法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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中高生のための憲法教室

 

第48回<憲法の力>


4年間続いたこの憲法教室も最終回です。これまでありがとうございました。この4年で国民の憲法への関心が高まり、草の根の学習グループが数多く生まれました。国民の憲法力が格段に高まった4年間だったといえます。
それに引き替え、多くの憲法価値を否定する政治の現実を目の当たりにして、政治家の憲法レベルの低さに落胆する毎日でもありました。先の国会でも57年ぶりの再可決によって、補給支援特措法が成立し、インド洋における米軍への補給が再開されました。国会での十分な審議を経ることなく、日本は再び「テロとの戦い」という名目の戦争に加担してしまったわけです。
日本の国際貢献のあり方には様々な考えがあり、この法律についても国民の賛否は分かれていました。だからこそ、しっかりと国会で議論することが憲法の要請です。これが議会制民主主義に他なりません。
憲法はさまざまな場面でこうした手続保障を重視しています。裁判も適正手続を保障してこそ判決が正しいと国民の信頼を得ることができます。行政処分も不利益を受ける当事者に告知し弁解の機会を与えるなどの適正手続を確保することでその正当性が与えられます。
国家権力の行使においてこのような手続保障が全うされたかどうかは、通常は、具体的な事件を通じて裁判所で判断されます。しかし、国会の審議が十分になされたかどうかについては、国民がチェックするしかありません。このように政治において憲法価値が実現されているかを最終的に判断し是正するのは主権者たる国民の役割なのです。だからこそ国民は憲法を正しく理解していなければなりません。憲法の基本的な考え方を再確認してみましょう。
まず、国家は市民の精神活動の領域に介入してはいけません。個人の思想良心や表現、信仰などに口を差し挟んではいけないのです。ましてや、国家が思想や表現の価値を事前に判断するようなことがあってはなりません。
しかし、市民の経済活動の領域に対しては、国家は福祉主義の観点からむしろ積極的に介入しなければなりません。経済的社会的弱者を救済して人間らしい生活ができるように、富を再配分し格差を是正していくことが必要です。そして、権力は信頼の対象ではなく、常に疑ってかかるべき監視の対象であることも忘れてはなりません。
憲法は自由で人間らしい生活のために、市民社会と異質な軍隊という組織を持つこと自体を否定しました(9条)。たとえば、市民社会では個人が尊重されますが、軍隊では個人よりも組織が重要です。市民社会では人の命を守ることに価値がありますが、軍隊は人の命を奪うことが目的です。こうした軍隊という暴力装置はその存在自体が市民にとって脅威です。そこで憲法はこれを一切保持しないとすることで市民の自由を守ることに徹したのです。
9条も究極的にはひとり一人の人間性を守るために存在します。憲法の根本価値が個人の尊重(13条)にあるからです。そしてこの個人の尊重は、誰もが人として尊重されると同時に、誰一人として同じ人間はいない。人と違うことはすばらしいという意味を持っています。
ひとり一人はかけがえのない命、人生を持っており、それは代替不可能なものです。それを人間の尊厳といいます。私はまったく不完全な人間ですが、それゆえに私は代替不可能でかけがえのない存在だともいえます。そう考えれば、たとえうまくいかないことがあったとしても、自分らしく堂々と生きていけばいいことがわかります。それが個人の尊重という憲法が一番大切にしていることなのです。
皆さんはこれからいろいろなことを経験するはずです。成人して選挙権を行使したり、裁判員として裁判に参加したりすることでしょう。憲法改正国民投票があるかもしれません。どのような場面においても、マスコミの情報に踊らされることなく、自分の頭で考えて、自分の価値観で主体的に判断し、その結果に対して自分で責任を取るという気概が必要です。憲法はそうした自立した市民に立憲民主主義の実現を託したのです。
憲法99条は公務員に憲法尊重擁護義務を課しました。国民は憲法を守る側ではなく公務員に守らせる側にいることを示した規定といえます。のみならず、国民には憲法に反対する自由すら与えられていることを意味しています。つまり憲法価値を尊重するか否かも私たちひとり一人が自由に決めることができるのです。皆さんは明日の主権者として、日本を真の立憲民主主義の国にしていくことができるのです。期待しています。
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