに参加することになるんだということに、ショックを受けました。小中学生の頃に学校の先生が憲法9条を誇らしげに話していたことをよく覚えていてます。もちろん、戦後50年日本は核の傘の下にいるわけですし、私たちの経済活動は、戦争や対自然戦争に関与してきた。でもそれでもなんとか守ってきた9条が無視されて、日本人が直接戦争に関わるようになるのが、あたりまえのように報じられている。そのことに、頭ではなく体で怖いという感覚を持ったんです。、みんなの意見が聞きたくてカフェや飲み会で話をしているうちに、また自分たちもこの事態に対して何か表現してみようということになった。
最初は「背番号9」のオーガニックコットンTシャツを作りました。態度としての9条の象徴です。9条から条をとってしまうと、まわりの人たちも「9」をきっかけにして、それぞれの暮らしや立場から、9条について考えたことを、自分たちの言葉や表現で表しはじめました。メーリングリストでフランス語やロシア語の9条があつまってきて、天然酵母のパン屋さんが9の形のパンを作ったり、九種類の雑穀をごはんにまぜて食べるのが流行り、誰かに九蔵というとてもピースフルなおじいさんの思い出話をしたりというように。まるでそれは9という種を蒔いたら、それぞれの土地の雨にあたって、いろんな芽が出てくるようでした。自分は「9条」という態度をとりたい。そのための方法をまわりの人と考えたいと思っている人はたくさんいたんだけど、それをまっすぐに表現しにくい要因があったんだと思います。、そのようななかで憲法について発言しているダグラス・ラミスさんや、鶴見俊輔さんの話を、みんなで聞きにいったりするようになりました。でも、学ぶというよりは、一年間いろいろと「9」で遊んでみて、これを本にしようということになったんです。
(渡辺さん)
私は藤岡さんたち9LOVEがつくった「背番号9」のTシャツを友人が着ていて、それが9条だと知って本当に驚きました。それは色褪せた9条ではなく、ハっとするほどかっこいい9条だったからです。早速サイトで注文し、担当だった藤岡さんとやりとりするうちに、この本の制作を一緒にさせていただくことになりました。私たちが普段、ワクワクして通うような洋服屋さんや雑貨屋さんに置く本を作ろうと盛り上がりました。
(藤岡さん)
『9をまく』は「べつに9条なんて自分とは関係ない」「関係あるかもしれないけど、あまり考えたいと思わない」と思っている人たちに読んでいただきたいです。9条それ自体には関心を持っていない人のほうが、社会には多いと思うんです。でもみんな好きなことや「こういう風に生きたい」という思いは、永田町の人たち以上に強く持っている。正直言って憲法の本で読んでみたいと思えるような本はあまりありませんでした。この本は多くの人に手にしていただけるようにしたいと考えました。そのためには本のデザインがすごく重要なので素敵なデザイナーとできないんであれば、作る意味がないと最初から思っていました。タイミングよく、デザイナーの渡辺さんと出会い、斬新なデザインをお願いしてつくりました。
(渡辺さん)
憲法のことはわからなくても、みんな「戦争はいや」。私の友人たちのほとんどは、具体的な行動はしていないけれど、平和の大切さを知っています。そういう人たちにこの本のことを話したら、みんなすごく興味を持ってくれて、予想以上の反響に驚いています。

 いよいよ刊行ですが、読者のみなさんには何を伝えたいですか。
(藤岡さん)
多くの人たちに自分のスタイルで9条について考えてもらいたいし、自分にとっての“9”を表現してもらいたい、この本をそのきっかけにしてもらいたいと思います。それで本の最後には「what is your 9 ?」というページをつくって、あなたの“9”のリストづくりを提案したんです。自分の言葉、考えを直筆で記し表現していくことが、力になると思うんです。

 9条への思いはよくわかりました。憲法全体についてのお考えもお聞かせください。
(藤岡さん)
憲法は、「どういう風に生きたいか」に基づいてつくるものだと思います。国家と、他の国の人々と、自然と、どう関わって暮らしていくかをきめるもの。国会議員の人たちは憲法について粗探しをしたい人が多い感じですが、憲法のいいところも知るようにして欲しい気がします。それには、パンや雑貨などと同じで、つくった人たちの思いなどにも注目して欲しいと思います。
(渡辺さん)
私は憲法制定に関わったベアテ・シロタ・ゴードンさんってすごいと思います。憲法では人権が保障される者として「国民」と訳されていますが、ベアテさんたちがつくった元の英文では「All natural persons」となっていたと聞きました。日本国民だけではなく全ての人々の人権が保障されるということだと思います。「All natural persons」ってフレーズ、なんかグッときます。ベアテさんがその議論をしていたのは22歳のときだったようです。22歳の彼女だからこその瑞々しさを、大事に受け取りたいです。小さな欲ではなく、地球に生きる同じ人間としての視点を忘れないようにしたいです。
(藤岡さん)

右が藤岡さん、左が渡辺さん
ダグラス・ラミスさんから、「憲法は人々の権利を守るために政府の権利を制限するもの」だとお聞きしたことも印象に残っています。
2億人もの人が武装した国家に殺されて、取り返しのつかない環境破壊がされた20世紀。9条はそういう時代のなかから、いつか一人ひとりの態度になるように蒔かれた種だと思います。いま、鶴見俊輔さんなど「9条の会」が重要な語りかけをしていますが、長老たちが身ぶりとして私たちに伝えようとしていることを自分たちの言葉で語り合っていきたい、『9をまく』がそういう回路の一つをつくるきっかけになれば嬉しいです。

 今後もぜひ手を携えて憲法の理念を学び、広げていきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

◆藤岡亜美(ふじおか・あみ)さんのプロフィール

南米エクアドルとのフェアトレード雑貨などを販売する会社を経営。環境NGOナマケモノ倶楽部の活動に携わりながら、2004年に9LOVE(クラブ)を立ち上げ、『9をまく』の出版などに取り組んできた。


◆渡辺文(わたなべ・あや)さんのプロフィール

グラフィック・デザイナー。CDジャケットや広告のデザインを手がけながら、『9をまく』のデザインも担当。


 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]