12月1日から始まる「東京ドキュメンタリー映画祭2018」の作品から紹介させていただきます。今年が第1回目で、これからも募集を続け、映画祭を続けていかれるそうです。いろいろなドキュメンタリー映画があることを知る機会に、またここにある映画を辿っていくと自分たちでも上映していける映画があるということがわかってうれしい限りです。
長編作品、招待作品、特別作品の作品解説を紹介しましたが、短編作品及び上映スケジュールの詳細は「東京ドキュメンタリー映画祭」ホームページをご覧ください。
以下は「東京ドキュメンタリー映画祭とは」の記事より映画祭の趣旨です。
いまドキュメンタリー映画のつくり手と観客は、ブームといえるほど増えています。
日本国内では、映像表現を教える大学や専門学校は増加傾向にあり、1年間に劇場公開されるドキュメンタリー映画は100本を超えるといわれています。またYouTubeをはじめ、ネットの世界でも若い作り手を中心にドキュメンタリーの動画配信および製作は活況を呈しています。
しかしドキュメンタリー作品を上映し、作家や作品が評価される場は絶対的に不足しています。テレビの優れたドキュメンタリー番組もローカルや衛星放送で数回放送されるのみ、というケースが少なくありません。
本映画祭は、映画・テレビ・ネット動画の垣根をこえて、国内で撮られたドキュメンタリー作品が一堂に会する場を創出します。魅力的な作品に出会い、監督たちと対話し、次の年はひとり一人の市民がつくり手として、この映画祭にもどってきて下さることを期待しております!
金子遊(「東京ドキュメンタリー映画祭」プログラム・ディレクター)
と き:2018年12月1日(土)〜12月14日(金)毎日10:00(一部9:45)?、19:00?
ところ:新宿K's Cinema (〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目35-13 3F)
プログラム:1日2回上映、計28プログラム
「長編コンペティション部門」10プログラム 「短篇コンペンティション部門」9プログラム
「招待作品・プログラム」3プログラム 「特別作品・プログラム」6プログラム
【前売】 1回券=1,300円 3回券=3,300円(複数人使用可・期間中も販売)
【当日】 一般=1,500円均一 シニア=1,000円
プログラムと作品解説:
12月1日(土)
10:00 招待作品1「次は<水俣>にチャレンジ!『MINAMATA NOW!』」
国と熊本県の責任を認めた関西訴訟最高裁判決の2004年10月15日にクランクインして以来、10年以上を経た今も撮影中のドキュメンタリー。棄却された死亡患者の遺族が認定を求めた溝口裁判、高齢化が進む胎児性水俣病患者らの日常。さらに自らダイビングのライセンスを取得し、メチル水銀が鉄板と石で封じ込められた水俣湾の海中を撮影。
土本典昭監督の水俣シリーズが「昭和の水俣」を写し得たとしたら、本作は「平成の、終らない水俣」に挑む。水俣病事件をめぐる人びとの複雑な人間関係に悩まされながらも取材を続ける。
2016年/カラー/日本映画 ※縮小版 原一男 監督
19:00 長編作品1「破天荒ボクサー」
「大阪帝拳」に所属していたボクサーの山口賢一は、11連勝を果たすもタイトルマッチを組んでもらえなかった。業を煮やして、
JBC(日本ボクシングコミッション)に引退届けを提出。闘いの舞台を海外に移し、非公認の団体でスーパーバンタム級暫定王者となる。
海外で経験を積むうちに、日本のボクシング界の寡占状態に疑問を抱くようになった山口は、世界タイトルマッチに再挑戦するため、リングの内と外の両方で熾烈な闘いを強いられる…。近年、問題が取り沙汰されるボクシング協会の内側に切りこんだ、社会派のボクシング映画。2017年/115分/カラー/日本映画 武田倫和 監督
12月2日(日)
9:45 長編作品2「辺野古抄」
米軍基地の移設問題に関するニュースで度々見聞きする「辺野古」という地名。監督は大学を休学して1年間辺野古に住みこみ、住民の生活を丹念に撮影していった。すると、そこには当然ながら、農作業や仕事に従事する人、長寿を祝う民俗行事、米兵と地元民が一緒に祝う祭りなど「辺野古の日常」があった。私たちは無意識のうちに、辺野古=基地問題という単一の物語を押しつけていたのだ。
見逃されがちだった地元住民の生活を丹念に描き、メディアや国民の関心のあり方に疑問符を投げかける、斬新な視点をもったドキュメンタリー。
