この映画の製作、演出をした都鳥拓也さんと都鳥伸也さんのドキュメンタリー映画第一作は、『OKINAWA1965』でした。その映画は、沖縄の歴史、問題をまったく知らなかった若者、つまり三十代の作者たちが、沖縄を訪ね、米軍統治下の沖縄について聞いて歩き、沖縄の現実について知っていく過程を軸として作られています。
その続編として作られた今回の映画は、現在(2018年)の沖縄で活動している若い世代を訪ね、若い世代の視点から、現在の沖縄、これからの沖縄を尋ねようとしたものです。
「島で育った若者たちが見た『今の沖縄』と『これからの沖縄』」です。
〈ストーリー〉
2019年に沖縄で行なわれた、辺野古新基地建設の賛否を問う「県民投票」で沖縄の人々が基地建設に明確に「NO」を突き付け、沖縄に希望を与えたことは記憶に新しい。
この映画ではその原動力となった元山仁士郎さんの活動や、村議会議員に立候補した3児の母・城間真弓さんの奮闘、戦争で激戦地となった伊江島で育った高校生の中川友希さんが沖縄の過去と向き合おうとする姿を通し、未来を担う沖縄の若者たちが自分たちの視点で基地問題について考え、行動する姿を追った。その軌跡は「今の沖縄」と「これからの沖縄」を知る手がかりになるはずだ。
製作したのは、沖縄の基地問題の歴史を描き、好評を博した『OKINAWA1965』の都鳥拓也・都鳥伸也。故郷・岩手県北上市を拠点に活動する双子の兄弟である。37歳の彼らは今作では徹底して沖縄の現在と未来の当事者である島の若者の視点に立ち、彼らの本音と若者らしい等身大の姿を描きだす。
これは、戦後から脈々と基地問題を受け継いできた大人たちから、その想いを自分たちなりの感性で継承しようとする若者たちの記録である。(映画『私たちの生まれた島』公式ホームページより)
第1作から第2作へ。作者のこだわりは若者の視点、若者から見た沖縄です。
私たちの憲法を問題にした「映画の会」でも、参加者は年配の人がきわめて多く、「若い人が来ないね」「どうしたら若い人が来るのだろう」ということがよく話題になります。憲法や戦争のことを、どうこれからの若い人たちに伝えることができるのか。伝えていかなくてはならない。私は、それは考えなければならないことではあるけれども、そのことこそ課題だと問題にする人とはちょっと違った考えでいます。
この映画でもその活動を紹介されている元山仁士郎さんの話を、明治大学で開かれたシンポジウムで聞いたことがあります。その時、参加者の年配の方が、「若い人たちとどうやって(活動を)一緒にやっていくことができるのか」との質問がありました。その時の元山さんの答え。「あなたがたは、あなたがたの世代でやってください。私たちは私たちの世代でやっていきますから」というものでした。
ちょっと切り捨てたような言い方ですが、彼の答えは、私はけっこう腑に落ちました。世代を超えてどうやって一緒にできるか、を言う前に、まず、いま自分がどうしようとして、どう動こうとしているのから考えていくべきだということと思います。
この映画の中で印象に残ったシーンがいくつかあります。
なかでも、伊江島で育った高校生の中川友希さんが、友達と再び伊江島を訪ね、阿久根昌鴻さんが創設した「わびあいの里」で、わびあいの里を守っている謝花悦子さんの話を聞くところがあります。謝花さんは、阿久根さんの言葉「平和の最大の敵は無関心である」「過去を忘れたものはもう一度戦争を繰り返す」を話します。
高校生の中川さんたちの中に、謝花さんが語る言葉が沁みていく、そんな実感がありました。そしてそこから、若い人たちの中に、その後の自分の感じ方、考え方、これからに向けての何かが生まれていく実感がありました。
この映画は、そうした若い人たちが動いていくことを通して、実感を得ていく、それを追い続けていると思いました。
【スタッフ】
監督:都鳥伸也
企画・製作:都鳥伸也 都鳥拓也
取材ディレクター:山内昌信
取材コーディネーター:吉田尚子
撮影:都鳥拓也 都鳥伸也 與那良則 城間克彦
空今泉真也
現場録音:藤崎仁志
整音:若林大介
編集:都鳥拓也
ナレーター:小林タカ鹿
助監督:藤崎仁志
【出演者】
元山仁士郎(沖縄県民投票に向けて)
城間真弓(保育士の仕事の傍ら反対運動に家族で参加するようになった3児の母)
豊里友行(報道されない沖縄の現実を切り取る)
中川友希(戦争の激戦地伊江島で育った高校生、沖縄の過去と向き合う)
2019年制作/144分/日本映画/ドキュメンタリー
公式ホームページ
予告編
【上映情報】
2020年9月4日(金)〜 渋谷アップリンク
2020年10月上旬 ヨコハマシネマリン
4月17日(金)からアップリンク渋谷で上映を予定しておりました『私たちが生まれた島』ですが、劇場側との話し合いの結果、新型コロナウィルスの感染拡大の状況を鑑み、上映の延期を決断いたしました。振替実施の日程につきましては、9月4日(金)公開を予定しております。
あわせまして、5月23日(土)より予定しておりました横浜シネマリンでの上映は10月上旬に延期となる予定です。