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今週の一言

 

集団訴訟は魅力がたくさん!

2004年9月13日
佐々木かおりさん(弁護士・福岡県弁護士会)

(聞き手)
 今回は、弁護士の佐々木かおりさんにお話を伺いたいと思います。今日はお忙しいところ、どうもありがとうございます。まず、佐々木さんがかかわられているいわゆる集団訴訟についてお話を聞かせてください。

(佐々木さん)
 私がかかわっている集団訴訟には、住基ネット差し止め訴訟とNTTリストラ訴訟があります。
 住基ネット訴訟では、2002年に稼動が始まった住基ネットが、実際には個人のプライバシーやセキュリティーなどで多くの問題がある仕組みになっていることから、そうした問題を多く抱えている住基ネットの差し止めを求め、さらに国・県に対して損害賠償を求めています。住基ネットの問題点について、すでに多くの報道や文献がだされていますが、日本弁護士連合会のWEBサイト(http://www.nichibenren.or.jp/)や、日本弁護士連合会が出版している「住基ネットQ&A」なども、ぜひ参照してもらえたらと思います。裁判は東京や大阪、金沢、名古屋、福島など全国で行われていて、各地の弁護団で情報を共有したり協力して進めています。福岡は、2003年に提訴し、現在、一次訴訟・二次訴訟とあわせて原告は約30人います。この訴訟では、憲法13条を根拠に、自己情報コントロール権や人格権などを主張し、差し止めを求めています。

(聞き手)
 NTTリストラ事件は、どのような裁判ですか?

(佐々木さん)
 NTTは、50歳以上の社員に対して、NTTを退職し、賃金3割カットのうえ子会社へ再就職しなさい、そうすればこれまでと同じ仕事が出来ますから、技術が生かせますよ、それがいやであればこれまでとは異なった職種、しかも高度な知識・技術が必要な職種に就かせます、しかも広域配転になりますよ、どうしますか、という二者択一を迫り、まさに脅しによって11万人のリストラを実現しようとしました。福岡のあるNTT労働者はこの脅しに悩み抜き、NTTに在籍するという決断を下した結果、名古屋へ配転されてしまいました。そこで名古屋への配転は無効だとして、配転無効確認訴訟を提起したのです。住宅ローンや子どもの教育にお金のかかる50歳代労働者にとって賃金3割カットは非常に厳しい減給ですし、また異職種広域配転は、たとえば技術職の人が営業にまわされることとなり、自分の技術を生かせない仕事をさせられ、やる気や生き甲斐を奪われてしまいます。また、50代は介護家族を抱えている場合が多いですから、広域配転になると、家族ばらばらになり、介護に支障が生ずることになります。これは脅迫に基づく配転にほかなりません。この裁判も、現在、東京、大阪、札幌、名古屋、静岡、松山と全国各地で争われており各地の弁護団で情報を共有したり協力して進めています。

(聞き手)
 佐々木さんは、労働事件に関心があるとのことですが、どうして労働事件を扱う弁護士になろうと思ったのですか?

(佐々木さん)
 それは、私がまだ司法試験受験生だったとき、私の出身地広島で起こった「おたふくソース」過労死事件について書かれてある本を読む機会があったからです。その本を読んで、真面目にやればやるほど、働けば働くほど損をするといった状況を、許せないと素朴に感じました。そうした真面目に働いている人たちの役に立てるような弁護士になりたいと思ったのがきっかけです。

(聞き手)
 ただ、そうした想いをもっている人、集団訴訟や労働事件をやりたいという弁護士は、弁護士のなかでも、どちらかといえば少数派ではありませんか?