2018年/132分/カラー/日本映画 八島輝京 監督
19:00 短編作品1「記録なのか、フェイクなのか」
12月3日(月)
10:00 長編作品3「OKINAWA1965」
1965年、米軍占領下の沖縄。本土復帰を求める祖国復帰行進のさなか、報道写真家の嬉野京子さんによって1枚の写真が撮られた。幼い少女が無残にも米軍のトラックに轢殺された、当時の沖縄の縮図といえる写真だった。
本作は沖縄のガンジーこと阿波根昌鴻をはじめ、沖縄の祖国復帰運動や基地問題をさまざまな証言で浮き彫りにする。特にヴェトナム戦争で多くの人を殺したと告白する元海兵隊員が、沖縄で非暴力に目覚めていったエピソードは心に残る。辺野古の新基地建設断念とすべての米軍基地の廃止、そして平和な未来への願い…沖縄の戦後はまだ終わっていない。
2017年/95分/カラー/日本映画 都鳥伸也 監督
19:00 特別作品1「ドキュ・メメント」
「生身の人間が一番面白い」というコンセプトを掲げ、品川宿で開催されているドキュメンタリーの祭典「ドキュ・メメント」。取材対象者がライヴ登壇者になって、社会に向けて言葉を投げかける場を作っている。この特別プログラムでは、撮影現場の映像を見せながら、制作メンバーが社会とドキュメンタリーの関係性についてプレゼン。後半は「ドキュメンタリーのレントゲン図」を発明したデザイナーの SOMEONE'S GARDENを招聘し、作家/作品/撮影対象の「運命」を図解し、ドキュメンタリーとは何かを大解剖する。
プログラマー:松井至(BUG共同代表)
トーク出演(予定):内山直樹、松井至、竹岡寛俊、SOMEONE'S GARDEN
上映予定作品:『ドキュメメント2018総集編』、松井至『あなたがここにいてほしい』予告編、内山直樹『マッドレスラー』ほか。
12月4日(火)
10:00 特別作品2「ビデオアクト傑作選 強制不妊手術を問う」
『忘れてほしゅうない』上映時間24分
脳性マヒの佐々木千津子さんは、20才の時に卵巣に放射線照射され、不妊になった。「月経の始末が自分で出来ないものは入所出来ない」と入所先の施設に告げられ、否応なく手術を受けることになったのだ。30年以上たった今も忘れられず、精神的・肉体的な痛みや苦しみを抱えて生きている。
1996年まで存在した優生保護法の下、障害者やハンセン病患者に対して行われてきた強制不妊手術。映画は長い間隠されてきたこの事実を解明する活動をしながら、自立した生活を送る彼女の姿を追い、この問題の本質に迫っていく。テーマは重いが、佐々木さんの愉快な人柄に思わず頬がゆるみます。
2004年/24分/カラー/日本 制作:優生思想を問うネットワーク
『ここにおるんじゃけえ』 上映時間97分
2018年1月30日、旧優生保護法下で強制不妊手術を強いられた宮城県の60代女性が、国に1100万円の支払いを求める訴訟を仙台地裁に起こした。これを契機に提訴が相次ぎ、強制不妊手術の実態に、ようやく目が向けられようとしている。
『ここにおるんじゃけぇ』の主人公、佐々木千津子さんは、1990年代後半から積極的に強制不妊手術の実態を語ってきた。生後1週間で脳性マヒになり、20才の頃に強制不妊手術を受けさせられて以降、後遺症に悩みながらも、2013年に65歳で亡くなるまで、介助を受けながら奔放な生活を送ってきた。時々落ち込みながらも、行動したい、生きたいという強い意思を持って、介助者と的確にコミュニケートする佐々木さんの「ここにおる」日常を追ったドキュメンタリー。 2010年/97分/カラー/日本 制作:映像発信てれれ
19:00 短編作品2「未知の大陸アフリカ」
12月5日(水)
10:00 長編作品4「タリナイ」
1945年4月。ひとりの日本兵が戦地マーシャル諸島で命を落とした。栄養失調による飢えであった。亡くなる数時間前まで書かれた日記と遺言は戦後奇跡的に生き残った戦友から遺族のもとへ届けられた。
2016年4月。74歳になった息子はマーシャル在住歴のある若者3人とともに父が過ごした最期の地をめぐる旅に出た。今もなお戦跡とともに暮らす島のひとびと。マーシャル語の中に残る日本語。「タリナイ」が意味するもの。わたしたちが忘れようとしてきた記憶がさまざまなかかたちで問いかけてくる。
2018年/93分/カラー/日本 大川史織 監督
19:00 短編作品3「家族のかたち」
12月6日(木)
