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今週の一言

 

憲法と地方自治の本旨をかみしめて・・・

2004年7月26日
上原公子さん(国立市長)

(聞き手)
上原市長は5月3日の憲法記念日が誕生日なんですよね。

(上原さん)
 そうなんです。それで、父から公(おおやけ)の子という名前をもらったようです。たぶん、あの当時の人にとっては、憲法っていうのはすごい宝物だったんじゃないかという気がします。憲法についてあれこれ父親から聞いたという記憶はないのですけれども、名前をこんなふうにつけたということは、父親にはそれなりの思い入れがあったのだろうという気がします。本当はあまり好きな名前じゃなかったんですが、大人になって、憲法を勉強するようになって、名に恥じないようにしようって思えるようになりました。

(聞き手)
 上原市長は有事関連法案について小泉首相に対して質問書を提出されるなど積極的に対応されましたが、どういうお考えだったのかお聞かせください。

(上原さん)
 自治体の首長には住民の生命や財産を守る責務があります。今度の有事関連法のような悪法は、やっぱり悪法で、それは正さなければいけないという立場に立たなければなりません。自治体の首長がそうしないで、誰が住民の生命・財産を守ることになるのか、ということだと思います。国立市は2000年に、私が市長になってから平和都市宣言をしました。戦争については完全拒否の宣言ですので、その立場で私に何ができるかと真剣に考えたときに、今度の有事関連法案には疑問をもたざるをえませんでした。それで自治体の立場から44項目の質問書を小泉首相に提出したのです。
 いま、「安全」というのがまさにキーワードになっています。よく「戸締り論」と言われますが、敵が押し寄せてきたらどうするんだということで、たたかう武器をもたなきゃいけないということになる。それで、ここまではいいだろう、ここまではいいだろうっていう解釈で、いきつくところがやっぱり日本は海外まで出兵してしまった。だから、いま、そういうことをずっとやりたかった人たちが目論んできたことが、まさに「9・11」の事件を突破口におおっぴらにできるようになってしまった。恐怖感をあおることで、誰もがそういう状況に対して発言しづらくなってしまったということだと思うんです。
 民主主義ということを考えたときに、議論ができないような国は、民主主義の国家じゃないですよね。まさに、いま日本がそういう時代になりつつある。私は、もう一回民主主義っていうのを徹底して考え直さなきゃいけないと思っています。今年の市政方針のなかで、戦後まもなく文部省が出した「民主主義」っていう教科書を引用しながら平和の問題を書いたんですが、民主主義とか、何のために私たちは平和を願うのかっていう本当に基本的な考え方をあらためて整理し直して、いま何を目指すかということについて私たち自身が議論する時代に入ったと思うんです。

(聞き手)
 上原市長は憲法改正問題についてはどうお考えですか。

(上原さん)

上原市長が議会の度に持参する日本国憲法の解説書。ところどころにアンダーラインが引かれ、付箋がつけられている。
 私も憲法を学んで、憲法の短いことばのなかに様々なすごいことが書かれてあることを感じ取ることができました。本当に基本的なことが書いてあるから、これを今の生活のなかできちんと体現化するためには、そのような法律を作って、法律で補完していけばいい話ですよね。憲法に環境権だとか新しく出てきた人権っていうのは認めちゃいけないとは書いてないわけですから。
 ところが政府は国民に対してなかなか新たな権利を保障しません。環境基本法ができたときも「環境権」という言葉は入れない、情報公開法ができても「知る権利」という言葉は入れないですよね。そのような権利は憲法を変えないと認められないのかというと、そんなことはないと思うんですね。法律が、市民の本当の意味での幸福を保障するものに変わってきていないんです。そこをやらずして改憲をしなければいけないという主張がなされていることに、私はすごく疑問を感じています。
 法政大学の五十嵐先生が、日本の法学には立法学がないとおっしゃったんですね。大学では解釈学しか教えない。解釈学しかできないから、法制局とかに牛耳られて、立法の府が役に立っていないといわれるのは、まさにそのとおりじゃないかなと思います。こんどの年金法でも平気で間違いをする。最近の立法ってすごくいい加減じゃありませんか。あまりにも雑ですよね。

(聞き手)
 国立は高層マンションの建設などに対して景観を守る住民の運動で知られていますが、このような問題に対する地方自治体の役割についてのお考えをお聞かせください。

(上原さん)
 私は、地方自治の本旨というのは、そこに住む住民たちが街をつくっていくという基本的な権利をもっていて、その人たちがこうやりたいっていう努力が基本となってつくりあげていくものだと思っています。国立では、街をつくる権利を持っている市民たちが開発よりは環境を守ろうという運動をずっと継続してやってきたわけですから、私たち自治体が本当に最大限の努力をするのは当たり前のことです。景観を守る運動は市民が自覚的に街をつくっていくという、まさに地方自治の本旨に基づいて幸福の追求をした結果の象徴だと思っています。
 いまの社会、人間が孤立してしまうところがありますよね。そこでは人間の尊厳がなくなっていくんです。やっぱり、誰しも自分を認めてもらいたいという欲望がありますよね。神戸の少年事件の「透明なボク」っていう象徴的な言葉は、透明でありたくない、透明人間じゃなくてちゃんと存在する自分でありたい、そのアピールだったわけでしょ。それは、子どもだけじゃなくて、お年よりも自分が人間としてこの街で生きるっていう証がほしいわけですから、まさにそういった尊厳が認められていくという社会は、お互いが出会っていかないとできなくて、出会えない人たちが孤立化していっていろいろな問題を引き起こしていく。親子を孤立させない、お年寄りを孤立させない。支え合い、人間同士が出会えるような、見つめ合えるような、Face to Faceの空間作りをしないといけないと思っています。

(聞き手)
 最後に上原市長の平和への思いをお聞かせください。

(上原さん)
 平和っていうのは難しい話ではけっしてなくて、誰だって死にたくないし、殺されたくないし、殺したくないわけですよね。それが、理不尽にも、国の命令によって殺されなきゃいけないっていう、それは絶対いやだっていう単純な話だと思うんです。そこは、いまの子どもたちは逆にイラクを通してわかるんじゃないかなと思います
 石井百代さんという方の、「徴兵は命かけても阻むべし母・祖母・おみな牢(ろう)に満つるとも」っていうすごい詩をいただいたことがあります。牢につながれても、いま、私たちががんばらないでどうするっていう過去の母たちがいった言葉を、いま私が言わなきゃいけないなんて、こんな時代がくるなんて思いもしなかったんですけど、その覚悟でやっていきたいと思っています。

◆上原公子さんのプロフィール

東京都国立市の市長。都内初の女性市長。市民運動を経て、1999年に初当選し、現在2期目。2000年には「国立市平和都市宣言」をおこなう。有事法制をすすめる政府に対して質問書を再三提出し、反対の立場を明らかにした。



 

 
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