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シネマde憲法
映画『ニジノキセキ ―「4.24」の未来へ、七色の架け橋 ─ 』
 花崎哲さん(憲法を考える映画の会)


 朝鮮学校を舞台にしたドキュメンタリーです。
 1948年に起きた在日コリアンの人たちの教育闘争、別な言い方をすれば在日の人たちへの差別と教育弾圧を軸に戦後の朝鮮学校をめぐる闘いが描かれています。

 在日コリアンのスタッフによる朝鮮学校を描いた映画としては、既に公開されている『アイたちの学校』(2018年)があります。少し前の作品でも『ウリハッキョ(朝鮮学校の意味)』(2006年韓国映画)、また『60万回のトライ』(2013年)という映画もあります。
 この『ニジノキセキ』の特徴は,「過去の事件や歴史を振り返る」ことに限らず、今の朝鮮学校の姿、そしてその未来を考えさせようとしているところにあるかと思います。とくに学校での子供たちの姿をほほえましくとらえたところやラストの高校生たちのダンスの描き方などは、ドキュメンタリーと言うよりプロモーションビデオかミュージックビデオのように明るく、弾んでいます。少しでも多くの人に,今の朝鮮学校の明るさ、確かさを知ってほしいという気持ちがあふれています。それはまた今の、そして未来の朝鮮学校に学ぶ子ども達にも歴史と自分たちが抱えてきた問題を知ってほしいという気持ちなのだと思います。そこに朝鮮学校出身の若い製作スタッフ、彼ら、彼女ら、の一所懸命さが伝わってきます。

 しかしながらそうした熱意の底には、今の朝鮮学校を取り巻く危機感があります。朝鮮学校ができて70年、たとえば朝鮮学校の学生が少なくなっているのは現実の課題です。文部科学省の「高校無償化」の政策からもずっと意図的にはずされてきました。学校の経営は困難を極めています。ヘイトスピーチや右翼の襲撃によって、子供たちの気持ちは傷つけられ続けています。そうした分断と差別は戦後70年経った今も変わっていないばかりか、ますますひどいものになっています。
 だからこそ、そうした困難にも耐えて、励まし合って朝鮮学校を守り育ててきた親たち、教師、先輩たちの歩んできた道とそこでの思いを捉えなおしたかったに違いありません。そして、そうした差別、分断の歴史とそれが今も続いていることを何も知らないでいる、
知ろうともしないでいる多くの日本人にも、この映画を見て、その現実を理解、認識してもらいたいという気持ちがあると思います。この現実を変えていくために。

 私たちはこの映画を次の映画会のプログラムに選びました。
 最悪ともいえる日韓関係(それも安倍政権がその歴史修正主義から過去の侵略を認めたくないということから意図的に作り出したものと私は認識していますが)、また南北首脳会談、米朝協議などいま、隣国朝鮮半島で起きている時代の動きに対して、一人背を向けようとしている日本政府、その浅ましさ。そうした今の情況をどう考えるか、この朝鮮学校の子供たちを描いた映画をみて、とくに「教育」という面から考えて、私たち自身のいまの姿を映す鏡としてもう一度見つめ直したいと思ったのです。

 小学生くらいの子供たちが、教室で米朝会談か南北会談を映し出すテレビの画面を見て歓声を上げる場面が短くあります。日本の子供たちは,若者たちはこうしたニュースにどれほどの関心を寄せているでしょう。そこに在日コリアンの人たちの政治への切実さと意識の高さを感じました。こうした平和をこころから願う子供たちが増えて、世界全体の平和に近づくことを実感とします。そのための憲法であり、教育です。

【スタッフ】
プロデューサー:趙寿來(チョウ・スレ)
監督:金功哲(キム・コンチョル)  朴英二(パク・ヨンイ)
撮影:朴英二 チョ・ヨンチェル 伊志守 チェ・アラム 黄恵哲 康沈哲 金大翔
エグゼクティブ・ディレクター:趙源模(チョウ・ウォンモ)
音楽:千守日 
スクリプト:楊琴女
日本語翻訳:金輝栄、金明花、李昂樹、金人済,朴志陽
主題歌:「青い空 青い海 青い輝き」 
挿入歌:「from tears」金嬉仙
デザイン:ホ サンホ タイトル&コピー:李英哲
製作:「ニジノキセキ」製作委員会(李京泰、朴晶久、鄭王雄、安徹洙、李帝熙、柳順啓、崔秀英、朴東赫、呉淑明、李京勲、 朴勇黙、金麗華、金翔賢、金大翔)

【出演】
金紗梨(キム・サリ)
張鐵柱(チャン・チョルチュ)
具正一 崔鳳植 姜春子 金錫孝 呉亨鎮 金聖淑 張一成 李琴鈴 呉圭祥 金陽昇 鄭栄桓 杉山清一 長谷川一夫
2019年/日本映画/80分
公式サイト:https://www.nijinokiseki424.com/
予告編:https://www.youtube.com/watch?v=26UQPJIVa1E

【上映案内】
「第53回憲法を考える映画の会」で上映
日時:10月26日(土)13:30〜16:30
会場:文京区民センター3A会議室
作品の紹介と上映案内:http://kenpou-eiga.com/?p=2441



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