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2016年参議院選挙無効訴訟最高裁大法廷判決傍聴雑記

2017年10月16日



奥山貞三さん(一人一票実現国民会議運営委員)

はじめに
 私は大学では法学部にいたが政治の授業が好きであった。1970年時代の政治学では民主主義は自由と平等という時には相容れない価値観を包容していると規定したが、自由を奉じる欧米自由主義国家と平等を御旗とするソヴィエト的共産国家がともに民主主義国家と主張した。しかし、ソヴィエト社会主義連邦共和国が1992年に崩壊して以来、世界は欧米自由主義国によって席巻された。中国の台頭があるものの現在ではなお自由主義国が世界で幅を利かせ、持てる者はますます富み、持たざる者は貧困のスパイラルに落ちいっているのが現状である。21世紀になり自由という横暴が世界に顕在化し、日本では2012年末、安倍晋三が首相になって露骨に表れた。
 さて、こんな状況下であるが、行き過ぎた自由を抑えるには、平等という価値観を前面に押し出すことではないかと思う。この平等であるが、政治に関しては一人一票が厳格に適用されることが日本を民主主義国家とたらしめるものである。日本のどの地域にいても自分の投票権が差別されないことが担保されて日本は民主主義国家といえるのである。
 わたしはいつもこんなことを考え日々暮らしている。
 
2017年9月27日午後3時
 私は一人一票実現国民会議の運営委員としてこの判決を傍聴していた。
 最高裁大法廷で寺田逸郎長官は、昨夏の参院選挙無効訴訟について、一言「棄却」と言い放った。その理由は「違憲の問題が生じるほどの著しい不平等状態にあったとはいえない」として参議院選挙を「合憲」と判断した。
 その時思ったことは、「最高裁での判決は理由を入れてもたった5分。最高裁は一人一票という人間の尊厳的な絶対的価値を認めず、一人0.3票という格差を合憲とした。最高裁も行政、立法の劣化と同様、国民の思いと違う反知性的な方向に向かっている。」であった。

山谷賢量さんとのやり取り
 私が傍聴での思いをFacebookに綴るとさっそく一人一票実現国民会議運営委員の山谷さんからMessengerにこんなコメントが入る。
 「合憲判決を出すんじゃないか」。本年7月の口頭弁論終了を終えて間もないころ、升永弁護士がふと漏らしていた悪しき予想が不幸にも的中してしまった。一票の価値が0.3人分しかない有権者がいるのに格差は縮小しているとして合憲判決を出したことは、これまでの流れに逆行する時代錯誤なものだ。大法廷判決の大きな問題点の一つはこれまでの判決が「都道府県を選挙区の単位としなければならない憲法上の要請はない」としてきた都道府県について「都道府県という単位を用いること自体を不合理なものとして許されないとしたものではない」として明確な根拠なしに判例を変えて容認したことだ。この点については、最高裁の多数意見に従わず「違憲違法」の判断をした鬼丸かおる判事の意見が正しいだろう。鬼丸判事は「国会が有した政策目的ないし理由は、都道府県を選挙区の基本とすることであり、その基本を損なうことを最小限にとどめることにあったとみることができる」と述べている。多数意見は立法府の意図が分かっていながら、意図的に二つの合区を評価し、人口比例の一人一票の流れを「逆転」「後退」させたとんでもない判断だ。

二重の意味での後退判決
 今回の判決は率直に言ってこれまでに一人一票訴訟の流れに逆行する後退判決という印象を否めない。
 最高裁は、かつて5倍以上もあった一票の価値、重みの違いの縮小に努めてきた。これまでの判断で、衆院では2倍程度まで格差が是正されているのに、なぜ参院は3倍以上でも合憲なのか。平成24年10月の参院議員選挙に関する大法廷判決では「参議院選挙であること自体から、直ちに投票価値の平等の要請が後退してよいと解すべき理由は見出し難い」と判示していた。この判断にも反する。二重の意味での後退判決ではないか。寺田最高裁長官は「次回の選挙に向けて抜本的な見直しを検討して必ず結論を得る」と指摘したという。立法府が対等な一票の価値実現へ向けて、抜本的な見直しをしたことなどいまだかって一度もない。それを十分に織り込み済みなのに、何度も虚仮にされてもなお最高裁は自らが独立かつ厳格に判断することを避けて立法府に期待をかけ続ける。その裏にあるのは、最高裁判事等の人事に行政府から介入されるのを嫌う保身のための作為的な行為としか思えない。統治の根幹に関する事柄については触れない、判断を避けるという司法の致命的な病状をまたさらけ出したともいえよう。

山谷さんの怒り
 見落としてはいけないのは、最高裁が逃げ続けている間、毀損されているのは有権者一人一人の参政権としての一票の価値だ。最高裁が「違憲違法」ないし「違憲無効」判決を出さない限り、国会議員の議席を既得権としている立法府が一人一票の実現へ向けて抜本的な是正に取り組むことはないだろう。立法府が有権者の住んでいる地域によって一人一票の価値に優劣をつけ続けることは許されない。国会にそんな権限はない。
 一人一票を実現して国政に正しく民意を反映しようとする考えがない最高裁の判断は、自ら司法の独立を損ね三権分立を否定する判断だ。自殺行為にも等しい、と言っても過言ではないだろう。
 このままでは10月の総選挙後、違憲状態議員を含む国会が憲法改正の国会発議を行うという憲法が想定していない異常極まる事態を止めようがなくなりかねない。
 私は山谷さんとMessengerで何度も意見を交換し山谷さんのこの判決の思いは私と同じでここに紹介させていただいた。

最後に
 一人一票の価値が国民に担保されて日本は絶対的平等からみて真の民主主義国家と言える。違憲状態で選出された違憲状態国会議員が違憲状態首相を指名し、その違憲状態首相は多数決の横暴を繰り返し反知性的な政治を行っている。それを真正面から是正できるのはもちろん国民であるが、国民に代わって理性的、論理的にできるのは司法である。その司法の頂点に立つ最高裁が是正せずに時の政府、国会におもねって国民不在の判決を出す昨今である。ここから直さなければいけないが国民には国民審査しかない。今回の衆議院選挙時に国民審査を受ける最高裁判事に「否」を書こうではないか。
 
平和とは 一人一票 草の花

 こんな俳句をつくった。「草の花」という季語をつかった。秋は野に、山に、家の庭に千々の花が咲き競う。秋の七草など秋を代表する花から名の知れぬ花まで一斉に咲く。私はそんな花を日本の国民一人一人に投影した。日本人は平和を愛し戦争のできる国になることを望んでいない。日本人は一人一票ある価値を住む地域で差別されてはいけないのである。
一人一票実現国民会議

◆奥山貞三(おくやま ていぞう)さんのプロフィール

昭和51年4月東レ株式会社入社。
平成24年6月(一社)日韓経済協会。
平成27年1月〜 (一社)モンゴルに日本式高専を作る支援の会。
平成28年2月〜 一人一票実現国民会議運営委員。







 
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