法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

今週の一言

 

自分たちの目で見たことを、若い人たちに伝えたい

2004年8月23日
U−Press(小田川さん、久保さん、久野さん)

(聞き手)
 今回は、若手のフォトジャーナリスト集団のU−Pressのメンバーの方々にお話を伺いたいと思います。まず、U-Pressの立ちあげのきっかけや経緯を教えてください。

(小田川さん)
2002年7月にJVJA(日本ビジュアルジャーナリスト協会)が立ちあがり、私たちはその準会員として参加していました。それが私たちの出会いです。フォトジャーナリストを目指す人たちが集まっているのですが、より若い世代に訴えたいということで、その媒体を立ちあげようということになりました。マスメディアでは流れていないものを伝えたいと考えたのです。最初に、ホームページを立ちあげ、そのあと、雑誌「U-Press」Vol.0を発刊しました。

(聞き手)
 みなさんが、写真というものに深くかかわるようになったきっかけは何だったのですか? どういった想いで、フォトジャーナリストになろうと思ったのでしょうか?

(久保さん)
 僕は、大学1年生までは本当に普通の大学生でした。2年のとき、受験生向けの雑誌を作ったのですが、ちょうどそれを作り終え、自分の将来について考え始めたときに、広河隆一さんがパレスチナのことについて書いてある文庫本に出会いました。その本に大変影響を受けたのが、この世界に入るきっかけでした。その本には、彼の取材に対する姿勢がよく表れていました。「悪い」ものは「悪い」という。それは一見、とても当たり前のことだけれど、なかなか言えないことです。それをずっと言い続けているのは、そう簡単なことではありません。そのときの自分には、そういった、何かに対する信念がなかったので、興味をもったのです。他にも、世界的に活躍しているフォトジャーナリストはたくさんいますが、広河さんは今でも、僕がもっとも影響を受けた人ですね。広河さんの本を読んだとき、「これだ!」と思って、その次の日にはカメラを買いに行っていました。その本がきっかけで、パレスチナ問題をやろうと思い、ホームページなどで関連団体に接するようになり、今のメンバーに出会いました。なぜ写真かといわれると、やはりそれも広河さんの影響が強いです。

(久野さん)
 僕の場合は、学生のときによくアジアに旅行をしていて、自分の目でじかに物を見、色々なことを感じたり考えさせられたりしたことが大きく影響しています。その国の実情というものをもっと知りたいし、自分が見て訴えかけられたものに向き合って生きたいと思って、カメラマンになりました。写真はやはり、言葉が通じなくてもわかるし、本にして後世に残していけるというところが魅力的ですね。それから、僕は母親からも影響を受けています。小さいころから、目に見える物事の裏側にあることを見ようとする姿勢を自然と教わっていましたから。とくに、貧困に対して、母は敏感でしたね。カメラマンはもちろん、伝え手なのですが、僕の場合、その原点には、知りたいという想いが強かった。そこに生まれた人間の生き方、その人間が何を考え、何に喜び、何に悲しむのか。そういったものにちゃんと向き合おうとしたら、ただの旅行者じゃ限界があって。まだまだ自分にはできないことがたくさんありますが、自分にしかできないこともあるはず。自分の意見を世の中に言えるというのはすばらしいことだと感じています。

(小田川さん)
 私は、ちょうどアメリカに留学していたときに9・11が起こり、ワールドトレードセンターに飛行機が突っ込む映像を見て、色々と考えたのが最初のきっかけです。なぜこんなことが起こったのか。もっと色々なことを知りたいと思っているときに、サイトでアフガニスタンの少女の写真を見つけました。その子はものすごく疲れた顔をしていて、私はとてもショックを受けて、しばらく目が離せませんでした。戦争は意図的に起こっている。アフガニスタンのこの現状も、誰かがそうしているのです。日本にだけいたら、気がつかなかったかもしれません。社会はどのように動いているのか、マスメディアに流れない写真と現状。知らないところで不条理が起こっている。隠されているものを見てしまったというショックがとても大きかったのです。そして、見てしまった以上、ものすごく気になる。今まで自分が知らなかった世界なので、消化できなくて混乱していた時期もあります。そのことで、何かを伝えるのに、映像と言葉によるもののインパクトの大きさを知りました。それまで自分で撮ったことはなかったけれど、JVJAに入って色々なものを見させてもらい、自分でも撮りたくなったのです。

(聞き手)
 みなさん、それぞれによく行かれる地域があるようですが、こだわっている地域あるいはテーマなどはあるのでしょうか?

