法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

「デモ」という文化と"桃色ゲリラ"

2004年10月11日
増山麗奈さん(画家、"桃色ゲリラ")

(聞き手)
今日は、増山麗奈さんにお話を伺います。増山さんは、画家であると同時に、イラク戦争の際には、"桃色ゲリラ"としてイラク戦争反対のキャンペーンに取り組まれていました。ところで、イラク戦争以前にも、こういった取り組みをされていたのでしょうか?

(増山さん)
天安門事件の10周年のときに、友人に誘われ、香港でのパフォーマンスに参加したことがあります。そのときは軽い気持ちで参加したのですが、参加したら強いものを感じ、その後、表現し続ける動機となりました。天安門事件は、直接的には自分の国の問題ではなかったので、自分に関係する問題はなんだろうと考えだしたのです。それまでは、両親から学生時代の話を聞いたりはしていましたが、デモとかに参加するといったことはありませんでした。
 9.11が起こったときは、とてもショックを受けました。それは、生活のなかで当たり前のものとしてあったアメリカ的なものが崩壊してゆくようなショックでした。そして、アフガン問題をはじめとする国際情勢に不安を覚え、自分としてもそうした状況に納得できなかったので、デモに参加するようになったのです。"桃色ゲリラ"としての活動は2004年3月からになります。
また、政治とは別の想いもありました。コンピューターが発達してゆくなかで、リアリティというか、実感がなくなっていくのだなあということは常々感じていて……。いまも、携帯のテレビ電話のCMなどを見ると、気持ち悪いと感じます。「目を見て話す」というのは、デジタルに映像だけを送られてくるのとは違う。人間の五感をつかって、体温や雰囲気までも感じ取るのが、人と向き合うということ。どうも最近は、人間のあり方が変わってきているのではないかという危機感を抱きますね。ちょうど9.11のときには妊娠していたので、このような社会のなかで子供は育っていけるのか、これからどのような世界が来ようとしているのかというような漠然とした不安感が強かった。それだけに、それぞれの事実に対してだけでなく、目に見えない違うものにも矛先が向いていて、それらと向きあっていた気がします。「どうせやるなら面白いことを」という芸人根性で始めた"桃色ゲリラ"でしたが、そこに参加してくれた人たちのなかにも、政治的な問題だけでなく、日常の生活のなかで無自覚的に感じている生活の不安感や世界の構造が無関係ではないということをなんとなく感じて参加した人が多かったようです。

(聞き手)
どのように"桃色ゲリラ"としてのスタイルは確立されていったのですか?

(増山さん)
自分ひとりでデモやイベントに参加しているときに、周りを見渡してみると、参加者の年齢層がとても高かったのです。若い人がいないとエネルギー量が少ない。だから、若い人を増やそうと思いました。それに、かわいい子がいる所は栄えます。面白い劇団、はやっているお店……。人間の欲望というのは、ふたを開けてみると下世話なものです。そういう意味で、かわいい子を多く引き込んで、注目を集めたかった。
 私たちのやり方は、共感もされれば反感もかいます。40代の友人は、シュプレヒコールのないデモは調子が狂うと言っていました。また、とくに女性の反応は様々でした。60代以上の、実際に戦争を体験した世代の女性には評判がよかったのですが、40代、50代の同性からは反感をかったと思います。戦争体験者の方には、なんでもいいから若い人に平和の意識が広まってほしいという想いが強いのでしょうね。でも、何かをやる以上反発があるのは当然です。反発を招かない表現活動というのはありえないから、そのへんは覚悟していました。"桃色ゲリラ"としては、効果があることをやりたいと考えていましたので、そういう意味では、写真などを通して視覚的にはインパクトがありましたから、それなりに効果があったと思います。

(聞き手)
デモという表現方法は、日本においては、今回のイラク戦争や最近のプロ野球の合併問題などで注目を少しは集めていますが、まだ一部の人のものという感が拭えませんよね。欧米などに比べれば歴史も浅いですし、方法、スタイルとしても発展途上だという印象があります。欧米では、選挙や議員への請願、新聞への投稿といったものと並んで、表現形態の一つとしてのデモがあるわけですが、日本では、街に出て声をあげるという表現方法は、まだ一般的ではないように思えます。デモというのは、色々な人が様々な表現方法をもって集まる文化としての要素があるという風に考えるのですが、"桃色ゲリラ"の存在は、その裾野を色々な意味で広げたなという感じがしました。

(増山さん)
人は自分たちが暮らしにくいことに対して文句を言うわけで、自分の国がかかわることに関してデモをするというのは当然のことだと私は思います。このキャンペーンを通してそういう姿勢を身につけた人もいますよ。イベントコンパニオンで働いていたある友だちの会社は、給料明細が明確ではなかったそうです。そこで、バイト仲間で集まって会社に文句を言い、未払い賃金を払ってもらったそうです。これは、国民性もあるのでしょうが、泣き寝入りする人が多いなか、彼女がこのデモによって「文句をいう」ということを知って得たものではないでしょうか。実はこういうことが一番大事なのだと思います。

(聞き手)
難しくいうと「主権者意識」の自覚といいますか、「声をあげなければいけない」ということを知ったということでしょうか?

