• HOME
  • 今週の一言
  • 浦部法穂の憲法雑記帳
  • 憲法関連論文・書籍情報
  • シネマde憲法
  • 憲法をめぐる動向
  • 事務局からのご案内
  • 研究所紹介
  • 賛助会員募集
  • プライバシーポリシー
シネマde憲法

映画『地の塩』(原題:SALT OF THE EARTH)

 花崎哲さん(憲法を考える映画の会)


JPG

 1954年制作のアメリカ映画です。ニューメキシコの鉱山労働者のストライキを描いた「労働運動の不朽の名作」と呼ばれる映画ですが、日本では1997年に労音会館で上映されて以降ほとんど公開されることはありませんでした。映画の指摘するものは、労働運動にとどまらず、人種差別問題やジェンダー問題など70年近くたった今日でも変わらない新たな問題が提起されていて驚かされます。

【映画のあらすじ】
 鉱山労働者たちのストライキの様子を、様々な差別問題を散りばめて描かれた社会派ドラマ。
 ニューメキシコのとある鉱山で、不等な差別を受けながら働いていた労働組合幹部ラモンを含むメキシコ系労働者たち。ある日、彼らの仲間が爆破作業の際、巻き込まれ犠牲になった。
 この事件をきっかけにストに突入する労働者。だが法律によりピケを張ることを禁止され、代わりに彼らの妻たちが運動を継続しようと立ち上がるのだが……。(「allcinema」『地の塩』より)

 監督ハーバート・ビーバーマンは、戦後のレッドパージで(左翼映画人として)映画制作の現場を追われた「ハリウッド・テン」のひとりです。彼は、この『地の塩』の制作によって完全に映画界から追放されたと言われています。

 この映画が描いているのは、組合活動、労働者の権利行使であるストライキですが、それに対する弾圧の苛酷さを訴えるだけでなく、運動内部のジェンダーの問題、人種差別の問題などが深められていきます。組合幹部の労働者の妻の目からストライキを捉えることによって、彼女が運動をどう見ていき、その問題を捉え、意識を変えていったかを追っていきます。それは女性たちが自立し、自分たちで考え、行動するようになる自己獲得の過程でもあり、またそのことを通して、男たちの意識も変わり、共に闘うということを自覚していく過程でもあります。
 
 運動内部のジェンダーの問題。映画の中で、はじめ男たちは「俺たちがシゴトをしているんだ、だから口をはさむな」「女たちは家のことをやってれば良い」といった男尊女卑の気分をぷんぷんとさせています。それが男たちだけの「闘い」ではどうにもならなくなったときに、女たちがしぶとく、粘り強く「闘い」に参加し、新しい闘いの形をつくっていくことで道が開けていきます。その中で女たちも成長し、強くなり、それを男たちも見直し、意識を変えていくストーリーです。それぞれが運動と自分たちの中にある問題を見つめていきます。
 それも女たちが優れていた、とか、女たちの方が強かった、正しかったといったどちらかの味方をして、というような話のつくりではなく、むしろ、女たちが迷い、混乱したり、後ずさりしたりもしながら、自分たちの「闘い」をつかんでいく、共闘していく気持をつくっていくところにすがすがしさがあるのだと思います。
 その他にも、映画を見ていく中で「差別とは何か」「仕事とは何か」「働くとはどういうことなのか」と、いろいろ考えなければならないと思うことが浮かんできます。古い、古い映画ではありますが、今の問題、今の自分の問題を考えさせられる映画です。

 私は、この映画を上映する映画会のテーマを「『一緒に闘う』とはどういうことなのか?」というところにおきたいと思いました。それは、一つ前の「憲法を考える映画の会」上映会の作品タイトル『沖縄と本土 一緒に闘う』とのつながりでもありました。その作品は確かに「一緒に闘う」とはどういうことかを問いかけてくる作品でした。今私たちの前にあるたくさんの問題、それぞれの問題を知る、理解するというだけでなく、そこから始めて「一緒に闘う」には何が必要なのかを考えていきたいのです。それは「どう自分の問題として捉えられるか」というところにその答えがあるのではないかと思っています。

 私たち憲法を考える映画の会ではこの映画をレイバーネット日本の協賛を得て、次回11月3日の映画会のプログラムにしました。さらに11月23日の勤労感謝の日には、先の「自主制作上映映画見本市#4」で上映した映画『人らしく生きよう 国労冬物語』を特別上映会として上映し、二つの上映会を「勤労・労働月間」として連続上映会にしようと企画しました。
 憲法の「勤労の権利と義務」(第27条)、「労働者の団結権」(第28条)について見直し、自分たちのものとして捉える憲法を考える機会としていきたいと思います。

【スタッフ】
監督:ハーバート・J・バイバーマン
製作:ポール・ジャリコ ソニア・ダール アドルフォ・バレラ
脚本:マイケル・ウィルソン
音楽: ソル・カプラン
製作:I.P.C. 鉱山興行精錬労働組合
配給:映画「地の塩」全国普及委員会 
日本語版製作:ビデオプレス
1954年制作/97分/アメリカ映画

【キャスト】
ホアン・シャコン(ラモン)
ロザウラ・レヴエルタス(エスペランサ)
ウィル・ギア(保安官)
メルヴィン・ウィリアムズ(親方)

【上映情報】
第57回憲法を考える映画の会(11月3日)で上映予定。
日時:2020年11月3日(火・休)13時30分〜16時30分
会場:文京区民センター3A会議室
映画上映(97分)の後、トークシェア予定
参加費:1000円 学生・若者500円

●コロナ感染予防にご協力ください(マスク・消毒)
 会場の席数が制限(95席)されていますので参加希望の方は事前に下記連絡先にご連絡ください。感染状況の拡大などによって中止、延期になる場合があります。

TEL&FAX:042-406-0502  
E-mail:hanasaki33@me.com

なおこの映画の上映会企画の場合は、
ビデオプレス(TEL:03-3530-8588 〒173−0036板橋区向原2−22−17−108 
E-mail:labor-staff@labornetjp.org)にご連絡ください。
上映料10000円

(個人鑑賞用DVD販売価格3000円)



バックナンバー
バックナンバー

〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町17-5
TEL:03-5489-2153 Mail:info@jicl.jp
Copyright© Japan Institute of Constitutional Law. All rights reserved.
プライバシーポリシー