10:00 短編作品4「震災から7年 東北の祈り」
19:00 長編作品5「双子暦記(れっき)・私小説」
63歳にして双子の姉妹の父となった映画監督原將人。双子誕生を紀元とし、双子暦の世界に分入った原は、自ずと「新たなる宇宙と地球の歴史」を辿り直すことになり、21世紀を生きてゆく地球人、とりわけ日本人にとって必要な世界観が、<双子暦記>シリーズで展開される。本作では、古都京都を舞台に、双子を育てる生活費を稼ぐため、原が人生初めてのフリーター生活を送り、現代日本のブラックな労働現場を点々とした<苦難の旅>が、私小説、プロレタリア文学へ傾斜しながら描かれる。さらに、原が詠んだ八十首の和歌が、平安以来の日記文学の伝統と交差しながら全編を織り成す。新生児の映像に重ねられる、4歳になった姉妹による和歌の朗読は、運動イメージとしての映像から、テキストと音の厚みのなかで時間イメージを生成させ、至福の映画体験をもたらす。本作は、<メタフィクション>として、真にエポックメーキングなドキュメンタリーの最尖端をさぐる。
2018年/110分/カラー/日本 原將人 監督
12月7日(金)
10:00 長編作品6「抱く{HUG}」
2011年3月に起きた東日本大震災と福島の原発事故。以前から環境をテーマにドキュメンタリーを製作してきた監督は、事故直後に20キロ圏内に入り、大熊町の周辺を取材する。取材を継続している途中に、40歳にして自分自身が初めて妊娠していたことを知る。はたして胎児への放射性物質の影響は大丈夫なのか。放射能への不安のなかで、取材を続けるべきか立ち迷い、やがてカメラは母になる自分へ向けられていく。
妊娠と放射能汚染という、原発事故後の日本社会におけるタブーに切りこんだセルフ・ドキュメンタリーの問題作。
2016年/69分/カラー/日本 海南友子 監督
19:00 短編作品5「辺境に生きる子どもたち」
12月8日(土)
10:00 短編作品6「レディたちのブルース」
19:00 長編作品7「日常対話」
監督自身に娘が誕生したことをきっかけに、同じ家に住みながらも親子らしい会話のなかった母親と、映画製作の過程を通じて向き合う作品。元夫からのDV、自らのレズビアンというセクシュアリティ、社会からの抑圧…。母親、親族、彼女のかつての恋人、様々な知人へのインタビューを通じ、母親の苦悩と共に、監督との溝が浮き彫りとなっていく。人間の内面や、他者と関係を育むことの恐ろしいまでの複雑さを、セルフ・ドキュメンタリー的な自己言及と、母親に対する鋭い視線を織り交ぜ描写した、侯孝賢プロデュースの家族ドキュメンタリー。
2016年/88分/カラー/台湾/原題:日常對話 黄惠偵(ホアン・ホイチェン) 監督
12月9日(日)
9:45 「昭和の輝き 東京オリンピック」
『オリンピックを運ぶ』 上映時間43分
1964年に開催された東京オリンピックを輸送の視点から描いた作品。オリンピック委員会公認の記録映画。監督は野田眞吉、松本俊夫が協力演出として参加した。国立競技場、代々木の屋内プール、ヨット、ボート、競技用の馬など、競技に必要な資材等の輸送の様子をとらえる。華やかなオリンピックの舞台裏での、輸送労働者たちの労働の記録。
1964年/43分/カラー/日本
企画:日本通運株式会社 製作:輸送経済新聞社
監督:野田眞吉・松本俊夫 協力:日本通運株式会社・輸送経済新聞社・物流博物館
『あるマラソンランナーの記録』 上映時間63分
青年マラソンランナー君原健二の激しいトレーニングの記録。365日無休練習、強靭な意志とトレーニングの厳しさ。東京オリンピックを目指す1人の青年の精進が胸に迫る。
1964年/63分/カラー/日本
企画:富士写真フィルム 製作:東京シネマ
監督:黒木和雄 協力:東京シネマ新社
19:00 短編作品7「少女たちの闘い ?台湾・香港編」
12月10日(月)
10:10 特別作品3「中国インデペンデント映画の現在」
『ザ・デイズ3』 上映時間90分
中国・山東省出身で、現在は湖南省に住む映画監督・ウェイ・シャオボーは、自分とガールフレンドとの生活を2010年より撮り続け、これまで2本の作品を発表してきた。今回はその第3弾。2013から17年にかけて、ふたりの元に起こった事柄を撮影する。結婚したふたりは、やがて子供を作ろうとするが…いちど映画で観客の目に晒された1組の男女のさらに「その後」を記録する、究極のプライベート・ドキュメンタリー!
