法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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第27回<学校で強制される「愛」?>


「教育基本法」の改正が問題になっています。その本質は「愛国心」を教育の目標として、法律で定めることにあります。そこにはどのような問題があるのでしょうか?
一つめは、そもそも国が教育の内容に介入する点です。
生活が苦しくて学用品を買えない家庭を財政的に援助したり、過疎地域に学校を建てたりして教育の条件を整備することは、国の大事な仕事です。しかし、何をどのように教えるかをすべて国がきめて、全国一律に子どもたちに押しつけるべきではありません。
かけ算九九はどのように教えようと、子どもたちの心にそれほど影響をおよぼすことはありません。しかし歴史や公民などの社会科や道徳などは、教え方によっては「何を大切に考えるか」がきまってしまいます。
民主主義はおたがいのちがいを受けいれること、自分の頭で考えて行動することが前提となります。国民がだれかえらい人のいいなりになるのでは、民主主義は成りたちません。ですから民主主義の国では、多様性を受けいれ、自分の頭で考えて行動できる力を子どもたちから引き出すことが何よりも求められます。そのためにはきまった価値観を、国が法律で押しつけるべきではないのです。
現場の教師の努力や親や地域の力によって、子どもたちが自分の考え方をもって行動できるようにサポートすることが国に期待された役割です。憲法は教育条件を整備することを国に求めていますが(憲法26条)、教育を通じて子どもたちの思想や良心に介入することは許していません(憲法19条)。
二つめは、「愛国心」という心の問題を法律で規定して、事実上強制する点です。
そもそも「愛」は学校で教育されるものではないと思います。ましてや強制されるべきものではありません。国の愛し方を教えてもらい、点数をつけてもらう国とはいったいどのような国なのでしょうか。
この国は日本人だけが生活する国ではありません。憲法は多様性を受けいれていくオープンな社会をめざそうとしています。これからもますますいろいろな国の人が、日本で生活し、その子どもたちも日本で教育を受けていくことでしょう。にもかかわらず、日本の伝統や文化を知識として学ぶだけではなく、「国を愛すること」を教育の目標として強制することは、外国人など少数者への配慮に欠けます。憲法の人権保障は少数者のためにあることを忘れてはなりません。
「愛国心」をことさらに強調することは、仲問うちでは心地よいかもしれませんが、それはときに排除の論理につながります。むしろ教育では、多様性や異文化理解をこそ教えるべきでしょう。
三つめは、憲法改正への布石となっている点です。
教育基本法は「憲法的な法律」といわれます。そもそも憲法は、国家権力を制限して国民の人権を守るためにあるものですが、教育基本法も不当な教育を子どもたちに押しつけることを禁止します。子どもの人権を守るために、「国がやってはいけない教育」をこの法律で定めているのです。
国民主権の国では国民が主人公であり、国民が主体となって国を動かします。国民は「統治される対象」ではなくて、あくまでも「統治する主体」なのです。それと同じように、教育の場面においても、子どもはみずから学習する権利をもった主体です。そこでは「子どもの人権を守る教育をいかにおこなうか」が、国や大人の責任となってきます。
国がコントロールしやすい国民をつくり上げるための手段として、教育を利用することがあってはなりません。あくまでも、子どもたちが主体的にものを考えて生きていくことができるように、子どもを人権の主体としてあつかっていくことが求められているのです。
いま政治家たちから、憲法改正が主張されています。「国を愛する義務」や「国を守る義務」を国民に課し、国民をコントロールしようとしています。しかし憲法は、国民の側が国家をコントロールするための道具であって、けっして国家が国民をコントロールするための道具ではありません。
このような憲法の本質をまったく変えてしまう憲法改正の布石として、まず教育基本法の位置づけが変えられようとしています。教育基本法の改正の後にどのようなことが待ち受けているのかを、しっかりと見きわめないといけません。
そして、どのような国であれば子どもたちが主体的に誇りをもち、地域や郷土を愛するようになるのかを、大人たちはしっかりと考えなげればいけないように思います。
私は世界一の平和憲法をもっている国に生活できていることに、誇りをもっています。
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