(久保さん)
テーマとして、とくにこれと決めているものがあるわけではありません。取材に行くたびに、日々色々なニュースに接しますので、そのときそのとき心を動かされるものがあります。経験を重ねるうちに、これというテーマが見つかるかもしれないとは思っています。僕はインドネシアによく行くのですが、インドネシアは、国としてとても興味があります。インドネシアは、独立紛争、民族紛争を複数抱えていますし、色々な意味で不安定な国ですが、よい意味で面白く、目が離せない感じです。日本と近い国なのに、あまりニュースでは取りあげられませんよね。自分が撮らないと、という義務感はありませんが、危険にさらされている人がいると気になる。やはり、知ってほしいと思いますね。

(小田川さん)
 こだわっているテーマは、大きくいえば難民です。自分の意思の及ばないところで、運命を左右されてしまう人たち、貧困もそうですが、政治難民など、自分の思想信条によって迫害を受けている人たちに関心があります。

(久野さん)
 僕の場合は、アフリカです。初めて行ったときから他の国とはインパクトが全然違って、純粋に好きです。その地に生まれ、その地に生きているアフリカの人たちが、何を感じ、何を考えているのかを伝えていきたいと思いました。アフリカでは、ショックを受けることが多いのです。たとえば、アフリカには、少年兵がいるのですが、彼らはみんな自分でつけた戦闘名をもっています。Hungry Lionとか、変わったものが多いですね。そのなかで一人、Don't Believe Meという名の少年がいて……。「俺を信じるな」という名前がショックでした。取材をするにしても、まだ自分のイメージだけで取材してしまうところがあるので、やはり限界を感じることもあります。そういうものを壊してゆくのが大事だと思っています。

(聞き手)
 みなさんはいま、カメラマンとしてはフリーの立場で活動されているわけですが、フリーとしてやることの良さとは、どんな点でしょう。

(久野さん)
 やはりなんといっても、好きなことができるということでしょう。フリーを選択するかどうかというのは、結局、何を優先させるかということだと思うのです。知り合いで、やはりアフリカをやりたくて朝日新聞に入った友人がいます。7年を経て、現在、アフリカ特派員になりましたが、アフリカにいられるのはおそらくあと3年。自分の場合は、生きてゆくための必要最小限のものがあればよく、先にアフリカありきですので、フリーを選択したわけです。

(小田川さん)
 私はいま、ビルマ難民弁護団の事務局として働いています。フォトジャーナリストは、どこかに行って帰ってきて、というライフスタイルが多いのですが、私はそれをずっとやっていける自信がなかった。腰を据えて、一つのテーマをじっくり考えられる環境で、関心のあるテーマを現場で見てみたいと考えていたときに、実は日本にも難民がいるということを知って驚きました。こんなに身近に、届かない声を出している人がいるということに。難民というと、外国にいるというイメージしかなかったのです。だから、今の自分にはこれはとても大事なものだと思えました。それで、弁護団事務局の仕事をメインに、カメラマンとしてはフリーでやっています。

(聞き手)
 最近は、日本ではイラク戦争や改憲のことなどがかなり問題になっています。みなさんは、海外に行く機会も多いと思いますが、外国から日本を見ると、日本はどのように映りますか? 

(久野さん)
取材で長期にわたって海外に行くことがありますが、最初の頃は、海外に行ってそこで生活をすると、日本の悪いところばかりが見えてくるような感じでしたね。いまは、日本ではイラク戦争などはたくさん報道されていますが、でも世界には報道されてはいませんが、多くの紛争や戦争がいまも起きています。そういった紛争地でどんなことが起きているのか、もっと関心をもってもらいたいですし、そうした現実に起きていることを知ったうえで、いろいろと議論してもらいたいと思います。

(小田川さん)
 海外にいくと、とにかく日本にはモノが溢れていることがよくわかります。一方で、私も取材の際に難民キャンプに泊まったことがありますが、そういう現実もあります。私自身は、海外に行くことで、逆に日本国内でも、たとえば難民の保護などいろいろとできることがあることに気がつきました。あまり知らされていないけれども世界で現に起きていること、そういったことにもっと関心をもってもらえたらと思います。

(聞き手)
 みなさん、今日はどうもありがとうございました。

◆U-Pressのプロフィール

U-Pressは、2003年、JVJA(日本ビジュアルジャーナリスト協会)に準会員として所属していた若手のメンバーたちによって結成されたフォトジャーナリストのグループです。
メディアではあまり取りあげられない真実を、自分たちの足を使って取材し、目で見、耳で聞き、より多くの人に届けることを目的にしています。ホームページ上で情報を発信するほか、雑誌「U-Press」も発行しています。
WEBサイト: http://www.u-press.org/



 

 
[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]