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第24回<女性天皇の是非も私たちが決める>


国民の祝日に関する法律第2条に「建国記念の日」が規定されています。
この法律では日にちは特定されておらず、政令で2月11日となっています。「建国をしのび、国を愛する心を養う」が趣旨となっています。明治憲法のもとでは「紀元節」という祝日でした。これは神武天皇元年の元旦を西欧暦で計算してみたものということです。歴史的にはあやしいところもありますが、天皇制とむすびついていることだけはたしかです。
お正月には年賀状に、「平成18年」と元号を使う人もいます。この元号は天皇の苗字のようなものです。もともと天皇家の人たちには苗字がありません。国民とちがって苗字で区別する必要がないくらい特別な存在だからです。しかし、天皇が死亡すると、元号が天皇の苗字としてあたえられます。こうして元号も天皇制と深くむすびついています。
昨今、天皇の跡継ぎをどうするかという議論がさかんにおこなわれています。今回はこの天皇制について、明治憲法と対比しながらすこし考えてみましょう。
明治憲法では天皇は主権者であり、日本でもっともえらい人となっていました。すべての統治権は天皇に帰属し、天皇が立法権、行政権、司法権を行使することになっていたのです。法律は天皇が承認しなければ成立しませんでしたし、議会とは別に、天皇が勅令というかたちで立法をおこなうことができました。各国務大臣は行政権をもつ天皇を補佐し、天皇に対して個別に責任を負っていただけでした。裁判所が出す判決も、天皇の名で言いわたされました。
さらに、天皇は神聖なもので、国家神道とむすびついた象徴でもありました。そしてその地位は天照大神(あまてらすおおみかみ)の意思にもとづくことになっていました。国民は、神の意思によって統治権をもち、神聖な象徴である天皇だからということで、これを敬うことを強制されたのです。
こうした君主としての天皇を否定して、主権を国民にあたえ、天皇を象徴としての地位だけにとどめることにしたのが日本国憲法です。憲法はまず一章で天皇について規定していますが、その内容は、天皇に政治的な権力がないことを徹底させるものです(4条)。政治的に天皇を悪用することがないように、天皇の権限を憲法で制限してはじめて、国民の人権が保障されるというわけです。
1条では、天皇は象徴でしかないことを明確にし、しかも主権が国民にあることを宣言しました。この天皇の地位は、国民の総意にもとづくとされています。つまり、私たち国民が、天皇の地位すらも決めることのできる主体なのです。国民は決して「天皇を象徴として敬え」と強制されるような、支配の客体ではないことを示しています。
2条では皇位を世襲(せしゅう)のものと規定しますが、これは「法の下の平等」をうたっている14条との関係で、どうにも説明がつきません。天皇はどう考えても、その存在じたいが平等原則に反します。女性天皇を認めるかどうか、男系男子にかぎるのは平等権侵害ではないかという議論もありますが、そもそも天皇制じたいが平等原則の枠の外にあると考えるほかないようです。つまり、ここには第三章の人権規定がおよばないのです。
現在、皇位継承の資格は「皇室典範(こうしつてんぱん)」という法律によって「皇統に属する男系の男子」たる皇族にかぎられています(皇室典範1条、2条)。明治憲法時代は、この皇室典範は皇室の家法のようなもので、その改正には議会も口を出すことはできませんでした。それに対して、日本国憲法のもとの皇室典範は、その名称は同じですが性質はまったく変わりました。一般の法律と同じ性質のものとなったのです。
ですから、この皇室典範という法律を改正すれば、女性天皇を認めたり、生前の退位を認めたりすることも可能となっています。つまりここでも、私たち主権者が法律によって皇位継承の資格や順序をも決められるということです。
また天皇の行為に着目してみても、天皇は「国事行為」という形式的儀礼的行為のみをすることができるのですが、日本国憲法3条ではこの「国事行為」も、内閣の助言と承認が必要としています。つまり天皇の行為は、国会によってコントロールされた内閣が決定するということです。ここでも、最終的には主権者たる国民の意思にもとづくことが要求されているわけです。
憲法は世襲制の天皇を認めることで、平等原則の重大な例外を認めてしまいました。そしてその天皇を、日本国民統合の象徴としています。平等をむねとする国民とはかなり異質の存在をあえて象徴としているのですが、その象徴という地位もふくめて、天皇に関するすべてのことがらは国民が自分たちの意思で決めることができるのです。
天皇のありかたもけっしてタブーとすることなく自由に議論できる社会が、真の民主主義社会といえるでしょう。
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