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第38回<議員定数不均衡問題>


日本国憲法制定に際して、憲法学者の鈴木安蔵氏などの日本人が作った草案をベースにマッカーサー原案が作られました。それを国民が選んだ代表者が国会で審議し修正し議決して制定されました。便宜上明治憲法の改正という形をとりましたが、まさに国民の意思で作った憲法です。
なぜ、国民の意思で憲法を作る必要があるのでしょうか。そもそも憲法は、政治家がやってはいけないことを規定して、国の政治に歯止めをかけるための法です。つまり、憲法によって国の政治のあり方の輪郭を決めることになります。国民は憲法の制定や改正という形で、日本の政治のあり方を直接決めているわけです。国の政治のあり方を最終終的に決める権限が国民にあることを国民主権といいますが、憲法制定権や改正権が国民にあることはまさに国民主権そのものなのです。ですから、憲法改正の国民投票も国民の意思を正しく反映するものでなければなりません。
これに対して、日々の問題は国会議員や地方議員を選び、彼らにまかせるかたちで間接的に解決していきます。この議員を選ぶのが選挙です。選挙でもどういう人を選んで代表させるか、国民の意思が正しく反映されなければなりません。そのため性別、収入、学歴などによって選挙権の有無に差をつけてはいけません(普通選挙)し、一人一票が保障されます(平等選挙)。こうした選挙を通じて主権者である国民は日々の政治に影響を与えていくのです。
ただ、国民がどの程度、政治を直接コントロールできるかは、国政レベルと地方自治レベルでは違っています。憲法は、地方自治は間接民主主義を原則とするものの、直接民主主義的な意味合いをより強く持たせています。たとえば、知事や市長のような地方行政のトップは住民が直接選ぶことになっていますし、地方議会議員をリコールしたり、条例を住民が発案したり、住民投票をしたりすることも広く認められています。それに対して、国政では総理大臣という行政のトップは国会議員が選ぶことになっていますから、国民は直接口を出せません。また、国会議員は国会での演説討論表決について法的責任を取らなくてもいいことになっています(免責特権、憲法51条)。国会議員に対するリコール制は認められないと解されていますから、国会議員は選挙区の有権者に対する公約に違反したとしても、法的責任を追及されることはありません。この免責特権は国会議員が全国民の代表(43条1項)としての職責を全うすることができるように認められたものです。国会議員は自分を選んでくれた選挙区や利益団体の代表ではなく、全国民の代表だというわけです。
ですから、どの地域に住んでいる人であっても、何人の代表を国会に送り込むことができるかという点ではみな平等でなければなりません。一人一票であることは当然ですが、その一票の価値つまり、選挙結果に対する影響力もまた平等でなければならないのです。
ところが、実際には選挙区によって当選する議員一人あたりの人口が大きく異なっています。議員一人を送り出すために必要な人口が違っているのですから、一票の影響力つまり投票価値が不平等になっているのです(人口が多い方が一票の影響力が小さくなってしまいます)。これを議員定数不均衡問題といいます。参議院議員選挙の場合、人口過密地域(多くの場合都市部)の選挙区と過疎地域(多くの場合地方)の選挙区では5以上の差が開いていることもあります。最高裁は6倍を越えないと著しい不平等とはいえないと判断しているようです。一票の価値が5倍も開いていてはとても民主主義とはいえません。一人一人の政治に対する影響力は誰もが平等であって初めて民主主義は成り立ちます。民主主義は誰の意見が正しいかわからないし、誰の意見も同じ価値を持っているという前提で成り立つものだからです。
この点、地方選出の議員が減ると今以上に地方切り捨ての政治が行われる危険があると心配する人がいるかもしれません。しかしそれは、一人一票という民主主義の大原則を犠牲にして地方選出の議員を増やして解決する問題ではなく、都市部から選出された議員が全国民の代表としての役割を果たすことによって解決すべき問題なのです。
こうして国民は、選挙を通じてもこの国の政治の方向を自分たちで決めることができます。たとえば「格差社会」反対という議員の増減によってこの国のあり方がまったく異なってきます。選挙によって政治は確実に変わるのです。皆さんも選挙権を持つようになったら、自分の意思でしっかり判断してください。
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