(佐々木さん)
 そう感じるときもあります。でも、弁護士は、みんな人権意識が高いと感じます。だから集団訴訟や労働事件を熱心に扱うことに、みんな共感をもってくれていると思います。扱う事件が少数派でも自分の適性を発揮できる場所はそれぞれでしょう。
 ベテランの弁護士からきいたところによると、最近は、労働事件に関心をもつ人も少しずつですが増えてきているようです。福岡でも、月に一度、労働事件の勉強会を行っているのですが、それまではあまり関心がないのかな、と思っていた人も、参加されるようになってきています。

(聞き手)
 それでは、実際に集団訴訟にかかわってみての感想などはいかがでしょうか?

(佐々木さん)
 住基ネットやNTTリストラ事件など集団訴訟にかかわってみて思うことは、大変勉強になるということです。一般事件など1人で担当している事件とは違って、集団訴訟は多くの弁護士がかかわります。そうしたなかで、いろいろな弁護士の考え方や意見を聞くのはとても有意義ですし、とくに先輩弁護士の幅の広い見方や斬新な視点などに触れることができて、とてもためになっています。住基ネットの裁判では、毎回の会議に学者の方や支援代表の方も参加されていて、そうした人たちと問題意識を交換したりして、一緒に裁判を作っていくという過程も魅力です。
 また、とくに集団訴訟の場合には、法廷のなかだけではなくて、法廷の外での取り組みもとても重要です。そういった裁判の闘いかたというか、取り組みのしかたについても毎回新しい発見があります。たとえば、NTTリストラ事件では、一般的な配転無効訴訟とはちがうことを訴えるために、現場が実際にどのようになっているのか、リストラ黒書を作ることになりました。現場で働いている人たちと協力してアンケート調査、聞き取り調査を行っています。いまそうして集めたものを、裁判所に、この配転はただの配転ではなく、リストラの手段としてなされたものであり、しかもそれは労働者への脅迫にほかならないのだと訴えかけるため、法廷のなかで使うことを考えています。また、このリストラ黒書を出版して法廷外での世論作りにも役立てようということを考えています。
 それから、裁判の日には、たくさんの方に傍聴にきてもらっています。NTTリストラ訴訟は毎回傍聴券が発行されますし、住基ネット訴訟も毎回傍聴席のほぼ8割の席がうまっています。こうしたことは、裁判所にこの事件が注目を浴びているというメッセージを伝えるうえでも、とても大事だと思います。
 若いときに、集団訴訟にかかわるというのは、将来の弁護士活動にとって、本当にためになる意義あるものだと思います。弁護団の弁護士ともそうですし、原告や支援の人たちとの交流が深められるのも魅力です。こうした機会を、私は大事にしていきたいと思っています。

(聞き手)
 佐々木さんがかかわられている集団訴訟では、いずれも憲法が論点になっていると思いますが、憲法とのかかわりでお考えになることはありませんか?

(佐々木さん)
 受験が終わり、弁護士になってからは、正直にいって憲法は実務では縁遠いものでした。でも、住基ネット訴訟にかかわるようになって、プライバシー権、自己情報コントロール権について改めて勉強し、その重要性を受験時代とは違う意味、実際の生活や現場での重みという点を再確認できましたし、NTTリストラ事件でも、労働者の権利といいますか、働く人にとっての憲法の意義というものを、裁判を進めていくなかで再認識しているところです。こうした権利やその意義を大切にして、裁判でも主張していけたらと思います。

(聞き手)
 今日は、どうもありがとうございました。集団訴訟の魅力、そして弁護士という仕事の魅力もよく伝わりました。今後のご活躍をお祈りしています。


◆佐々木かおり(Kaori SASAKI)さんのプロフィール

広島大学法学部を卒業して、2002年に弁護士登録(55期)。現在、福岡第一法律事務所所属。住基ネット訴訟やNTTリストラ訴訟などの裁判にかかわっている。佐々木弁護士からの一言:「福岡には、集団訴訟がたくさんあります。ぜひ傍聴にきてください!」

参考URL: 
住基ネット裁判 http://www005.upp.so-net.ne.jp/jukisosho/
NTTリストラ裁判 http://www.tennet21.com/ntt-risutora/



 

 
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