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第39回<力と民主主義>


皆さんは自分の考えていることを相手にやってもらったり、わかってもらいたいときにどのようにしますか。いきなり怒鳴りつけたり殴りつけたりする人はいないと思います。まず、相手に話して説得しようとしますよね。力でねじ伏せるようなやり方はよくないと誰もが思うはずです。
ですが、理性的に話し合うのではなく、力によって訴えようとする人たちがいるようです。先月、長崎市長が銃撃されて死亡しました。平和運動も熱心になさっていたということですし、とても残念で悲しい事件でした。銃撃した人の動機はまだはっきりしていませんが、自分の思うとおりにならないことがあって恨んでいたようです。
アメリカでもバージニア工科大学で32人が死亡する惨劇がありました。報道によると犯人もいろいろな悩みを抱えていた様子がうかがわれます。ですが、自分の思うとおりにいかないからといって暴力という力に訴えることは、許されるべきことではありません。私たち人間の社会では暴力ではなく話し合いなどの理性によって解決する社会をめざそうとしているからです。それが民主主義社会です。
自分と意見の違う人から暴力を受ける恐れがあると感じると、怖くて違う意見を言えなくなります。安心して批判することもできなくなります。みんなが黙っていようと思ってしまったら、多様な意見が出てこなくなり、民主主義が成り立たなくなります。民主主義はそもそもどのような結論が正しいかわからないからこそ、誰の意見も平等に価値があり、それをみんなで聞いてから判断しようとするものです。自由にものが言えなくなったらそれは民主主義ではありません。
国際社会においても、相手の国が言うことをきかないからといって、軍事力をちらつかせて服従させることなどは民主主義国家のするべきことではありません。力に訴えるのではなく、あくまでもねばり強く説得を続けるべきなのです。もちろん日本国憲法も9条で武力による威嚇を許していません。外国と意見の食い違いが生じたときも、軍事力や武力に訴えるのではなく平和的な外交手段で解決していくことを根本理念としています。
こうして銃で撃ったり、軍隊の力に訴えたりすることが民主主義にとってよくないことだということはわかってもらえるかと思います。ですが、国会の中で十分な審議をしていないにもかかわらず、多数決を強行して法律などを決めてしまうことも力に訴える解決方法という点では暴力と何も変わらないのです。つまり、暴力で相手を威嚇して何も言えなくするのと、まだ意見を言いたいのに強行採決をして意見を封じてしまうのとでは、実は力によって相手をねじ伏せようとする点でまったく同じ態度だと言えるのです。暴力という力と多数の力はときに同じように民主主義を危うくします。
自由な討論を十分に行ない、それぞれの意見のメリット、ディメリットをしっかりと議論の中で明らかにしたうえで最後は多数決で決めるのが正しい方法です。多数決はお互いが納得するだけの十分な審議討論を経た上であるからこそ正当性を持つわけです。少数派の人たちが、自分たちが意見を言っても無駄だ、聞いてもらえないし、どうせ強行採決されてしまうのだからと諦めてしまうようになったら民主主義は成り立ちません。
議会での審議内容が十分に国民に伝わって、国民が次の選挙のときには、少数意見の方を支持しようと考えて選挙結果が変わるかもしれません。そうやって、現在の少数派が将来の多数派になる可能性を秘めているところが民主主義の特長です。多数の力に任せて強行採決をし、少数派が十分納得するだけの審議をしたといえない状況のときに力で押し通すのは、理性によって物事を解決しようとする姿勢ではありません。暴力反対であるのならば、多数の横暴も、資金力など経済力による横暴も、そしてもちろん軍事力という力によって紛争解決しようとする姿勢も止めるべきです。そうでなければ、暴力を憎むという言葉がそらぞらしく聞こえてしまいます。何事も強引な力によって解決する姿勢を憎むところに真の民主主義の理念があるのです。
国際紛争は、軍事力ではなく外交で解決するべきです。市民の間の紛争は暴力ではなく、裁判などで解決するべきです。そして、政治的意見の違いは、十分な話し合いをもとに解決していくべきなのです。それが、強い力をもった為政者や特定グループが理不尽なことをしないように歯止めをかけ、少数派を守る役割を持って生まれた憲法の理念に合致する態度だと思います。
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