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第45回<日本の国際貢献>


今回は憲法が予定する国際貢献とはどのようなものか考えてみましょう。
まず、特定の国の自衛権の行使を助けるような国際貢献は、憲法上、一切許されません。たとえば、アメリカが9・11テロに対する自衛権の発動としてアフガニスタンで戦争を行っていますが、日本がこれに参加することはでません。自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を集団的自衛権といいますが、これは憲法上行使できないと解されています。
日本は自衛戦争を含めて一切の戦争を放棄しましたが(9条)、独立国家として自衛権は放棄してないため、自衛のため必要最小限度の実力部隊(自衛隊)は許されているというのが政府の考え方です。ですが、集団的自衛権の行使は、自衛のための必要最小限のものではないため許されません。自衛隊が海外で武力行使したり他国の武力行使と一体となる活動は、集団的自衛権の行使になるため禁じられているのです。自衛隊員派遣という人的貢献であろうと、海上給油活動のような物資の補給、食料の提供であろうが、それが戦争遂行に必要なものであれば武力行使と一体化したものとして許されません。本来なら資金提供も許されないはずです。憲法はこうした同盟国の自衛権発動に軍事的に参加して貢献することを禁止しているのです。
では国連の旗の下で行われる軍事行動はどうでしょうか。他国を侵略しようとする国があるときに、国連加盟国が必要があれば最後は軍事力(国連軍)をも行使して鎮圧します(集団安全保障)。また、国連は世界各地で発生してしまった地域紛争の停戦の維持を助け、戦争が再発しないようにするための活動を行います。これは平和維持活動(PKO)と呼ばれ、停戦監視団と合意された停戦を武力によって保つ平和維持軍(PKF)からなります。なお、国連の指揮下での軍事組織ではありませんが、多国籍軍がイラクのクウェート侵攻を阻止したり(第一次湾岸戦争)、NATO軍がコソボで人道のための戦争を行ったりすることがあります。さらにアフガニスタン国内の治安維持を目的としてNATOの指揮の下、国際治安支援部隊(ISAF)が組織され武力行使を含めた治安維持活動が行われています。
こうした様々な軍事活動に日本の自衛隊を派遣して武力行使させることができるのでしょうか。この点、国家間の戦争は許されないけれども、国際警察活動ともいうべき国連の軍事行動に日本が参加することは憲法上許されているという考えがあります。
確かに、日本も国際社会の一員である以上、世界の平和と安全のためにできる限りの貢献をするべきです。しかしそれはあくまでも憲法の許容する範囲のものに限られます。
日本は過去の苦い経験から、9条で自衛のための戦争も含めて一切の戦争を放棄しました。それは「自衛のため」「人道のため」「治安維持のため」という名目で戦争を肯定してしまったら、そうした名の下で結局はあらゆる戦争が正当化されてしまい、再び過ちを繰り返してしまうと判断したからです。つまり、正義のための戦争も許さないという徹底した戦争放棄にその特徴があるのです。
どんな戦争も武力行使を受ける側にとっては、理不尽な殺戮である点で何も変わらないのです。このように民衆の視点に立って、たとえ国連の行う活動といえども、国家としてこれに加担するべきでないというのが憲法の趣旨です。
このように、国連の旗の下であっても、日本は一切の軍事行動に参加しないというのは、身勝手に思われるかもしれません。しかし、どのような名目の戦争にも一切参加しないと宣言した先進国が存在すること自体が、世界の平和と安定に貢献するのです。それが「国際社会において名誉ある地位を占める」(前文第2項)ことに他なりません。
紛争には必ず原因があります。紛争が起きてから軍事的に対処するのではなく、紛争の原因をなくすために最大の努力をするのが憲法の立場です。飢餓、貧困、人権侵害、差別、環境破壊といった世界の構造的暴力をなくすために積極的な役割を果たすのです。現地の人と井戸を掘り、学校を建て、病院をつくって医療を提供し、感染症撲滅に尽力し、経済的自立のための支援をする。また、紛争終結後に道路・水道などのインフラの整備、対人地雷除去、必要な生活物資の支給など軍事面以外でもできることは無限にあります。安易に米国などに追随するのではなく、本当に求められている国際貢献は何かを見極めて実行すべきです。
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