(増山さん)

イラク戦争反対のキャンペーンを行う“桃色ゲリラ”
「あげるべき」というよりも、「あげることができる」ということだと思います。それによって、一人一人がもつ漠然とした不安感を解消できるかもしれないというところにつながっていけます。そういったことが、政治に対する絶望感、無関心をなくしてゆくことにもつながっていくのではないでしょうか。
いつの時代も、権力を有する側、戦争を仕掛ける側の方が巧みです。世論は同じ事件を一週間報道し続ければ変わります。国家の側の方が、蓄積、方法論、すべてにおいて一枚上手なのだということを、私たち国民は知っておく必要があります。最近はとくに、「戦争」や「占領」が別の顔をしてやってきます。たとえば、アメリカが、私欲にまかせて新しい植民地をどんどんひろげてゆく。イラクのあとは、またどこかに行くでしょう。そうした流れを止めたいのです。そして、アーティストとしては、戦争の名のもとに文化を軽視する傾向があるのは侮りがたいですね。文化遺産などを平気で空爆していますが、それは人類の長い歴史に対する敬意のなさの表れです。西欧の価値観のみで物事をはかるだけでは、世界がすごく平面的になってしまう気がします。便利でお金になるものだけを尊敬する社会がどんなに殺伐としたものか、想像することは難しくないと思います。

(聞き手)
それでは、最後に、現在の状況や今後の予定などを教えてください。

(増山さん)
いまは、もう少し歴史について少し落ち着いて考えていきたいなと思っています。私はアーティストとして政治的な作品も作りますが、日常的な作品ももちろん作ります。自分が生活しているところにしっかり足をつけて、社会的意味のあるものにこだわらず、面白いものもやっていきたいと思っています。これから、とくに力を入れているのは、「LAN TO IRAQ」というイラク現代絵画展のプロジェクトです。ぜひ多くの方に来ていただきたいです。

(聞き手)
今日はどうもありがとうございました。


◆増山麗奈(Rena MASUYAMA)さんのプロフィール

1976年生まれ。画家。イラク攻撃を中止させようと歌手や舞踏家、役者など表現活動に携わる人々と2004年3月に"桃色ゲリラ"を作った。大胆な衣装に身を包み、イラク攻撃中止を訴える女性アーティスト集団"桃色ゲリラ"は、拡声器やシュプレヒコールとは異なるスタイルを貫き、デモやイベントで市民の注目を集めた。現在は個展などを中心に活動している。

桃色ゲリラ: http://www.gameni.org/momoirogerira/
増山麗奈さんの個人サイト: http://www.gameni.org/renaart/index.html


★LAN TO IRAQ イラク現代アート展の旅 東京〜沖縄のおしらせ★

連日の悲惨なNEWSだけがイラクではありません。古から中東文化の中心地であるバグダッドにて、芸術によって静かに闘い続けている彼らの巨大な意思の力を感じてください。
この度7月〜8月のPEACE ONイラク現地支援&文化交流活動の際に持ち帰った新作18点も新たなコレクションに加わりました。若手抽象画家のホープ、ハニ・デラ・アリ氏の作品を中心に、イラク現代美術界の巨匠ヌーリ・アルラーウィ氏、ムハンマド・ムハラッディーン氏の作品は必見です。

【TOKYO】
国際交流基金とタイニイアリスの共催で、バグダッドから初めて劇団「アル‐ムルワッス」が来日します。東京公演は10月7日から9日まで、国際交流基金フォーラムで開催。
国際交流基金フォーラム: http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/news/0408/08-03.html
タイニイアリス: http://www.tinyalice.net/ 
会場ロビーにてイラク現代絵画展LAN TO IRAQを同時開催いたします(一部展示)。

イラク現代絵画展 LAN TO IRAQ
http://npopeaceon.org/lantoiraq/

【OKINAWA】 http://npopeaceon.org/lantoiraq/contents/okinawa.htm
イラクアートが同じ占領の苦難を共にする沖縄に初上陸。戦争、占領という状況下で表現を続ける人間。「生きる」ことの根源的な問いかけが美しく共鳴します。

「那覇10・10空襲展」
※「LAN TO IRAQ 混沌からの光」は展覧会の一部として参加。

会期:10月10日(日)〜10月18日(月)
主催「10・10空襲を風化させない市民の集い実行委員会」
会場:那覇市民ギャラリー(パレットくもじ6階) 電話 098-867-7663
開館時間 午前10:00〜午後7:00 (日曜は午後5:00まで。月曜休館)



 

 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]