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シネマde憲法
映画『i―新聞記者ドキュメント―』
 花崎哲さん(憲法を考える映画の会)


 森達也という作家が、望月衣塑子という希有な材料を得て描いた今の日本の政治とメディアのドキュメンタリーということでしょうか。そして、そこに描かれているのは、わたしたちが今生きているこの社会そのものかもしれません。

 撮影の開始が2018年12月。映画を見ていくと、走馬燈のようにと言うか、悪夢のような安倍政権のやってきた悪辣な悪だくみに憤慨したことが次々と想い出されます。
 辺野古新基地建設、埋め立て土壌「赤土」疑惑─。伊藤詩織さん、元TBSワシントン支局長による準強姦事件もみ消し(不逮捕)疑惑─。森友学園国有地払い下げ問題、改竄事件─。加計学園大学認可問題、安倍首相の便宜供与疑惑─。宮古島基地新設、弾薬庫隠蔽─。参議院議員選挙首相街頭演説反対ヤジ取り締まりの異様さ─。
 そして2019年7月のこの映画の撮影終了後に起きたあいちトリエンナーレ「表現の不自由・その後」中止事件。文化庁補助金不交付の横暴─。KAWASAKIしんゆり映画祭映画『主戦場』上映中止問題、川崎市への圧力─。映画『宮本から君へ』の助成金不交付問題。そして「桜を見る会」安倍後援会員無制限招待、公職選挙法違反疑い……
 どれもこれも安倍政権がらみの偽造、捏造、改竄、隠蔽の疑惑です。この1年足らずの間にこんなに疑惑があって、どれ一つとして真相が明らかにされていない。
 そうした画面を次々見せられると、それらがどんどんどんどん過去の記憶、時間の「地層」の間に埋没していってしまっていっていることに気がつきます。
 「今の日本人は、それほど今、次々と起きている事件を理解せず、すぐ忘れて、だまされる」という言葉が映画の中にも出てきます。それを許している、そうした風潮をつくっている今のメディアの責任を、望月衣塑子という一記者の行動を追いながら森達也監督は問い続けます。

 そしてそれはこのドキュメンタリーの中で森監督自身にも問われるものになります。
 望月記者のパワフルな行動を追いかける中で、森監督自身も声を上げ、ぶつかっていかざるを得なくなります。とにかく現場に足を運ぶこと、たとえば彼自身が「官邸の記者会見に入れないか」と行動を始めるところになどにそれらが表れています。それは「ジャーナリストとして」という前に、当事者として、個人として追い立てられるものがあるのでしょう。そのあたりにこのドキュメンタリーの同時性と当時者性、作家のアイデンティティーが示され、森達也のドキュメンタリーになっているのでしょう。

 安倍政権、安倍首相やその閣僚たちが、国会でまともに質問に答えず、答えられずはぐらかし、隠し、ごまかし続けてきた姿勢が、望月さんの質問に対する菅官房長官の表情に表れています。誠意とか誠実とかいうものがまったく感じられない人が、国家の政治の中枢に陣取って7年になります。彼らは質問する記者の後ろに耳を傾けている国民が見えません。自分たちに不都合な質問をどうかわすかということだけに終始しています。

 この映画もいつまでも上映され続けられる、上映できる映画であってほしいと思います。また自分たちもそうした上映、拡げていくことを通じて当事者として加わっていきたいと思います。
 「現在のメディア情況の中、あるいは私たちが生きているこの社会において、なぜ彼女が際立って異質に見えてしまうのか。それこそリベラルと保守、右と左という立場など関係なく、その理由について考え悩むことで見えてくる景色がきっとある。僕はそう思っています。」(森達也インタビュー「i新聞記者ドキュメント」パンフレットより)同感です!。

【スタッフ】
監督:森達也
企画・製作・エグゼクティヴプロデューサー:河村光庸
プロデューサー:飯田雅裕 石山成人
アソシエイトプロデューサー:塩沢葉子 上尾歩
監督補:小松原茂幸
撮影:小松原茂幸 森達也
編集:鈴尾啓太
音楽:MARTIN
出演:望月衣塑子
製作・配給:スターサンズ
2019年製作/日本映画/113分/ドキュメンタリー

公式ホームページ:https://i-shimbunkisha.jp/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=LAfwlVQH_jg&feature=emb_logo
上映情報:丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国一斉上映中
https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=ishinbun


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