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今週の一言

 

日本にいるイスラームの人々

2004年9月6日
東京ジャーミイ ジェミル・アヤズさん

(聞き手)
 今回は、東京にあるイスラーム寺院を訪れています。東京ジャーミイ・トルコ文化センターの代表でもあり、イマームでもあるジェミル・アヤズさんにお話をお伺いします。まず、東京ジャーミイを建築された目的や、活動内容について教えてください。

(ジェミルさん)
 ロシア革命(1917年)のときに日本に亡命したトルコ人が、1938年にモスクを建てました。しかし、1986年に老朽化のため取り壊され、トルコ政府のバックアップのもと再建されたのが現在のモスクです。
 新しく建築された東京ジャーミイは、取り壊されたものと同じように、日本でイスラームを信仰している信者たちの礼拝をする場として建築されました。ここでは、日本に滞在するムスリムたちや、仕事などで日本に短期的に滞在しているムスリムたちが、週に1回集まって礼拝をしますし、1日5回の礼拝のためにも使われます。
 同時に、日本人は、芸術や歴史にとても興味をもっている国民なので、トルコの歴史や宗教を日本のみなさまに紹介するという目的もあります。モスクは、毎朝10時に開き、最後の礼拝が終わるまで開いていますので、その間、あらゆる世代の日本人にトルコ文化を紹介するため、訪問者に対して開かれています。見学者が、東京ジャーミイの特徴、歴史、文化、宗教などに関する質問をしてくだされば、何でもお話します。
 また、文化センターとして、他の宗教の教会と一緒にイベントを行ったり、講座、講演を開いたりもしています。最近では、とくに、9.11以降は、イスラームを理解しましょうという趣旨のイベントを、日本のキリスト教団体などと一緒にやりました。

(聞き手)
 イスラームの教えとは平和だと伺っていますが、イスラームにおける平和とはどういったものなのでしょうか?

(ジェミルさん)

東京ジャーミイの外観
 そもそも、「イスラーム」「ムスリム」の意味は、「平和」です。この2つの言葉は、同じ語源から発生していて、「帰依すること」「幸福の状態、心の安らぎに入ってくる」といった意味をもちます。つまり、「人々よ、平和の状態に入りなさい。あなたを悪い方向に迷わせる方向へ行かないで、アッラーの道へ入りなさい」という意味があるのです。イスラームにおいては、互いの権利を互いに認めながら、宗教的に平和をわかちあうように教えられます。
 そして、モハンマドの伝承では、必要があれば近隣の人や国を助けなければなりません。9.11以後は、イスラームを好戦的な宗教というような誤ったイメージをもたれている方も多いのですが、それは本当の姿とは乖離しています。そもそもイスラームとは、平和、愛情、兄弟として生きる、寛容さを意味するものなのですから。

(聞き手)
 いま、「寛容」という言葉がでましたが、他の宗教に対してはどうなのでしょうか?

(ジェミルさん)
 歴史的にイスラームでは、この世に生まれたすべての人間が、どのような宗教を信じるかを自由に選ぶことができると考えています。預言者モハンマドは、聖書コーランを実践し、体験した人なので、ムスリムにとっては模範的な役割を果たしていますが、同時に、すべての他の宗教とともに、互いに尊敬しているものを尊敬しながら生きるように勧めています。同じように、自分の学校を自由に選択することができますし、自分の宗教の教えどおりに祈り、活動することができます。オスマン帝国時代には、キリスト教徒は、自己の宗教の教えどおりに生活していました。それぞれの宗教の教えをそれぞれの信者が尊敬しているように、互いに他の宗教に対しても尊敬しなければならないという考えのもと、他の宗教を信じる信者たちも平和に暮らしていました。

(聞き手)
 オスマン帝国の話がでましたが、それでは現在のたとえばトルコ国内での他宗教の信者との関係はどのようなものなのでしょうか?

(ジェミルさん)
 現在、トルコ国内にも、人口的にははっきりわかりませんが、他宗教の信者が一定程度います。しかし、対話的な活動を行っており、問題はありません。
 私は、日本へ来る前にはトルコにいましたが、2000年には、世界的宗教対話を行いました。キリスト教、ユダヤ教の人々とも話し合い、トルコにいる彼らはみな自由で、喜んでいると語ってくれました。この4年間も、彼らの希望を果たすよう活動を行っているつもりです。

(聞き手)
 一般的にいって、イスラーム社会では日本あるいは日本人のことはどのように思われているのでしょうか?

