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今週の一言

 

プロ野球の合併・1リーグ制への移行問題と勤労の権利

2004年8月9日
松原 徹さん(プロ野球選手会事務局長)
聞き手 事務局

――松原さんが事務局長をなさっておられるプロ野球選手会ってどんな組織ですか。

松原 日本プロ野球選手会は社団法人及び労働組合という二つの形態をとっています。社団法人プロ野球選手会というものがまず昭和55年にできました。野球に関する公益事業ということで、野球教室を全国各地で行うなど、野球全体の発展に寄与するための活動を行っています。
 もう一つの労働組合については純粋に労働者としての選手による組合で、雇用者である球団との間での待遇改善交渉などを行っています。現在、ヤクルトスワローズの古田敦也選手が会長をつとめています。
 
――近鉄とオリックスの合併に端を発した1リーグ制への移行の問題が、今や社会問題といってもよい状況になっていますね。

松原 はい。6月13日の日経新聞にこの合併のニュースが出ました。以来、合併や1リーグ制が急速に新聞紙上だけで規定路線のような形で進んでいきました。
選手団が説明を受けたのは7月5日の会議が初めてです。会議では来年はもう1リーグだという話がありました。それに選手たちは猛反発しました。各球団には、選手以外にも、球団職員、スカウト、マネージャー、バッティングピッチャー、用具係など、30名近い方々がいます。選手たちは、自分たちのこと以上にその方々の雇用問題などを心配して結束を固めました。
 その後パリーグではもう一つの合併話が進んでおり4球団になるのでそれではやっていけないから1リーグにするという話がさらに強くなりました。しかし、広島市民球団のように、今でも巨人戦の放映権料など自らの収入だけでやっと経営している球団があります。1リーグにすると経営ができなくなり、翌年には9球団になる可能性があります。今の論理では、9球団となると、次は8球団になるという話が出てきます。僅か1、2年で3分の1の選手や裏方さんがいなくなるわけです。
 そうなりますと、ファンが減り、将来野球をやろうという子どもも減ります。野球をする底辺が縮小し、すばらしいプレーも減って、野球の魅力が半減するでしょう。

――プロ野球労働組合は何を求めているのですか。

松原 球団側は経営上万策尽きたから合併だといいますが、近鉄の命名権の売却を認めず、球団買収に名乗りをあげている企業(ライブドア)との面接さえしません。ともかく1年間は合併を凍結し、その間に球団合併や1リーグ制が将来の野球界にとって一番良い方法かどうかを十分議論することを求めています。その際、構造的な問題、たとえば、ドラフト制の問題もきちんと議論すべきです。現在の自由枠だとどうしても選手が一定の球団に偏り、また、不透明な金も流れます。完全ウエーバー制にして勢力均衡という目的を発揮できるドラフト本来の制度に戻るべきです。

――すごい団結力ですね。

松原 はい。1、2軍の選手752名全員が組合に加盟しています。古田選手が先頭に立って奮闘していますが、選手たちは、自分たちが動くことで事態は変わるということをこれまでの活動で学んできましたから、自ら行動に立ち上がり、7月30日からは12球団の選手全員が12色のミサンガをつけてプレーしています。

――憲法27条は、勤労の権利を保障しています。その内容として、手続きを含めて正当な理由なく働く場を奪われない、解雇されない権利が保障されているはずですよね。

松原 野球協約の第19条には、「選手契約に関する事項」に関わる場合は特別委員会を開催して決定しなければならないとあります。特別委員会は10人で構成され、そのうち4人は選手の代表で、議決には出席委員の4分の3以上の賛成が必要です。ですから、選手である委員が反対すれば可決できないのです。
 合併、1リーグ制の問題は選手の大量解雇を伴いますから、「選手契約に関する事項」です。しかし、球団側は、合併は専ら経営権に属するものだとして特別委員会の開催に応じず、オーナー会議などで一方的に決めようとしています。

――ファンや世論の反応はいかがですか。

松原 選手会の味方についてくれるメディアが多いです。選手会は、急速な合併、1リーグ制への移行に反対するネット署名を7月27日から始めていますが、3日間で4万5000人の方から賛同の署名が送られてきました。選手自身もこれから予定している球団も含めて、12球団全部で署名活動に取り組んでいる最中です。こちらもすごい反応です。この問題ではストライキをしてもよいという声もいただいています。選手はファンの後押しがないと野球ができません。

――プロ野球は、地域に根ざした数少ない大衆的な文化であるともいわれていますね。

松原 そのとおりです。野球協約にも、国民の文化的共有財としてのスポーツとなることを目指していくとあります。

――そうはいっても経営が成り立たないとプロ野球はこのままでは維持できないと思いますが、選手会としての何か提言がありますか。

松原 確かに今のままでは経営的には無理があります。球団はこれまでは広告宣伝費と見られてきた面があります。近鉄のように、そういう使命はもう終わったという球団もあるかと思います。そうした中で、お金を持った新しい企業が参加しようとしています。そういう企業は球界に入れないというのは、独占禁止法にも関わってくる問題ではないでしょうか。もっと門戸を広げるべきです。時代は流れているのです。
 野球は相手があって試合ができるものです。ですから、球界全体の繁栄を考えるならば、例えばテレビの放映権収入などは1球団が得るのでなく、12球団全体として集めてコミッショナーが管理するビジネスを考えなければなりません。セ・パの交流試合の放映権収入などがその候補でしょう。メジャーリーグにあるような一種の贅沢税、すなわち、選手の総年俸が一定の額を超えた場合は、他の球団に分配するような制度も検討すべきです。また、高額な年俸をもらっている選手の翌年の減俸制限なども緩和してよいと思います。

――選手会としては今後どうなさいますか。


12球団の選手全員しているミサンガ

松原 署名活動を今後も続けます。そして、以上述べた改革案などについて、ストライキも辞さずという強い覚悟をもって交渉していきたいと思います。選手会は一糸乱れず強く団結しています。
 また、野球協約には、特別委員会の開催に応じない場合はコミッショナーに提訴できると規定されていますから、それに従った段取りも考えています。
 8月9日には、プロ野球の明日を考える会を緊急開催し、有識者の方に議論していただきます。とにかく、9月8日のオーナー会議ですべてが決まらないように、あきらめずに行動していきます。

――最後に他に訴えたいことがありますか。

松原 リストラの波がプロ野球にも押し寄せてきています。選手会はここ4、5年は自分たちの年俸のことは要求していません。選手たちは今、子どもたちが将来野球界を目指し野球界が発展するにはどうしたらよいかを考えています。このことを今考えなければ他に誰がやるのかという強い気持ちでやっています。

――是非、がんばってください。

(インタビューは8月2日に実施しました)

◆松原徹さんのプロフィール

経歴
1982年(昭和56年) ロッテオリオンズ球団入社(管理部)
1988年(昭和63年) プロ野球労組初代中畑清会長時代からプロ野球選手会事務局勤務
2000年(平成12年) 同事務局長就任



 

 
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