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第43回<外国人の人権>


9月1日は1923年に起きた関東大震災に因んで防災の日とされます。この震災は多くの被害をもたらしましたが、同時に数千人が「朝鮮人」というだけで虐殺されるきっかけとなりました。韓国併合(1910年)以来、日本は朝鮮半島を占領し植民地としていましたが、多くの朝鮮人が生きるために日本に来ざるを得なくなり、労働力として酷使されていきました。
そうした中で関東大震災に直面した人々は噂やデマに振り回され、「朝鮮人が暴徒化した」「井戸に毒を入れ、放火して回っている」という暴言を信じてしまい、一部の市民や自警団が、治安維持の名目で多くの朝鮮人を殺傷してしまったのです。私たちは天災だけでなくこの人災の被害も忘れてはなりません。
朝鮮半島や台湾などの植民地に住んでいた人々は、大日本帝国の臣民つまり日本国民であるとされ、日本の国籍を持ち、日本国内では参政権(選挙権、被選挙権)も保障されていました。ただし、日本名や日本語の強要、天皇崇拝などの皇民化政策がとられていたため、民族の独自性や多様性は認められていませんでした。
戦後、日本が台湾、朝鮮などの旧植民地に関する主権を放棄したことにより、旧植民地の人々は日本国籍を失い、外国人として生活することを余儀なくされます。これにより今まで同様日本国内で生活しているにもかかわらず、参政権や生存権などの社会権(具体的には国民年金や国民健康保険など)も保障されなくなります。
このように戦前は、強制的に日本人とされ日本民族との同化を強要した上で参政権を認めていましたが、戦後は、強制的に日本国籍を奪い外国人として扱って参政権や社会権を認めません。日本での生活実態が何も変わらないにもかかわらず、国家の都合でこのように人権が認められたり奪われたりしているのです。これはおかしなことです。
そもそも人権とは何でしょうか。人間である、ただそのことだけで認められる権利であったはずです。とするならば、国籍は無関係であるはずです。外国人であっても人権は当然に保障されているのです。
ただ、その人権の性質から日本国民のみを対象としていると解されるものは例外的に保障されず、その典型例が参政権と社会権だといわれます。ですが、そうでしょうか。
そもそも参政権は民主主義原理から保障される人権のはずです。そして民主主義とはその国で支配される者が支配する側に廻ることができる、つまり一国の政治のあり方はそれに関心を持たざるを得ないすべての人々の意思に基づいて決定されるべきだということを意味します。とするなら、日本で生活し、日本の権力の行使を受ける者であれば、その政治に関心を持たざるを得ず、たとえ外国人であっても生活の本拠が日本にあるのであれば、選挙権が保障されるべきことはむしろ当然の要請ということになります。
この点、外国人に選挙権を認めることは国民主権に反すると言われることがありますが、そもそも国民主権というときの国民を日本国籍保持者に限定するべきではありません。むしろ民主主義原理からはそこに生活の本拠を有する市民を広く国民と考えるべきなのです。
また、生存権や労働基本権のような社会権も同様に、この国で生活している市民である以上は、社会の構成員として当然に保障されるべきです。外国人だからといって、生活保護を受けられなかったり、適切な医療が受けられなかったりするべきではありませんし、低賃金労働力として酷使されても何も言えないというような不合理がまかり通ってよいわけがありません。
そもそも国家が何のためにあるのか、国家や国籍にこだわる必要がどこまであるのか、人権を考えるときには、常にこうした原点に立ち戻って考える必要があります。
日本で生活する外国人登録者数は2005年に200万人を突破してその後も増え続けています。他にも不法滞在の外国人も相当数いますから、日本で生活する人のうち100人中2人弱は外国人です。また、外国人との結婚も17件に1件の割合に及びます。
民族や文化、風習などの違いを認め、多様性を受け入れながらも、同じ人間としてお互いに尊重し合う、そうした成熟した人間同士の関係を、憲法は個人の尊重(13条)として保障しています。今なお、外国人を排斥しようとする差別意識が一部に根強い日本だからこそ、84年前の事件の教訓を大いに生かさなければならないと考えます。
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