(ジェミルさん)
 日本の国民は、多くのムスリムから愛されていると思います。芸術的にも技術的にも、世界のトップとして発展した国として、目標ともされてもいます。
 また、アフガニスタンやパキスタンなどの外国で、たとえば井戸を掘ったり医療を行ったりするなどの形で現地の困った人たちを助ける活動をしている日本人の姿もよく伝えられています。宗教に関係なく、そういう日本人に対しては人間として尊敬の念を抱きます。困った人を助ける人はすばらしいですから。

(聞き手)
 日本では、イスラームに対して深く知っている人は少ないのが現状だと思います。その点についてはどう思われますか?

(ジェミルさん)
 とても残念なことですが、イスラームは日本だけでなく、世界中の人にあまり理解されていません。普通の市民も、イスラームを誤解していると感じます。イスラームと聞くと、殺す、人を傷つけると思い描く人もいます。しかし他方で、イスラームとは何ですかと興味をもって聞きにくる学生や市民の人たちも多く、その1つ1つに誠実に答えていくことで、少しずつ誤解を解き相互理解を深めてゆくしかないと考えています。そうした結びつきの経験から、真剣にイスラームに対する理解を深めようとしてくれる人たちがいることも、私たちは知っています。そして私たちもまた、日本のことをもっと深く知っていきたいと思っています。

(聞き手)
 日本はどちらかというと、自分たちとは異なる者、あるいは「日本的」「日本人的」なるものとは異なるものに対して不寛容な傾向があるのではないかと思うのですが、日本で暮らしてみて、日本の社会はどういう風にみえますか?

(ジェミルさん)

東京ジャーミイの
イマームのジェミル=アヤズさん
 私が日本で過ごしたこの4年の間、そうした不寛容だと感じた経験は個人的にはありません。市民のみなさんはどんな人に対しても礼儀正しく、礼儀正しすぎるくらいです。かといって、私たち自身がそんなに日本の社会に入っているわけでもないのですが。
 私は、以前アメリカにいたこともあるのですが、たとえばアメリカでは、近隣の住民とすれ違うときに、お互いに挨拶を交わしていました。でも日本では、家からここへたどり着くまでに1人の女性としか挨拶しません。電車などでも避けられているように感じます。なぜだかわからないのですが(笑)。

(聞き手)
 歴史的あるいは島国という意味では地理的にといってもいいかもしれませんが、日本人は、外国から来た人にどう接してよいのか、慣れていなくてわからないということがあるかもしれません。英語を話すのが世界のなかでも苦手だということは有名ですし、そういったことも関係あるかもしれません。もっとも、みんながみんなというわけではありませんが。

(ジェミルさん)
 トルコから子供たちが来て浅草を訪れたときに、道に迷って若い男性に聞いたことがありました。彼は英語を話せませんでしたが、それでも身振り手振りで寺の前まで案内してくれたという経験もありましたよ。とても印象深い経験でした。
 
(聞き手)
 それはよかったです。しかし、日本人の一部には、イランやパキスタン、トルコなどの出身の人に対して厳しい態度をとる人たちがいます。肌の色、出身地などで差別する意識があるのも事実です。

(ジェミルさん)
 そういう差別意識ができるだけ少なくなればいいですが、歴史のなかでゼロになったことはありません。文化、性別、民族、それらの違いから生じる差別意識、それを求めている人はどの国にもいます。
 しかし、様々な日本人が興味をもって多文化交流しているのを知っています。喜びを分かち合うというのは、人間の理性です。私がトルコに戻ったときは、日本のことを伝えます。互いに知り合いながら日本人との親交を深めることが大切です。その愛情を人間のなかで増やしていくことが大切です。
 だからこそ、若い人たちには、まずはお互いに理解することをすすめています。人生における色々な経験は重要です。多文化、他宗教に対してもっと深く理解してほしいです。もし時間があれば、一度ここへも実際に来てみてください。


◆東京ジャーミイのプロフィール

東京ジャーミイは、小田急線の代々木上原駅から歩いて5分のところにある。この寺院は、もともとトルコ系ムスリムによって建築された。2000年4月、現在の形となって誕生した。現在は、東京ジャーミイ・トルコ文化センターとして、歴史的、文化的な教育のための施設としても活用され、日本とトルコ、イスラーム世界との架け橋となる役割を担っている。毎日、午前10時から午後6時半まで、一般の人に対しても開放されており、また、月間イスラーム講座も開催している。詳細は、次のURLで参照することができる。
http://members.at.infoseek.co.jp/yokogurer/camii.htm



 

 
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