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第37回<環境問題>


一見無関係に思えるコンプライアンス(法令遵守)と地球温暖化問題に共通するキーワードがあります。それは他者への共感です。そもそも憲法が保障するさまざまな人権は他者への共感が基本にあります。弱者への共感、少数派への共感、外国人への共感などです。そして民主主義も議論をする際に他者への共感がなければ、単なる多数による押しつけにすぎなくなります。こうして他者への共感を基本に憲法を読み解くことができます。
企業の不祥事を考える際に話題になるコンプライアンスも、単に法律に従えばよいという狭い意味に捉えるべきではありません。他者への共感力を持って、消費者や従業員などが何を求めているのかをしっかりと認識していくことが基本となります。
この他者の中に、自然や地球を含めて考えてみましょう。確かに草木に共感したり、動物の思いをくみ取ったりすることなど今の科学では不可能だと言われるかもしれません。しかし、すべての生命への共感力は、地球レベルでの共存を考えたときに、大いに威力を発揮すると思っています。
環境問題も議論が分かれています。圧倒的多数は、地球は温暖化している、その原因は人類によって排出される二酸化炭素である。よって、排出規制をしなければならないという論調です。他方で反対派の人たちは、これは発展途上国の経済発展を阻害する先進国のエゴで、温暖化の事実も原因についても、実は科学的な根拠は明確ではないと主張します。
さて、どう考えたらよいのでしょうか。最近の暖冬から自らの感覚として温暖化は真実ではないかと思います。ですが、他方で、天気予報などの気象予測はあてにならないという実感もあります。『不都合な真実』という本が出版されていますが、本当に真実は1つなのでしょうか。
ある科学的な事実が存在するとしても、どの事実を「真実」として取り上げ、それをどう評価するかについては価値判断が入ります。特に科学者の中でも議論が分かれるような問題についてはそうです。政治的な思惑も伴うものだからです。
世界経済の観点からみてCO2排出規制に賛成した方がいいのか、反対した方が企業として儲かるのか、それはわかりません。政治もこうした経済的な欲求に答えて動くことが多々あります。しかし、こうした経済の視点からではなく、私たちがどう生きるべきかという観点から見直してみると、やはり自然や地球という他者への共感は重要だと思うからです。
人間も地球という自然の一部です。とすると地球上の他の生命との共存を考えることが理にかなっているように思われます。実はそのことを私たちの憲法が示唆しています。
確かに憲法は、近代西欧の国家を前提にした人間中心の考えをベースに作られました。個人の尊重(憲法13条)と立憲主義です。日本国憲法もこうした人類の英知の正統派の流れを引き継いでいます。ですが、それにとどまっていません。そこに日本の英知が加わりました。前文と9条です。国家を越えた人類の平和という枠組みでものを考えているのです。前文には「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」とあります。そして、最大の環境破壊である戦争を放棄しました。これは少なくとも国家レベルでものを考えるだけでは足りない、人類のレベルで考えるという決意の現れです。私はその先に地球というレベル、つまりあらゆる地球上の生命との共存というレベルで考えていこうとする芽を感じます。「国どうしで戦争なんかしている場合じゃないよ。もっと大きな地球規模の危機、すなわち人々の本当の脅威に対して、人類として立ち向かっていかなければダメでしょ」という高い意識レベルを読みとることができます。日本は、世界の構造的暴力(飢餓、貧困、人権侵害、差別、環境破壊)をなくすために積極的な役割を果たさなければならないのです。
資源のない日本が生き残るには、物量に頼る物質的、軍事的強さではなく、智恵を生かし、理念において尊敬される国をめざすことが必要です。軍事大国でなくても、十分に国際社会で名誉ある地位を占めることはできるはずです。そして、環境問題を考えることを通じて、地球の中で人類をどのように位置づけて考えるべきかを意識してみることは大切なことだと思います。
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