2017年/90分/カラー/中国 日本語字幕あり 監督・編集=魏曉波(ウェイ・シャオボー)
原題:生活而已3
19:00 招待作品2「映画になった男」
映画作家の原將人は、高校生のときに監督デビューして「天才映画少年」の名声をほしいままにした。それから50年。劇映画『あなたにゐてほしい』で多額の借金を背負った原は、起死回生の劇場公開を目指して35年ぶりの『初国知所之天皇』ライブ上映、CDアルバム制作などを試みる。だが、63歳で双子の父親になってしまい…。監督が8年の月日をかけ、幻の作品や生演奏付き上映など貴重なフッテージを交えて綴る、原將人のドキュメンタリー。映画にすべてを捧げた元・天才映画少年の、再起をかけた闘いがはじまる!
2018年/98分/カラー/日本 金子遊 監督
12月11日(火)
10:00 招待作品3「追悼田村正毅 三里塚 岩山に鉄塔ができた」
カメラマンの田村正毅さんが今年5月に永眠した。79歳だった。生前は名だたる劇映画の監督と組み話題作を連発したが、スタートはドキュメンタリーだった。 「三里塚」シリーズを始め、『ニッポン国 古屋敷村』『1000年刻みの日時計 牧野村物語』など、小川紳介監督と組んだ8本のドキュメンタリーは海外でも高い評価を得た。今回はその中の1本『三里塚 岩山に鉄塔が出来た』を上映し、田村正毅を追悼したい。
本作は、1972年冬、成田空港建設阻止の闘いで飛行を阻止するため、滑走路に立ちはだかる鉄塔をつくる経緯を描く。全国から結集したトビの人たちの全て人力による鉄塔建設。農民、学生のサポート。田村たちクルーは足場の揺らぐ60メートル余の鉄塔によじ登り、決死の撮影を敢行、大スペクタル映画となった。田村カメラマンの超絶の撮影術をとくとご覧あれ!
