映画『沖縄と本土 一緒に闘う』
「バトンを受け取ってください。一緒にがんばっていきましょう。みなさんが立たされているところで声をあげていく行動を起こしていくことが大事なんです。みなさんが立っているところで声をあげれば変わるんです。共有しながら闘っていきましょう。」
米軍ヘリコプターの部品と思われるものが落下した沖縄県宜野湾市の保育園。その保護者たちとともに、政府に対応を迫るために上京した時に、園長さんが集会の参加者に呼びかけた言葉です。
「一緒に闘う」のは、「わたしとあなたが一緒に闘う」ということです。何を、どう闘うのか、一人一人が考えて、自分に問うて、それぞれに闘うということなのではないでないか。この問いかけが、映画全体に、静かに、しかし熱を込めて問われ続けます。
【作品解説】
軍備拡張を続ける日本政府 2017年12月7日、沖縄県宜野湾市の緑ヶ丘保育園の屋根の上に、 米軍ヘリの部品と思われるものが落下した。その数日後には、 近くの普天間第二小学校の校庭に米軍ヘリの窓枠が落下した。
一方、名護市辺野古では、2018年12月土砂の埋めたて工事が始まった。
同じ年の9月には辺野古新基地建設に反対を表明している玉城デニーさんが、 沖縄県知事に選ばれた矢先のできごとである。
沖縄では、声をあげ続ける沖縄県民の多くは、米軍基地の拡張を望んでいない。 そのことは、各所で証明されてきているにもかかわらず、その声は一方的に無視され続けてきた。
であれば、これからどうやって住民は生きて行けばいいのか。
その難問に答えを出すかのように動き始めたのが、「辺野古」県民投票運動である。
南西諸島で急速に進められている、自衛隊の基地建設。2019年3月には沖縄県宮古島、 鹿児島県奄美大島で同時に陸上自衛隊ミサイル基地が開所した。そして基地のない石垣島でもミサイル基地建設が始まった。工事開始時期は、カンムリワシの営巣時期に重なった。
それでも防衛省は工事に踏み切った。
その過程で、石垣島でも平得大俣への自衛隊ミサイル基地建設の是非を問う住民投票運動が始まっていた。
軍事面で沖縄化する本土 米どころ秋田で、沖縄と同じことが始まろうとしていた。
2017年12月、政府はレーダーとミサイル発射装置を兼ね備えた迎撃ミサイルシステム、 イージスアショアの導入を閣議決定した。しかし、その後の国政選挙に県民の反対の声が 反映した。(映画『沖縄と本土 一緒に闘う』案内チラシより)
この作品を、企画、撮影、監督、編集、つまり制作の大部分を一人でやり遂げた湯本雅典監督は、これまでも、選挙や沖縄の基地反対運動の現場の中で、活動する市民にインタビューする形でいくつものドキュメンタリー映画を作っています。(『沖縄から叫ぶ 戦争の時代』シネマDE憲法 2019年1月28日)
今回の湯本監督の制作のスタンスは、とくに「(たくさんの人に、ということでなく)人の話を聞く」、それもじっくり話を聞くという所に力が入っているように思います。話を聞く画の作り方が落ち着いていて、腰を据えている感じがします。また意図して、小刻みな編集はしていないようです。
集会で話している途中、言葉を失ってしまった話し手が何人もいます。そのたびに聴衆から「がんばれー」の声がかかります。その声に泣き笑いの表情の話者。話し手の切実さと共に聞き手の私たちとの一体感がじわっ、と感じられてきます。
「偉い人」、話の上手な人、「プロの政治家」なんかより、切実に問題を感じている人、問題を抱えている人の話が、どんなにか共感、共鳴できるか、感じさせてくれます。
おもしろい話でなくていいんだ、話をおもしろくしなくていいんだ、受ける話でなくていいんだ。きちんと気持が伝わる話であれば、聞いている人が自分のことだと思えることができる話であればいい。そうした共感を求める姿勢は、きっと湯本さんの映画を作る姿勢そのものなのでしょう。
私たちは、映画会を企画する時、いつも「どうやったら関心をもたない人に、考えてもらうことができるのか」を考えてきました。湯本さんの映画も、「まず、知ることから、次に知ったことから考えること、そして自分に問うこと」へとたどってきたように思います。
ごくふつうの人が、「何とかしなくては」と動き出すきっかけになる切実なもの、のっぴきならないもの、それをどのようにして自分のものと想像することができるのか、日々脅かされている「沖縄の人」の問題が、特殊でなく、私たち自身の不安であるし、私たちが置かれているものであると想像、実感できること。またそうしたものに対して、どうしてったら良いかひとつひとつ考えていくこと、それは湯本さん自身のテーマであるし、モチベーションになっている、めざす活動そのものであると思います。自分たちがやってきた映画と話し合いの会そのものです。
湯本さんからDVDが送られてきた封筒に、次のようなチラシが同封されていました。
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「沖縄と本土 一緒に闘う」上映屋運動 こちらから上映に伺います!
〇 機材(プロジェクタースピーカーDVDデッキ)はこちらで用意します。スクリーン(模造紙でいいです)だけご用意ください。
〇 2人以上集まれば、どこでも伺います。
〇 講演もします。今年も第3部(石垣島)制作のために沖縄に通っています。ホットな沖縄の基地情勢をお伝えします。
〇 交通費だけご用意ください。謝礼は要りません。
コロナ禍のおかげで、上映運動がほとんどできていません。しかし、コロナがあろうがなかろうが、基地は通常通り機能しています。夜中でも軍用機が、ブンブン飛んでいるのです。また基地建設も「緊急事態宣言」が出ても続けられました。
そこで考えついたのが「上映屋運動」です。
大きな集会でなくてもいいんです。できる空間があれば、どこへでも伺いますのでお声をおかけください。
連絡先:yumo@estate.ocn.ne.jp
TEL:090-6039-6748
湯本雅典
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私たちもこの映画を上映して、一緒に闘うとは、一人一人がどうすることか考え、話し合って行きたいと思っています。
『沖縄と本土 一緒に闘う』
【制作スタッフ】
監督・企画・撮影・編集:湯本雅典
ナレーター:名川伸子
挿入曲:ハルサーズ「僕らのまち」「ヌンディドゥナン」
エンディングテーマ:多田弘一 KANNAGARA PROJECT「僕の歌」
DVDジャケット・フライヤーデザイン:橋本真紀子
2020年制作/60分/ドキュメンタリー映画
■予告編 『沖縄と本土 一緒に闘う』(予告編)
■湯本雅典・公式サイト
作品DVD(2000円+送料210円) の購入もこちらから
■上映情報
第8回 憲法を考えるちいさな映画の会(試写会)のご案内
と き:2020年7月25日(土)13:30〜16:30
ところ:文京区民センター 3A会議室(地下鉄春日駅・後楽園駅/JR水道橋駅)
上映作品:TVドキュメンタリー番組『ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~』(45分)映画『沖縄と本土 一緒に闘う』(60分)
参加費:無料(会場費として500円希望)
※ コロナ感染対策から会場席を95席に絞っての予約制とします。感染状況の広がりによっては中止、延期もありますので、必ずご連絡ください。
※ 予約連絡先(憲法を考える映画の会・花崎
TEL:042-406-0502
Email:hanasaki33@me.com )