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もう1つの世界は可能だ!

2005年3月21日
櫛渕万理さん(Peace Boat)

 「Another World is possible!」(もう一つの世界は可能だ!)を合言葉に、2005年1月26日から6日間、ブラジル南部の都市ポルト・アレグレで、第5回世界社会フォーラム(WSF)が開催されました。世界135カ国から約15万人が参加し、今年は例年よりもさらに、「もう一つの世界」のあり方が具現化されたWSFであったという強い印象を受けるものでした。

 WSFは、毎年1月、各国政府や企業家が集まる世界経済フォーラム(WEF・ダボス会議)に対抗して、2001年より開催されている、いわば、地球規模の巨大な市民フォーラムです。自由貿易を旗印としたグローバル経済によってますます拡大する、貧富の格差や環境破壊、人権侵害、食や水の危機など直面する課題に対策を求め、より公正で、より平等で、より多様性のある新しい社会を築くために、討論と交流の場としてこのフォーラムは生まれました。イラク戦争開始直前に、世界各地で同時に総数1000万人ともいわれるイラク反戦デモの波が起きたのは、このWSFにおける国境を越えた人々の出会いが始まりでした。


開幕のデモ

 2年ぶりの開催場所となったポルト・アレグレWSFは、真夏の陽を反射する光が眩しいクアイバ河に面する広大な敷地を会場とし、約3万人の若者が泊り込むユースキャンプが隣接。ダウンタウンとは地下鉄でつながり街の人々も気軽にWSFへ参加できる立地条件を確保していました。これは、「もう一つの世界」とは、誰でもが参加可能で自由な議論や表現ができる、公平でオープンな社会であることを実感させるものでした。また、オルタナティブメディアの発信を奨励するかのように、野外サイバーカフェが会場のあちこちに設置され、計700台のコンピュータと1000カ所を越えるネットアクセスポイントがすべて無料活用できる環境が整えられたことも今回の大きな特徴のひとつです。

 構造的な暴力や貧困の問題を考えるとき、被害当事者のアクセス権や自己決定権が奪われていること、発信力のある自由な発言の機会が失われていることが根本的な問題にありますが、今年のWSFがこの二つに着目して、オルタナティブな「場」づくりをしている点は注目に値することでした。


空飛ぶメッセージ「No Nukes!」

 会場内は、テーマごとに11ブロックに分かれました(*各テーマは下記参照)。総計200余ある野外テントでは一日500〜600の企画が行われます。なかでも、今年とくに興味深かったものに「国連と市民社会」に関するセッションがあげられます。もともと、ガバナンスを論じることよりも国際的な草の根の声を発信することに重きがおいてきたWSFで、国連と市民社会について広く議論が行われるのは新しい展開です。911テロやイラク戦争に象徴される米国の一極集中支配に対するチャレンジのひとつと言えるでしょう。グローバルな市民社会と国連がどのようなパートナーシップを組めるのか、国連そのものをどのように民主化し我々の手に取り戻すのか。現在、世界中で取り組まれている「国連ミレニアム開発目標」に呼応したG-CAP、世界規模で武力紛争予防を提言するGPPAC、国連改革にむけた27項目の提言などは、グローバルな市民社会が主導する国連との取り組み例です。

 今年のWEF(ダボス会議)では、「貧困」対策がおおいに議論されました。ようやく現実の国際政治・経済がWSFの主張に目を向け始めた、いや、WSFに集まる多様な市民の声を各国政府はもはや無視できないほど現実が深刻化していると言ったほうが正しいかもしれません。だからこそ、これまでWSFで議論されてきた新しい価値観の創出や新しい政治・経済システムのあり方への政策提言や実践は、今後ますます重要なものになっていくと確信しています。

 来年のWSFは、世界各地で同時に分散開催されることが決まりました。そろそろ、日本でも独自の社会フォーラムを立ち上げるときでしょう。「もう一つの日本」を可能にする、そのチャレンジを日本の市民社会は世界から期待されています。


セッションの様子(正面に掲げられている文字は、ポルトガル語で「世界社会フォーラム」)

(*11ブロックの各テーマ)
A:思想と知識と技術の社会化と共有
B:多様性とアイデンティティの確立
C:芸術と創造
D:コミュニケーション(メディア含む)
E:オルタナティブな経済と産業
F:民主主義と社会闘争
G:平和と非武装
H:グローバルな民主的秩序づくりと市民社会
I:人間のための人間による人間の経済 〜対ネオリベラリズム
J:公正で平等な世界のための人権と尊厳
K:倫理と宇宙観と精神性 〜新しい世界への抵抗と挑戦

◆櫛渕万理(Mari Kushibuchi)さんのプロフィール

国際交流NGOピースボート共同代表。1967年生まれ。立教大学卒。大学時代にボランティアスタッフとして活動を始め、その後、専従スタッフとなり今年で14年目。これまでに世界約80地域を訪ね、1999年ハーグ国際平和NGO会議、2002年より世界社会フォーラムに毎年参加。現在、おもに東アジア地域を担当する。安全保障問題はじめ人道支援、歴史認識の共有、持続可能な社会づくりなど、東アジアの平和共存や信頼醸成にむけて活動を続ける。今年8月には、韓国NGOと“平和と環境”をテーマにした共同事業を発足させる。


 
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