1972年/85分/モノクロ/日本
監督:小川紳介 撮影:田村正毅 製作:小川プロダクション
19:00 短編作品8「珍日本カルチャー紀行」
12月12日(水)
10:00 長編作品8「チャルカ・未来への糸車」
福島の原発事故以降、何十万年も毒性が消えない「核のゴミ」の処分方法を、国は決定できずにいる。高レベルの放射性廃棄物を地層処分する研究施設をもつ、北海道の幌延町。映画は、その近くで酪農を営む久世薫嗣(くぜ・しげつぐ)さん一家の生き方を紹介し、もう一つの研究施設がある岐阜県の東濃地域を取材する。そしてカメラは、世界初の地下処分施設を建設中のフィンランドのオンカロと、原子力大国フランスの処分計画地のビュール村を取材する。
処分地に生きる人々の生活と抵抗する姿を描きながら、人類が直面するエネルギーの課題について問いかける。
2016年/90分/カラー/日本 島田恵 監督
19:00 短編作品9「ドキュメンタリー表現の最前衛」
12月13日(木)
9:45 特別作品5「国境を越えるドッグ・ノマズ」短編選
『月と太陽と銃兵』 上映時間20分
のどかなスペイン国境の田舎町で、夜のとばりと共に人々の精神世界が開く。ヴィジョン・デュ・レールほかで上映。
2017年/20分/カラー/アルメニア・ポルトガル 原題:The Moon the Sun and the Musketeers
『パルス』 上映時間26分
シカ放牧場を舞台に、人間と動物・自然の関係を見つめる。鮮烈な映像と音響デザイン。DOKライプチヒ銀鳩賞ほか。
2015年/26分/カラー/ハンガリー 原題:Pulse
『ウィズ・オール・アワ・カメラズ』 上映時間26分
異国人が8ミリや写真やテープレコーダーを使ってハンガリー人カメラ商の肖像を描く。ロッテルダム国際映画祭ほか。
2016年/26分/カラー&モノクロ/スペイン・ハンガリー 原題:With All Our Camera
19:00 長編作品9「うつろいの木」
埼玉県川口市で行われた映画創作ワークショップ。一般の市民が公共スペースに集まり、監督や他の参加者とディスカッションを重ねながら、自分たちの手でシナリオを完成させていく。年齢も経験も異なる参加者には、人の数だけ物語への解釈があり、ときには言い争う場面もドキュメンタリー部は記録する。一方、フィクション部はそれぞれ高齢者、中年、若者の三組の男女を中心にした愛と生活をめぐるドラマである。
どこまでがフィクションで、どこまでがドキュメントなのか。映画は虚実の皮膜を何層も重ねながら、演じることとは何かを問いつづける。
2015年/90分/カラー/日本 岡本和樹 監督
12月14日(金)
9:45 特別作品6「野田眞吉特集
『この雪の下に』 上映時間33分
山形県西川町大井沢を舞台に、農山村に生きる人々の冬の厳しい生活の諸断面を捉えた作品。雪の下でさまざまな工夫と努力を重ねて生活する姿を記録した。
1956年/33分/カラー/日本
企画:東北電力 製作:東京シネマ
監督:野田眞吉 協力:東京シネマ新社
『マリン・スノー−石油の起源−』 上映時間25分
石油生成の起源をテーマにした自然科学の解説映画が構想されていたが、そこに生と死にあやどられた生きもののかぎりないドラマを見出した野田は、一篇の叙事詩的映画に構成した。
1960年/25分/カラー/日本
企画:丸善石油 製作:東京シネマ
監督:野田眞吉・大沼鉄郎 協力:東京シネマ新社
『ふたりの長距離ランナーの孤独』 上映時間9分
先頭を力走するアベベが眼前に来たその瞬間、観衆の中から中年の男が飛び出し、アベベと10秒ほど並走したあと、警察に取り押さえられた。奇跡的に撮影された東京オリンピックマラソン競技中のハプニング映像を活用した実験的映画。
1966年/9分/白黒/日本
監督:野田眞吉 協力:亘純吉・亘眞幸
『冬の夜の神々の宴−遠山の霜月祭』 上映時間37分
民俗神事芸能三部作の一作目。長野県下伊那郡上村下栗部落に伝承されている「霜月まつり」の記録。冒頭に簡単な紹介があるのみで解説は一切ない。日本におけるダイレクト・シネマの先駆的な試みともいえる。
1970年/37分/白黒/日本
監督:野田眞吉 協力:亘純吉・亘眞幸
19:00 長編作品10「断層紀」
2013年の夏、秋田県大館市に3ヶ月滞在して映画を制作する機会を得た。毎日地域の人たちから話を聞き、民俗資料館に通い、大館の歴史を学んでいった。ある日訪れた中学校で15歳の少女に出会った。彼女は映画に興味があると声をかけてくれた。私は彼女に小さなカメラを渡し、映像日記をつけて欲しいとお願いした。そして彼女と共同制作することを決めた。もう一つ大きな出会いがあった。それは古いものでは70年前に撮影された大量の8ミリフィルムだった。大館に住んでいた方の遺品で、個人の記録フィルムだった。私はこのフィルムを祖父が残したフィルムと読み替えて、映画の中に登場させることにした。他にもたくさんの出会いがあった。神明社のお祭りや、大館に人生を埋めた古老。大館で出会った全ての人との共同作業により、この紀行エッセイ映画「断層紀」は作られた。
2018年/75分/カラー・モノクロ/日本 波田野洲平 監督